リーガルエッセイ
公開 2026.10.01

カスハラ対策、できていますか?「うちは対象外」という誤解

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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カスハラ対策、できていますか?

いよいよ、10月1日から、改正労働施策総合推進法がスタートとなります。

事業主は、顧客などの言動によって、働く人の環境が損なわれる事態を防ぎ、相談後も適切に動ける体制を整えることが法的に求められます。

ある経営者交流会で、この話題を投げかけてみたところ、ある経営者の方から、「あれって、上場企業とか大きな会社の話なんじゃないの?」と言われました。

たしかに、有価証券報告書の提出は上場企業等に対して課されるものであるとか、公益通報者保護法における内部通報窓口の義務化は従業員が300人を超える企業が対象であるとか、そのようなことが念頭にあるため、カスハラ対策についても同様に考えられてしまっていることが多々あるような気がします。

ここは要注意です。

「社員数が少ないから対象外」ではありません。

カスハラ対策の義務は、会社の規模や上場の有無でわかれておらず、すべての事業主がやるべきこととして定められています。

出発点として、まず抑えるべき点です。

そして、次に最低限知っておくべきこととしては、カスハラと正当なご意見、要望との違いです。

カスハラとは、

❶顧客等の言動であって

❷その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより

❸労働者の就業環境が害されるもの

をいいます。

この❷でいう「社会通念上許容される範囲を超えたもの」といえるかどうかという評価はなかなか難しいですよね。

基準があるようでない。

結局よくわからない。

そんな声を聴くことがあります。

「社会通念上許容される範囲を超えたもの」とは、かみくだくと、「言動の内容がそれ自体おかしいもの」と「(何らかの意見を)言うにあたっての手段や態様がおかしいもの」といえるように思います。

「言動の内容がそれ自体おかしいもの」としては、たとえば、商品とかサービスに全然関係なく、従業員のかたに、性的な要求をしたり、代金の著しい減額要求をしたりすることなどがあげられます。

「言うにあたっての手段や態様がおかしいもの」としては、たとえば、従業員のかたの対応に腹が立って、殴る蹴るなどの暴力行為に出ること、「SNSで悪評を書き込んでやるぞ」と脅すこと、土下座を強要することなど。

最終的な評価は、その言動だけからではなく、そもそも商品、サービスを提供する側の問題行動の有無、内容、程度や、言動が行われた経緯、業種、業務の内容、言動の継続性、頻度、態様、従業員側の心身の状況、従業員側と言動をとった側との関係性などを総合的に考慮してなされることになります。

と、ここまで説明しても、やはり、どこまで行っても、総合考慮になる以上、一律わかりやすい基準があるわけではないから、基準が見えにくいなという印象は否めないと思います。

会社として、「こういうケースはよくあるのだけど、この場合はカスハラと評価されるのだろうか?会社としては、どう対応すればよいのだろうか?」と不安な点がありましたら、あらかじめ、弁護士にご相談いただければと思います。

会社として迷う点があるということは、現場で直接顧客の対応をされる従業員の方は、より一層大きな不安を抱えて日々の業務にあたられているものと思います。

今後、「まあ、微妙な事案だと思うから、そこは現場の腕でなんとかうまいことやってよ」は、会社として今後ますますリスクとなります。

改正法の求めるカスハラ対策が不十分なまま、従業員が、顧客等からの悪質なカスハラで心身に支障をきたす事態となったら、会社としては安全配慮義務違反による損害賠償責任を免れません。

そのような会社の実態は、個々の従業員にとどまらず、会社としての姿勢が問われることとなり、SNSを通じてその実態が拡散されると、採用が困難になったり、離職率が高まったりといったリスクとして顕在化することもあります。

また、厚労省が公表する資料で説明しているところではありますが、カスハラを予防するための有効な対策として、会社として、改めて、自社の商品やサービスについて理解を深め、顧客等とのコミュニケーションの在り方についてよりよいものとするよう努めることも重要なのだと思います。

というのも、カスハラの発生原因は多岐にわたるとはいうものの、商品やサービス自体に課題があったり、コミュニケーション不足に課題があったりすることも否定できず、そういった課題を認識し、取り組んでいくことにより、カスハラの発生原因そのものを減らすことができるはずだからです。

今後、また改めて、カスハラ対策についてお話してみたいと思いますが、「いよいよ改正法スタートしたものの何から手をつけていいのかわからない」というご担当者のかたがいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

会社の規模、業種、従業員の方の数や属性等おうかがいしながら、会社の実情に応じ、やるべきことをひとつひとつ一緒に考えていきましょう。

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