コラム

公開 2022.04.19

【地主向け】借地権の地主が死亡した場合、土地の相続はどうすべき?売却は可能?

【地主向け】借地権の地主が死亡した場合、土地の相続はどうすべき?売却は可能?

借地権の対象となっている土地(底地)を相続するメリット・デメリットを解説するとともに、底地に関するトラブル事例を紹介します。
所有者が亡くなった場合、この土地を相続することにデメリットはあるのでしょうか?

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。中央大学法学部卒業。一橋大学法科大学院修了。最高裁判所司法研修所修了後、Authense法律事務所へ入所。 離婚問題や相続の遺産分割など、家事事件を中心に取り扱うほか、企業法務や刑事弁護などにも意欲を持ち、積極的に対応している。

借地権とは

借地権とは、建物の所有を目的として、他者の土地を使用する権利です。
借地権には、通常の借地権(定期借地権に対して「普通借地権」といいます)のほか、「定期借地権」が存在します。

借地権が生じる代表的なケースとしては、地主であるA氏が所有する土地をB氏が借り受け、その土地上にB氏名義の建物を建てる場合などが挙げられます。

普通借地権であっても定期借地権であっても、借り始めの際にまとまった権利金などを支払い、その後も継続的に地代を支払うことが一般的です。

では、普通借地権と定期借地権について、それぞれ主な特徴について解説しましょう。

普通借地権

普通借地権とは、後ほど解説する定期借地権以外の一般的な借地権です。

普通借地権は非常に強い権利であり、いったん普通借地権が発生すると、いくら土地の所有者であっても、簡単には土地を返してもらうことはできません。
借地権者は自分のお金で借地上に建物を建てており、仮に地主の都合で急に土地を返せと言われてしまえば、建物を取り壊さなければならず非常に不都合であり、社会的にも損失であるためです。

また、普通借地権の存続期間は最低30年と長期にわたるうえ、あらかじめ契約した期間が満了したとしても、原則として契約が更新されることとなっています。

法律上、更新に際して地主から更新しない旨の異議を述べることは可能です。
ただし、更新しない旨の地主の異議が認められるためには、正当事由が認められなければなりません。その正当事由の有無の判断においては、例えば以下のことが考慮されます。

  1. 土地の使用を必要とする事情があること:地主が借地権の目的となっている土地を使用する事情があることが必要です
  2. 借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出:借地権消滅に対する対価の支払いが必要です

この正当事由が認められるためのハードルは非常に高く、最終的には裁判所の個別の判断となります。
土地上に建物を所有している借地権者は、法律上非常に強い権利を持っていることを知っておきましょう。

定期借地権とは

定期借地権とは、普通借地権とは異なり、更新のないことを原則とする借地権です。

定期借地権の場合、土地を借りている借地権者は、期間が満了したら建物を撤去して土地を返還しなければなりません。
その反面、普通借地権と比べて権利金や地代が低く抑えられていることが一般的です。

借地権が定期借地権であれば、土地が返却される時期の見通しが立てやすいといえます。

定期借地権は、一般の住宅に設定されていることもありますが、ファミリーレストランなどのテナント用地に設定されていることが少なくありません。

借地権の対象となっている土地は売却できる?

借地権の対象となっている土地は売却できる?

借地権の対象となっている土地を相続した場合、その土地を売却することはできるのでしょうか?
なお、これ以降は普通借地権を前提として解説します。

土地の売却は自由

他者へ貸しており借地権の対象となっている土地であっても、土地の売却が制限されるわけではありません。
借地権の対象となっている土地を相続した人は、いつでも自由に借地権者の承諾を得ることもなく、土地を売却することが可能です。

売却したいからといって借地権者を追い出すことはできない

借地権の対象となっている土地の売却は自由であるとはいえ、売却を理由に借地権者を追い出したり建物を壊すよう命令したりすることなどはできません。
また、借地権は新たな所有者へも対抗することができるため、新たな所有者が一方的に借地権を消滅させることもできません。

