コラム

日本企業が陥りやすい「海外取引トラブル」は?国際取引の注意点

日本企業が陥りやすい「海外取引トラブル」は?国際取引の注意点

ベンチャー企業が海外企業と取り引きする際の注意点をわかりやすく解説します。
海外企業との国際取引では、特に契約が重視されます。
契約をあいまいにしたり、相手に提示された契約書をそのまま受け入れてしまったりすれば、思わぬトラブルに発展してしまうかもしれません。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。

海外企業と国際取引をする際によくあるトラブルとは

通信手段の選択肢が増えていること等から、海外企業と国際取引をする企業は年々増加傾向にあります。
しかし、海外企業との国際取引を国内企業との取引と同様に考えていると、足をすくわれる事態となってしまうかもしれません。

国際取引にあたっては、次のようなトラブルが考えられます。

契約内容や条件のすれ違い

一つは、契約内容や条件のすれ違いです。

たとえば、機械を購入したら当然据え付けまでを行ってくれると考えていたにもかかわらず、据え付けは行ってくれないといったケースや、最終納品前に手直しを依頼したら追加の料金が発生するようなケース等が考えられます。

こうした取引慣習は、気心の知れた国内企業同士の場合には特に問題とならないケースが多いでしょう。
また、契約書には明記がなくても、口頭で補完したり、協議で解決したりする場合もあるかと思います。

しかし、海外企業との国際取引では、原則として契約書に明記された内容がすべてです。
通常の国内取引のように、慣習や口頭で補完できるとは考えない方が良いでしょう。

支払いの遅延

支払時期についても契約書に明記をしておかなければ、トラブルになるおそれがあります。

たとえば、日本企業側としては納品をした時点で代金を請求できると考えていても、相手企業としては納品後の検収もすべて終えた段階ではじめて代金を支払うと考えているかもしれません。

また、単なる支払時期の齟齬ではなく、踏み倒しをされてしまう場合もあるでしょう。
その場合に、相手が海外企業では取り立てをする費用が掛かりすぎることから、金額によっては泣き寝入りせざるを得ない可能性もあります。

海外企業と取引をする際に注意すべきポイント

海外企業との国際取引では、トラブルになってしまう可能性が低くありません。
しかし、適切な予防をすることで、そのリスクを下げることは可能です。

海外企業と取引をする際には次の点に注意すると良いでしょう。

トラブルの発生を想定する

海外企業との取引をする際には、トラブルの発生を想定しておくことが重要です。

国内企業同士の取引では、トラブルが起きないことを前提に、大まかな契約書を取り交わすケースや、中には契約書さえ取り交わさずに、注文書及び請書のみで取引を開始してしまう場合もあるでしょう。
しかし、海外取引において、これはかなり危険な行為といえます。

海外企業との取引をする際は、あらかじめトラブルの発生を前提として、契約書の条項一つひとつを確認するようにしましょう。

信頼や慣習より契約が重視されることを知っておく

海外企業との国際取引では、信頼や慣習よりも契約が重視されます。
国内企業同士での取引のように、「そこまでは書かれていないが普通はこうだから大丈夫だろう」等と考えていると、足をすくわれてしまうかもしれません。

通常の取引についてはもちろん、いざトラブルが発生した際の対処法まできちんと契約書に盛り込んでおくことが重要です。

提示された契約書をそのまま受け入れない

海外企業との取引に限った話ではありませんが、相手から提示された契約書をそのまま受け入れてしまうことは、かなりリスクの高い行為といえます。

契約書の締結とはすなわち、取引内容や条件の最終交渉の場です。
特に海外企業は契約書の重要性をよく理解しているケースが多いため、自社にとって都合の良い内容となった契約書をまず提示するのは、当然のことといえるでしょう。

これをよく読みもせずに受け入れてしまうことは、絶対に避けるべき行為です。
契約書を相手企業から提示された場合には、よく内容を精査したうえで、自社にとって不利な内容は修正案を提示する等、各条項の内容についてきちんと交渉してから締結しましょう。

