リーガルエッセイ

公開 2024.02.01

共同親権の導入について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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共同親権の導入について思うこと

先日、離婚後の子どもの養育について、法制審議会の部会が、父と母の双方に子どもの親権を認める共同親権の導入を柱とした要綱案をまとめ、法務省が、これに基づく民法改正案を国会に提出予定である旨報じられました。

共同親権については、以前にもこちらのエッセイで触れたことがありますが、今回の報道を見聞きし、さらに、不安が高まったというかたもいらっしゃるのではないかなと感じました。

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SNSでは、共同親権に反対の電子署名活動なども行われているようです。

私自身、まだ要綱案を読めていないので、報道限りでしか情報を認識していません。
そのような状態ではありますが、思うところがあります。

報道では、ある委員が「共同親権が望ましい場合と単独親権の方がよい場合の基準や運用について十分な議論ができなかった」と述べ、いまだ課題が残されていると話した旨報じられていました。
このように述べられたということが事実なのだとすれば、そのような非常に重大な点に関する議論が十分なされず、共同親権が望ましい場合とはどのような場合かが明確にならないままにこの要綱案に基づく改正案が提出される予定であるということに不安を感じます。

また、家族法制の見直しに関する要綱案(案)に関する意見として、「附帯決議(事項)の提案について」という資料が一部委員から提出されており、その内容をみると、家庭裁判所の機能向上のため、研修・人員体制の強化を行うとともに、そのための財源が確保されることなどが挙げられていました。

そのとおりだと思います。

たしかに、報じられている要綱案に基づく制度が導入されるとなると、家庭裁判所が、より一層大きな役割を果たすべき場面が想定されます。
私自身、まだ勉強不足な面があり、正確に、具体的にどのような点において果たすべき場面が大きくなるか把握できていないのですが、共同親権を設定する場合、裁判所は、父母の間で、強要や親の都合ではなく子の福祉を目的とした合意があるかという点を判断したり、共同親権設定後も、一方の親が親権を濫用する場合は、共同親権者の同意に代わる裁判所の許可や、単独親権への移行の是非を検討し続けなくてはならなかったりするという点において、今の家庭裁判所の体制では対応することが難しいのではないかという指摘があるようです(「立法と調査」2020.9「離婚後の共同親権について」)。

そして、そのような機能を果たすための体制強化というものは、制度導入前においてなされるべきこと。
不十分なままに制度がスタートした場合、離婚紛争の渦中にいる当事者のかたや子どもたちの不安は一層大きくなるのではないかと思います。

お金の遣いかた、子どもの教育に関する考えかた、子どもとの関わりかた、双方の親との関わりかた、夫婦の在りかた…いろいろなことについて、どの家庭にも共通するような「こうあるべき」という一律の正解があるわけではなく、そして、関わる当事者のかた自身がどのように育てられてきたか、どんな人たちと関わってどんな環境で自分の価値観をどう作り上げてきたか…などということが一人一人全く違うという前提で、個々の夫婦とその間にいる子にとって、離婚後どのような形になることが幸せなのか、ということを考え、当事者の納得のもと合意を形成したり、合意形成できない場合に何らかの判断を下すという仕事は言いようもなく難しいものだと思います。
言いようもなく難しいからこそ当事者間で話し合いができずに家庭裁判所の場にきている状況なわけで、それを第三者の立場で関わるということは、第三者だからこそできること、見えることがある一方で、やはり、とても難しいこと。
そんな難しい仕事を全うし、離婚する夫婦のため、子どものために最善の決定をするという機能を果たすために必要な研修というものはどうあるべきか。
少なくとも、単なる裁判例等の習得ではなく、さまざまな離婚当事者やその間にある子どもたちの声を踏まえたものである必要があると思います。

私は、このたびの報道を目にしたとき、「え?そんな内容になっていたの?」と少し驚きました。
恥ずかしながら、法制審議会の部会での議論を、ホームページなどでしっかり追えておらず、勉強不足だったことを感じました。
目の前の当事者のかたに直接影響がある法律改正に関し、一弁護士として、もっとしっかり勉強し、意見を形成しなければいけないと痛感しました。
関わったお客様やお子さんの顔を思い浮かべながら、今一度この要綱案について勉強したいと思います。

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