つまり、借地権の対象となっている土地は、借地権がくっついたまま、土地上に借地権者名義の建物が建ったままの状態で土地を売却するしかないということです。

そのため、自由に売却ができるとはいえ、現実的には買い手はかなり限られることとなるでしょう。
自分で自由に使用することができない土地を積極的に購入する人はそう多くはないためです。

借地権者への売却も検討しよう

借地権の付いた土地を売却する際には、借地権者への売却も検討の余地があります。

上で解説したように、借地権が付属した土地を積極的に購入したいと考える人は多くありません。
しかし、借地権者にとっては長年使用している建物の敷地が自分の所有になる安心感や、その後の地代を支払わなくて済むという経済的なメリットがありますので、購入を前向きに検討しやすいといえます。

ただし、たとえ他に良い買い手が見つからなかったとしても、借地権者に無理矢理土地を購入させることはできません。
借地権者への売却であっても、あくまでも双方が納得して合意することが前提となります。

借地権の対象となっている土地を相続する主なメリット

借地権の対象となっている土地は、自分で自由に使うことができないばかりか、売却しようにも売却先が限られてしまいます。

では、借地権の対象となっている土地を相続することに、何かメリットはあるのでしょうか?
2つのメリットを紹介していきます。

安定的に地代収入が得られる

借地権の対象となっている土地を相続する大きなメリットの一つは、地代収入を安定的に得られる点です。
建物ごと貸している賃貸アパートなどとは異なり、自己名義の建物を保有している借地権者は、よほどの事情がない限り退去することはないでしょう。

そのため、建物が建っている限りは、継続的に地代収入を得ることができます。

土地にかかる相続税が減額される

亡くなった人(「被相続人」といいます)が亡くなったときに持っていた財産など、相続税の対象となる財産が次の基礎控除額を超える場合には、相続税の対象となります。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の計算をするに際しては、財産評価基本通達のルールに従って、それぞれの財産を評価しなければなりません。
財産の評価が高ければ、それだけ相続税額も高くなります。

この評価において、借地権の対象となっている土地は、自用の土地などと比較して減額しての評価が可能です。
減額割合(借地権割合)はその土地の存する地域によって30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の7段階で定められています。

その土地の借地権割合は、国税庁が公表している路線価図から確認することができます。
東京23区など大都市圏ほど80%など借地権割合が高い地域が多く、地方ほど30%や40%など借地権割合が低い傾向にあります。

たとえば、自用地としての評価額が5,000万円である土地が借地権の対象となっている場合、この土地の借地権割合が40%である場合の評価額は、原則として次のとおりです。

  1. 借地権の評価額=5,000万円×40%=2,000万円
  2. 借地権の対象となっている土地(底地)の評価額=5,000万円-2,000万円=3,000万円

借地権の対象となっている土地は自由な利用が制限される反面、相続税計算時の評価も低く設定されているのです。

借地権の対象となっている土地を相続する主なデメリット

借地権の対象となっている土地を相続することには、デメリットが少なくありません。
主なデメリットは、次の2点です。

土地を自由に使うことができない

1つ目のデメリットは、借地権の対象となっている土地は自由に使うことができない点です。

たとえば、自分自身の家を建築したい場合や、自分の子の家を建築したい場合であっても、借地権者に立ち退いてもらうことは容易ではありません。
借地権の対象となっている土地は、地代の収入源であるとある程度割り切るほかないでしょう。

