コラム

公開 2022.03.29

不動産を相続人が任意売却する方法とは?メリットと注意点を解説

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相続不動産の任意売却についてわかりやすく解説します。

任意売却とは、ローンを滞納した不動産を競売が実行される前に一般市場で売却する手続きのことです。

不動産を相続人が任意売却するためには、債権者の同意など一定の要件を満たす必要があります。

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相続した不動産の任意売却とは

相続した不動産の任意売却とは、相続した不動産のローンが返済できず滞納状態となってしまっている場合に、競売が実行される前にその不動産を一般の市場で売却する手続きのことです。
任意売却には、借入先の金融機関などお金を貸している人(「債権者」といいます)などの了承が必要です。

ローンが残っている不動産には、抵当権が付けられていることが一般的です。
抵当権とは、万が一借金が返せなくなった場合に、債権者がその不動産を強制的な売却(「競売(けいばい)」といいます)にかけて、その売却代金から返済を受ける権利です。

一般的に、不動産は抵当権がついたままでは売却することができません。
抵当権がついている不動産はいつ競売にかけられてしまうかわからず、そのような不動産の場合、買い手がつかないことが多いためです。

また、それ以前の問題として、ローンを組む際の契約にはローン返済中に勝手に不動産の名義を変えたらローンの一括返済を迫ることができる旨の条項が入っていることが一般的であるため、金融機関の同意なく勝手の売却をすることはできません。

こうした理由から、売却代金でローンを返済したとしても完済しきれない額のローンが残ってしまう不動産は、売却できないことが一般的です。

このような原則に反し、売却代金でローンの全額が返済できず、かつ返済の不足分を売却までに自己資金で補うことができない場合であっても、債権者から抵当権の解除を承諾してもらったうえで不動産を売却することを任意売却といいます。

相続した不動産を任意売却するまでの流れ

相続した不動産を任意売却するまでの一般的な流れは、次のとおりです。
ただし、下記はあくまでも一般的な例であり、状況により流れが異なる場合があります。

弁護士などの専門家へ相談する

後ほど解説しますが、任意売却には法的な注意点が少なくありません。
また、債権者などとの交渉にも専門知識を多く要します。

そのため、任意売却について金融機関などとの交渉を始める前に、弁護士など任意売却に詳しい専門家へ相談しましょう。

債権者である金融機関などと話し合いをする

任意売却を進めるには、すべての債権者が任意売却に同意する必要があります。
そのため、任意売却へ向けて債権者との話し合いが必要です。

買主を探し任意売却をする

債権者など関係者の同意が得られる目途が立ったら、通常の売買と同様に売却の相手方を探しましょう。
買い手との交渉がまとまったら、契約を交わして売買を行います。

不動産を相続人が任意売却するメリット

ローンが支払えず滞納状態となってしまっている不動産を相続人が任意売却するメリットとしては、競売と比較して次のものが挙げられます。

競売よりも高く売れる可能性が高い

競売の場合には、売却額が市場価格の7割程度となってしまうことが大半です。

一方、任意売却の場合には一般市場で売却ができるため、競売と比較してより高値で売却できる可能性があります。
より高値で売却ができればそれだけローン返済ができるため、残債が少なくて済むことにつながります。

外部に知られにくい

競売の場合には、その情報が新聞や裁判所のホームページで公告されてしまいます。
また、競売では公表される物件の情報が少ないため、落札希望者が物件情報をより詳しく知るために近隣に聞き込みをする可能性も否定できません。

そのため、競売の場合には競売の事実を周囲に知られてしまう可能性が高いといえます。

一方、任意売却は裁判所を通す手続きではないため、周囲から見れば通常の不動産売買と区別がつかず、滞納を理由で不動産を手放したことは外部からはわかりません。

自宅の場合、引っ越し費用を確保できる可能性がある

任意売却の場合には、不動産の仲介手数料などは持ち出しとなることはなく、売却代金から支払うことが可能です。
さらに、債権者との交渉次第では、売却代金から引っ越し費用を出してもらうことができる可能性もあります。

残債を分割で返済することができる

競売の場合には、売却後に返済できなかったローン残債があった場合、残債部分は債権者に一括で支払わなければなりません。

一方、任意売却の場合には、無理のない範囲での残債の分割払いが認められることが多いといえます。

相続した不動産を任意売却する際の注意点

相続した不動産を任意売却する際の注意点

相続した不動産を任意売却する際には、注意点が少なくありません。
主な注意点は次の5つです。

任意売却ができる期間には制限がある

任意売却はいつでもできるわけではなく、できる期間に制限があります。

任意売却ができる期間は、ローンを滞納して金融機関から一括返済を迫られてから、競売の入札が始まる前までの期間です。
競売の入札が始まってしまえば、もはや任意売却をすることはできません。