トラブルが起きれば解決に多大なコストがかかることを知っておく

海外企業との取引は、いざトラブルとなれば解決に多大なコストがかかる可能性があります。
たとえば、相手が代金を期限内に支払ってくれない場合であっても、そのコストを考えて代金の取り立てを断念せざるを得ない場合も少なくないでしょう。

そのため、想定されるトラブルや万が一トラブルが生じた場合の解決法をシミュレーションしたうえで、必要な対策を取っておくことが必要です。
たとえば、初めて取引をする相手の場合、代金の一部を先に支払ってもらったり、納入と同時に支払手続きをしてもらったりすること等が検討できます。

国際取引に詳しい弁護士に相談する

国際取引について適切なリスクヘッジをするためには、日本の法律に詳しいのみでは不十分だといえます。
相手先の国の法令を理解している他、その国特有のリスク等も知っている必要があるためです。

いざトラブルが起きてしまってから慌てないためにも、国際取引を始める際には国際取引に詳しい弁護士に相談し、契約内容の精査等をしてもらうことをおすすめします。

海外企業との契約締結時に取り決めるべき事項

海外企業との取引にあたっては、契約書が特に重要になることは、先ほども解説したとおりです。
では、具体的にどのようなことを契約書で取り決めておくべきなのでしょうか?

契約の内容や条件

海外企業と取引をする際の契約書では、契約の内容や条件等を明確に記載しておきましょう。
記載すべき事項は状況によって異なりますが、たとえば次の事項等です。

  • 契約書作成に際して使用する言語はどれか
  • 何をいくつ、いつまでに納品するのか
  • 不備や不足があった場合にはどうなるのか
  • どのような方法(空輸や海運等の輸送方法等)で納品するのか
  • 納品の費用はどちらが負担するのか
  • どの時点で代金が発生するのか
  • 修正や交換依頼には応じるのか
  • 支払時期はいつなのか
  • 支払は、円建てか、ドル建てか、それとも別の通貨か
  • 関税等の貿易に関する条件はどうするのか

こうした基本的な事項が明確になっていなければ、いざトラブルに発展した際に不利になってしまいかねません。
何のための取引で、何に対して対価が発生するのか等は、必ず明確にしておきましょう。

基準とする国の法律

それぞれの国にはそれぞれの法律があり、いざトラブルが起きると、どちらの国の法律で解決すべきか問題となる場合があります。
その際、日本企業としては、日本の法律を準拠法とできれば望ましいといえます。

トラブルの際にどちらの国の法律で解決すべきか等についても相手方と協議をし、契約書に盛り込んでおきましょう。

また、仮に日本法を基準とすることが合意されたとしても、裁判については、相手の国の裁判所で行うという条項(国際裁判管轄)が契約書にあると、裁判のために、海外の裁判所を使わなければならなくなり、コストが格段に増加する可能性もありますので、このような条項にも注意が必要です。
ただし、日本の裁判所で判決を得たとしても、相手の国で強制執行等ができない場合もありますので、事前に、相手の国の法律に詳しい弁護士に相談するのが望ましいといえます。

トラブルが起きた場合の対応方法

国内企業同士の取引の場合、契約書の末尾に「本契約の規定に関する疑義又はこれらの規定に定めのない事項については、甲乙誠意をもって協議の上、解決するものとする」等の一文を入れることが少なくありません。
このような条項を、「誠実協議条項」といいます。

しかし、海外企業との国際取引の場合には、この一文に頼ることは危険です。
慣習や背景が異なる可能性の高い海外企業との間で疑義やトラブル等が生じた場合には、誠実な協議のみで解決することが困難となる可能性が高いためです。

そのため、このような一文に頼るのではなく、疑義やトラブルが生じないように、はじめから契約書をしっかり作り込んでおいた方が良いでしょう。

まとめ

海外企業との国際取引では、契約書が特に重要となります。
契約書の内容をよく理解せずに契約を締結したり、相手が提示した契約書をそのまま受け入れてしまったりすることは避け、きちんと内容を精査しましょう。

国際取引は、特に専門的な知識が必要となる分野です。
トラブルを避けるためにも、あらかじめ国際取引を専門とする弁護士へ相談し、契約書の確認をしてもらう等の対策をすることをおすすめします。

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