解決事例

契約前に開始した番組が打ち切りに。違約金を回収したい

ご相談者:顧問先企業のCさん 相手:企業
交渉・訴訟プラン

相談までの経緯・背景

YouTuberのCさん(30代・男性)は、N社からYouTube上での番組制作を依頼され、制作することになりました。

CさんはN社との間で、番組内容や制作費、スケジュールなどについて細かく打ち合わせ、契約を済ませてから制作に入りたかったのですが、N社の「一刻も早く番組を始めたい」という要望を受け、契約書にサインせずに制作を開始してしまいました。

番組開始から数ヶ月後、突然、N社から「採算が合わないので終了させて欲しい」との連絡が届きました。

依然、契約書にサインはしておらず、それまでに掛かった制作費や終了時の違約金についてどうすれば良いのかと、ご相談にお見えになりました。

解決までの流れ

事前にすり合わせていた契約内容には、「双方の合意によらずN社が番組を終了する際には、Cさんに○ヵ月前に連絡する。その際には、N社がCさんに違約金として製作費〇ヶ月分を支払う。」という条項も入っていました。

契約内容についてはお互いほぼ合意していたのですが、サインはしていない状況でした。

当初のCさんは「契約書にサインはしていないが、内容については合意している。違約金は全額支払ってもらいたい」とのご要望でしたが、仮に裁判で争った場合、サインしていない契約書では裁判所は認めてくれないケースが多いことを説明し、両者で納得できる着地点を見出すことにしました。

幸いだったのは、N社側が常に低姿勢で、自社の計画が甘かった点を認め、突然の番組打ち切りによるネット上での悪評が立つことへの懸念もあり、事を荒立てたくないという雰囲気が強かったところでした。

とはいえ、言い値で全額支払ってくれるはずもなく、N社側の担当者も制作費と違約金の金額を決定する際には、上司にプレゼンし、了承をもらわなければなりません。

全額支払いを強く求めて決裂してしまっては元も子もありませんので、一計を案じることにしました。

契約内容を交渉する段階で、番組の制作費は毎月一定ではなく、スタート時のN社の負担を抑えるために、まずは低い金額で制作を始め、段階的に金額を上げていく約束になっていました。

結局は、金額が段階的に上がる前に撤退の話が出たために、毎月作っている放送の報酬さえ決まらない状態でした。

それでも毎月いくらかは払ってもらわないと困るため、もっとも低い報酬を仮払いしてもらいながら交渉を続けていました。

契約予定の内容では、違約金についてはもっとも高い段階の制作費を基準とし、○ヵ月分で計算することになっていたところを、最初期のもっとも安い金額を基準にすることにしました。

契約書の内容には準じつつ、金額を低く設定することで、N社の担当者も「先方も負けてくれています」と、会社を説得しやすい状況を作りました。

最終的に、N社も提示した全額の2/3程度となる金額を受け入れ、支払う内容で覚書を作り着地しました。

結果・解決ポイント

今回のケースで幸運だったのは、N社が争う姿勢を見せなかったところです。

契約書にサインする前に進めてしまうのは、大変大きなリスクをはらんでいます。

もしも、全面的に争うことになった場合、契約書にサインをしていない状況というのはかなり不利と言って良いでしょう。

「制作が決まった以上、一刻も早く準備を進めたい」という気持ちは重々承知しているのですが、しっかりと契約周りを双方で確認し、合意した上で進めることが肝要です。

交渉の際、N社側には「契約は成立したとみなすべきだ」という姿勢は取りつつも、金額的には相当程度譲歩し、N社側も受け入れざるを得ないギリギリの金額を提示できたことも、無事解決できたポイントではないかと思います。

契約周りのトラブルは注意していても起こり得ます。

問題が起きたときに、そのままではどうなるのか、争った場合に勝ち目はあるのか、法律的な根拠はどこにあるのかなど、法律の専門家である弁護士でなければ判断に迷うことが多々あるかと思います。

お困りの際は、早めに一度、弁護士にご相談ください。

担当弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
東京都立大学理学部化学科卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。民事事件から刑事事件まで様々な類型の事件に積極的に取り組み、実績を積む。現在は、家事事件や一般民事事件を中心に、企業法務まで幅広く取り扱う。訴訟(裁判)の経験も多く、法廷弁護を得意とする。

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