競売を避けたい場合には、できるだけ早期に弁護士へ相談し、任意売却の準備を進めるようにしましょう。

債権者等の同意が必要となる

任意売却をするには、抵当権のもととなっているローンの債権者全員の同意が必要です。
債権者にとっても、任意売却の方が競売と比べてメリットが大きいため、同意してくれる可能性は低くありません。

とはいえ、状況によっては同意が得られない可能性もありますので、交渉は慎重に進めるようにしましょう。

売却額によっては必ずしも完済できるとは限らない

任意売却をして得た対価でローンの全額が返済できなかったからといって、残ったローンの返済が免除されるわけではありません。

不動産についていた抵当権は外れますが債務自体は残るため、その後も引き続き残債を支払っていく必要があります。
残債の返済期間や月々の返済金額は、債権者との交渉となります。

とはいえ、無理な返済を強いて回収できなくなれば債権者にとって損失となるため、ある程度無理のない金額での返済を交渉することはできるでしょう。

共有者全員の同意が必要となる

不動産が共有であれば、任意売却にあたって共有者全員の同意が必要となります。
特に、相続で得た不動産であれば、遺産分割がまとまらないまま住宅ローンを滞納した結果、競売がなされそうになっている場合もあることでしょう。

遺産分割協議がまとまっていない段階では、不動産は相続人全員の共有状態となっています。
このような状態で任意売却をするためには、共有者である共同相続人全員の同意が必要です。

信用情報に影響が出る可能性がある

任意売却をしたからといって、ローンを滞納していた事実が消えるわけではありません。
そのため、任意売却の前段階でローンを滞納していた場合には、相続人個人の信用情報に影響することとなります。

延滞の情報は、一般的に5年程度記録が残るとされており、その間はローンを組んでの不動産や車、携帯電話の購入などに影響が出る可能性があります。
任意売却をしたからといって信用情報への記録が消えるわけではないことに注意しましょう。

ローンのある相続不動産への任意売却以外の方法

ローンのある相続不動産への任意売却以外の方法

ローンが残っており今後もローンの返済が難しい相続不動産への対処方法として、任意売却以外には次の方法が検討できます。

競売

1つ目の方法は、競売が申し立てられた際に任意売却を選択せず、または何らかの事情により任意売却を行うことができず、そのまま競売がなされるパターンです。

競売とは、債権者の申し立てにより裁判所が強制的におこなう売却手続きのことです。
競売では、任意売却よりも売却価格が低くなる可能性が高いうえ、公告などにより周囲へ知られてしまう可能性があります。

任意売却と比較した場合の競売のメリットは、ほとんどありません。
あえて競売のメリットを挙げるとすれば、次の2点です。

  • 債権者との交渉や買い手の検討などをしなくて良い
  • 競売は一般的に手続きが長引くことが多いため、買い手が決まるまでの間はその物件に住み続けることができる

競売のメリットは少ないため、できれば避けたいと考える場合が多いでしょう。

一般売却

一般売却とは、通常の不動産売買のことです。
任意売却と区別する際ために、あえて一般売却と呼ぶことがあります。

抵当権が付いている不動産であっても、特にローンの滞納などをしておらず、次に該当する場合には一般売却をすることができます。

  • すでに抵当権の対象となっているローンを完済しているものの、単に抵当権を消す手続きが済んでいないのみである場合
  • 手元資金や売却資金でローンを完済できる場合

一般売却ができるのであれば、期間の制限もなく債権者などの同意も必要ないため、可能であればぜひこの方法を検討しましょう。

まとめ

ローンの返済が難しい不動産を相続してしまったとしても、一般売却、任意売却など取り得る方法はいくつか存在します。
ただし、時間が経つにつれて選択肢が狭まってしまいますので、相続が起きたらできるだけ早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

ローンの返済が難しい不動産が相続財産にあった場合、様々な対応を取ることが考えられます。
そのため、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。
ご事情を確認した上で、どのような対応が考えられるのかご説明させていただき、ご要望に沿った対応を提案させていただきます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。首都大学東京(現:都立大学)都市教養学部法学系卒業。首都大学東京(現:都立大学)法科大学院修了。不動産法務を中心に、離婚・相続などの家事事件、刑事弁護や被害者代理人などの刑事事件、ジェネラルコーポレート業務を中心とした各種の企業法務、交通事故をはじめとした一般民事事件など、幅広い案件を取り扱う。
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