コラム

公開 2022.02.22

賃貸住宅管理適正化法とは?弁護士がわかりやすく解説

賃貸住宅管理適正化法とは?弁護士がわかりやすく解説

賃貸住宅管理適正化法の内容や施行日、取るべき対応などについてわかりやすく解説します。
賃貸住宅管理適正化法は、令和2年に公布された新しい法律です。
この法律では、サブリース契約への規制や賃貸住宅管理業の登録制度などを定めています。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(千葉県弁護士会)
千葉県弁護士会所属。創価大学法学部卒業後、創価大学法科大学院を修了。最高裁判所司法研修所修了後、Authense法律事務所へ入所。 不動産法務(建物明渡請求訴訟)、離婚問題などの一般民事、発信者情報開示請求・記事削除請求といったインターネット上の誹謗中傷問題など、様々な案件に取り組んでいる。

賃貸住宅管理適正化法とは

賃貸住宅管理適正化法は、その正式名称を「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」といいます。
その名称のとおり、賃貸住宅の管理を適正化するために制定された法律です。

これまで、賃貸住宅の管理について個別に定めた法律はありませんでした。
これは、従来は物件オーナー自らが賃貸住宅の管理を行うケースが多く、多数の物件の管理を第三者へ委託するケースが想定されていなかったためです。

しかし、昨今サブリース契約など賃貸物件管理に関するトラブルなどが多発しています。
中でも、サブリース会社の破綻により物件オーナーが多額の負債を抱えてしまったシェアハウス「かぼちゃの馬車」の事件が記憶に新しいという方も多いのではないでしょうか?
こうしたことを受け、令和2年6月に賃貸住宅管理適正化法が公布されました。

賃貸住宅管理適正化法の2つの柱

賃貸住宅管理適正化法は、主に次の2つの柱から成っています。
ここでは、それぞれの柱の概要について解説しましょう。

サブリース契約の規制が強化された

賃貸住宅管理適正化法の1つめの柱は、サブリース契約への規制の強化です。

サブリース契約とは、賃貸アパートなどの物件をまるごとサブリース会社が借り上げ、物件オーナーに代わって賃貸物件の管理や運営をする仕組みです。
物件オーナーは入居者から直接賃料を受け取るのではなく、サブリース会社から毎月決まった賃料を受け取ります。

物件オーナーにとっては、空室の増加や賃料相場の下落などによる収入の減少を心配する必要がない他、入居者トラブルなどに直接対応しなくても済む点などがメリットです。

しかし、最近ではこのサブリース契約に関するトラブルが増加傾向にあります。
たとえば、固定額での賃料の支払いを保証すると説明を受けていた期間内であるにもかかわらず賃料を減額されてしまうケースやサブリース会社から一方的に契約を解除されてしまったりするケース、
大規模修繕に際して当初の説明にはなかった費用負担を求められるケースなどです。

こうした問題を受け、賃貸住宅管理適正化法では、サブリース契約についての規制が強化されました。

なお、サブリースについての用語は、正しくは次のように定義されています。

  • マスターリース契約:物件オーナーとサブリース会社の間の契約
  •  
  • サブリース契約:サブリース会社と入居者との間の契約

ただし、両者を特に区別せず、いずれもサブリース契約と呼称することも少なくありません。

賃貸住宅管理業の登録制度が創設された

賃貸住宅管理適正化法の2つめの柱は、賃貸住宅管理業の登録制度の創設です。

これまで、賃貸住宅の管理業には許可制度や登録制度は設けられていませんでした。
その結果、玉石混交さまざまな企業や個人が管理業を営んでいたのが現状です。

そこで、賃貸住宅管理適正化法では新たに賃貸住宅管理業の登録制度を設け、200戸以上の物件を管理する管理業者に国土交通大臣への登録を義務付けることとされました。
なお、この「200」とは、管理するアパートなどの棟数ではなく、管理する部屋の戸数であることに注意が必要です。

また、キッチンや浴室などを入居者が共同で利用するいわゆる「シェアハウス」を1棟管理する場合には、そのシェアハウスの個室部屋数で戸数を数えることとされており、空室部分も1戸とカウントするものとされています。

管理戸数が200未満であれば、賃貸住宅管理業登録は義務ではありません。
しかし、管理戸数が少なくても、他の要件を満たせば登録をすること自体は可能です。
物件オーナーとしては、国土交通省への登録の有無を、管理委託をする管理業者を選定する際の1つの基準にするとよいでしょう。