売却価格が低くなりやすい

上で解説したように、借地権の対象となっている土地であっても売却をすること自体は可能です。

しかし、土地を購入したところで買い手が自由に土地を使用できるわけではないため、第三者に売却する場合には、低い価格でしか売却できないことが多いでしょう。

借地権の対象となっている土地に関するトラブル事例

借地権の対象となっている土地に関するトラブル事例

借地権の対象となっている土地を相続した場合には、後に起きうるトラブルに注意しなければなりません。
主に注意すべきトラブルは、次のとおりです。

借地権者が地代増額に応じてくれない

借地権の対象となっている土地の中には、長年地代が更新されておらず、地代が相場より低いままとなっているものが存在します。

土地を相続した立場としては、適正価格へと増額したいことでしょう。

しかし、地代を増額するには、まずは借地権者との交渉によらなければなりません。
借地権者が増額に応じてくれない場合には、裁判所へ判断を仰ぐこととなります。

自身で交渉した場合には、トラブルへと発展してしまう可能性があります。
そのため、地代の増額を請求したい場合には、まず弁護士に相談することをおすすめします。

土地の買い手が見つかりにくい

上で解説したように、借地権が付属した土地を売却することは容易ではありません。

そのため、いざ土地を売却しようとしても買い手が見つからない可能性を考慮しておくべきでしょう。

借地権者に相続が発生して地代請求先がわからなくなる

長期にわたって土地を貸している場合には、借地権者が高齢であるケースが少なくありません。
中には、家族と同居せず一人暮らしをしている場合もあることでしょう。

借地権は、相続の対象となります。
そのため、借地権者が亡くなった場合、借地上に建つ建物とともに借地権も相続されることが一般的です。
そして、借地権が相続されれば、以後は新たに借地権者となった人に地代を請求することとなります。

しかし、亡くなった借地権者が親族と疎遠であった場合や、借地権の他にめぼしい財産がなく親族が相続手続きを放置している場合などは、地主である土地の所有者に対していつまで経っても親族からの連絡が入らない可能性がゼロではありません。

この場合、誰に対して地代を請求して良いのか把握すること自体が困難です。
だからといって勝手に建物を壊してしまえば、地主が法的な責任を問われかねません。

このように、借地権者が亡くなった場合に地主が親族の連絡先を把握していなかった場合には、対応に苦慮してしまうことでしょう。
このような事態を避けるためには、日ごろから借地権者とコミュニケーションを取って親族関係を把握したり、いざというときの連絡先を把握したりしておく必要があります。

すでに借地権者の相続人と連絡が取れなくなっておりお困りの場合には、弁護士へご相談ください。

土地を相続した共有者同士で争いに発展する

借地権の対象となっている土地に限ったことではありませんが、土地の所有者の死亡に伴い土地を相続人間で共有にしてしまうと、後のトラブルの原因となるリスクがあります。

共有での相続は一見平等であり良い解決方法に見えますが、問題の先送りでしかありません。
なぜなら、たとえば地代の増額請求などの管理行為をする際などに他の共有者の同意も必要となるなど、単独でできる事項に制限が入ってしまうためです(増額請求は保存行為であり、各共有者が単独でできるとする説もあります)。

また、その後共有者にも相続が起きた際には、元々の共有者それぞれの相続人が共有者となり、より権利関係が複雑となってしまうリスクもあります。

共有者同士で争いになれば、共有物分割請求などを行う必要があり、より大きな問題へと発展する可能性があります。
そのため、相続においては安易な共有は可能な限り避けるようにしましょう。

すでに共有となっている土地で問題が生じている場合には、弁護士へ相談するようにしてください。

まとめ

借地権の対象となっている土地を相続することで、継続的に地代を得ることができる一方で、デメリットも少なくありません。
相続財産の中に借地権の対象となっている土地がある場合には、その土地を誰が相続するのか相続人間でよく話し合い、慎重に検討しましょう。

Authense法律事務所には、不動産法務や相続に詳しい弁護士が多数在籍しております。
借地権の対象となっている土地についてお困りの際には、ぜひ当事務所までご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

・借地権付きの土地を自己利用したくなった際に、立退料も含めた借地権者との交渉・裁判が出来ます。
・地代が相場と比べて不相当に安い場合に、借地権者に賃料増額請求の交渉・裁判が出来ます。
・借地権者から地代が支払われない場合に、地代の支払請求、土地の明渡請求が出来ます。

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