賃貸住宅管理適正化法でサブリース業者に課される3つの義務

賃貸住宅管理適正化法でサブリース業者に課される3つの義務

賃貸住宅管理適正化法で、サブリース業者に課される主な義務は次の3点です。
この規制内容についてサブリース業者が理解しておくべきことはもちろんのこと、契約を検討しているサブリース業者が違反していないかどうかを確認するため、物件オーナーも内容を知っておくとよいでしょう。

誇大広告等の禁止

サブリース業者やサブリース契約を勧誘する勧誘者は、誇大広告等をしてはなりません。
誇大広告等とは、次のようなものです。

  • 誇大広告:実際より優良であると見せかけて相手を誤認させるもの
  •  
  • 虚偽広告:虚偽の表示により相手をあざむくもの

たとえば、次のような表示が誇大広告等に該当します。

  • 実際にはサブリース会社からの減額請求が可能となる場合があるにもかかわらず「安心の30年家賃保証!」などと記載する
  • 実際には休日や深夜は受付業務のみであるにもかかわらず「24時間入居者対応」などと記載する
  • 実際には毎月オーナーから一定の費用を徴収して原状回復費用に当てているにもかかわらず、「原状回復費負担なし」などと記載する
  • 実際には大規模修繕など一部の修繕費はオーナーが負担するにもかかわらず、「修繕費負担なし」などと記載する
  • 実際には契約期間中であっても業者から解約することが可能であるにもかかわらず「30 年一括借り上げ」「建物がある限り借り続けます」などと記載する
  • 実際には借地借家法の規定でオーナーからは正当事由がなければ解約できないにもかかわらず、「いつでも自由に解約できます」などと表示する

これらの表示であっても、「ただし、〇〇となる場合があります」などの適切な打消し表示を併記することで、誇大広告等には該当しない場合があります。
ただし、打消し表示を記載さえすれば必ずしも問題ないということではありません。
打消し表示の記載箇所や文字の大きさ、文字の色などによっては誇大広告等に該当することがあるため注意しましょう。

誇大広告に該当するかどうかの判断が難しい場合には、広告を出稿する前に弁護士にチェックをしてもらうと安心です。

不当な勧誘の禁止

サブリース業者やサブリース契約を勧誘する勧誘者は、不当な勧誘をしてはなりません。
不当な勧誘は、次の3つに分類されます。

事実不告知

事実不告知とは、故意に事実を告げない行為です。

たとえば、将来の家賃減額リスクがあることや契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があること、
大規模修繕時などにはオーナーに費用負担が生じることなど、物件オーナー側にとって不利となる事実を告げないことなどがこれに該当します。

不実告知

不実告知とは、故意に不実のことを告げる行為です。

たとえば、オーナーに支払われる家賃が借地借家法の規定により将来減額される可能性があるにもかかわらず「サブリース事業であれば家賃100%保証で絶対に損はしない」と伝えることや、
大規模な修繕費用は物件オーナーの負担であるにもかかわらず「維持修繕費用は全てサブリース会社が負担する」など、事実と異なることを告げる行為がこれに該当します。

保護に欠けるもの

保護に欠けるものとは、勧誘の方法について問題がある行為です。

たとえば、物件オーナーに迷惑を覚えさせるような時間帯に電話をしたり訪問したりする行為や、物件オーナーを威迫する行為、物件オーナーが契約しないと伝えているにもかかわらず執拗に勧誘する行為などがこれに該当します。

なお、迷惑となる時間帯は物件オーナーの職業や生活習慣ごとに異なるものの、一般的には午後9時から午前8時までの電話勧誘や訪問勧誘が、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当し得るとされています。

マスターリース契約時などの書面交付

サブリース会社は、マスターリース契約の締結前と締結時に、それぞれ書面を交付しなければなりません。
書面には、家賃など賃貸の条件に関する事項や契約期間に関する事項、サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法など、法令で定める事項を漏れなく記載する必要があります。

賃貸住宅管理業者に課される4つの義務

賃貸住宅管理業者に課される4つの義務
賃貸住宅管理適正化法の規定により、国土交通省の登録を受けた住宅管理業者を、「賃貸住宅管理業者」といいます。
賃貸住宅管理業者には、主に次の4つの義務が課されます。

業務管理者の配置

賃貸住宅管理業者は、事務所ごとに最低1名の業務管理者を配置しなければなりません。
業務管理者は誰でも良いわけではなく、次のいずれかの人を選任する必要があります。
また、いずれも管理業務について2年以上の実務経験があることが必要です。

  • 令和3年度以降に実施される登録試験に合格し、登録された人
  • 令和4年6月16日以前に賃貸不動産経営管理士として登録した者で所定の講習を受講した人
  • 管理業務に関し2年以上の実務経験を有する宅建士で、所定の講習を受講した人

業務管理者は事務所の専任である必要があり、他の事務所との兼任は認められません。

一方で、同一の事務所にて専任が求められている宅地建物取引士が賃貸住宅管理業の業務管理者を兼務することは認められています。

管理受託契約時などの書面交付

賃貸住宅管理業者は、物件オーナーとの管理業務委託契約の締結前と締結時に、物件オーナーに対して契約の内容などについての書面を交付して内容を説明しなければなりません。

書面には、管理業務の実施方法や契約期間に関する事項、報酬に関する事項など、法令で定める事項を記載する必要があります。
なお、物件オーナーが承諾をしたときには、オンラインなどを用いて対面以外で行うことも可能です。

金銭の分別管理

賃貸住宅管理業者は、自社の金銭と管理業務で受領する家賃や敷金などの金銭とを分別して管理しなければなりません。
これは、賃貸住宅管理業者が預かった家賃を自己の資金繰りのために流用などすることで、物件オーナーなどに損害を与えることを防ぐための規定です。

定期報告

賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況などについて、委託者である物件オーナーに定期的に報告しなければなりません。
定期報告は、1年を超えない期間ごとにすべきとされています。

この報告は必ずしも対面で行う必要はなく、物件オーナーが承諾すれば電子メールなどで行うことも可能です。

賃貸住宅管理適正化法はいつから施行される?

賃貸住宅管理適正化法は、その規定ごとに施行日が異なっています。
それぞれの施行日は、次のとおりです。

サブリース契約の規制は令和2年に施行済

サブリース契約の規制に関する規定は、令和2年12月15日からすでに全面的に施行されています。
仮に現時点で賃貸住宅管理適正化法の内容を確認していないサブリース会社があれば、早期に内容を確認し、法律に沿った運用を始めましょう。

ただし、この法律でサブリース業者へ課せられた義務はそれほど目新しいものではなく、ほとんどのサブリース業者で従来から行ってきた内容が多いかと思います。

賃貸住宅管理業登録は令和4年6月まで経過措置あり

賃貸住宅管理業登録に関する規定は令和3年6月15日から施行されており、すでに登録申請を行うことが可能です。

ただし、賃貸住宅管理業の登録期限は、令和4年6月15日まで猶予されています。
これは、管理戸数が200戸以上の管理業者のなかには登録が間に合わない業者もいるであろうとの配慮から設けられている猶予です。

管理戸数が200戸以上である管理業者は、遅くとも令和4年6月15日までに登録を行うようにしましょう。

まとめ

賃貸住宅管理適正化法により、これまで個別の規定がされていなかったサブリース業者と賃貸住宅管理業者についてのルールが定められました。
サブリース業や管理業を営む方は法令やガイドラインを確認し、早期に遵守への対応をするようにしましょう。

また、物件オーナーとしても、法令やガイドラインを一読しておくことをおすすめします。
法令を確認しておくことでサブリース業者や賃貸住宅管理業者の法令違反に気付きやすくなり、委託先の業者選定に役立つためです。

今後は管理戸数200戸未満であっても、自社の業務体制のアピールのため賃貸住宅管理業の登録を受ける事業者が増えてくるものと思われます。
この登録の有無が管理を委託する業者選定の1つの基準となるかと思いますので、登録制度についても概要を知っておくとよいでしょう。

サブリース契約や物件の管理委託契約、その他賃貸物件の管理などでお困りの際には、ぜひ不動産法務にくわしいオーセンスまでご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

サブリース契約や物件の管理委託契約をする際、契約条件が著しく不利な条件になっていないかなどを確認することも重要となります。
サブリース契約書や物件の管理委託契約書のチェックにつきましても、ぜひ弊所までご依頼ください。

不動産法務に関する
お問い合わせはこちら

お問い合わせ

こんな記事も読まれています

CONTACT

法律相談ご予約のお客様

ご相談:平日 6:30〜20:00 / 土日祝日 10:00〜18:00

24h予約受付中