コラム

公開 2022.03.01 更新 2024.03.25

下請法とは?基本と違反時の罰則について詳しく解説!

下請法とは?基本と違反時の罰則について詳しく解説!

下請法は、発注者である親事業者と下請事業者との取引を公正なものとするための法律です。この下請法について詳しく解説します。

下請法では親事業者に対して、義務や禁止事項が定められており、違反した場合には公表や、罰金などのペナルティが科されます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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下請法とは

下請法は、その正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。
下請法は、下請代金の支払遅延などを防止することにより、親事業者と下請事業者との取引を公正とすることや、下請事業者の利益を保護することなどを目的とする法律です。

通常、下請事業者に仕事を発注する事業者(「親事業者」といいます)は、下請事業者よりも取引において強い力を持っています。
そのため、親事業者の一方的な都合で支払いを遅延されたり、不当な値下げを要請されたりしても、下請事業者としてはあらがえない場合が少なくないでしょう。
親事業者の要求を飲まないことで、次回以降仕事を回してもらえなくなったり、進行した仕事を途中で打ち切られてしまったりすれば、下請事業者は、大きな損害を被りかねないためです。

このような事態を避けるために制定されたのが、下請法です。
親事業者は思わぬ違反をしてしまうことのないように、下請事業者は親事業者から不当な取り扱いを受けないように、下請法をよく理解しておくべきといえます。

なお、法令順守に関しては、下請法のみならず各種法令への日ごろからの対応が必要となります。
Authenseでは、「法務機能外注プラン」をご用意しており、企業様のニーズに応じたサービスをご提供いたします。
また、業務委託契約書のテンプレートなど、各種資料のダウンロードも可能ですので、こちらもぜひご確認ください。

下請法の対象となる取引とは

元請けと下請けの関係だからといって、必ずしも下請法が適用されるわけではありません。
下請法が適用されるのは、次の類型のいずれかに該当する場合のみです。※1、※2

類型1 親事業者 下請事業者
製造委託、修理委託及び政令で定める情報成果物作成・役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理) 資本金3億円超の法人 資本金3億円以下の法人・個人
資本金1,000万円超、3億円以下の法人 資本金1,000万円以下の法人・個人
類型2 親事業者 下請事業者
情報成果物作成・役務提供委託(類型1の情報成果物作成・役務提供委託を除く) 資本金5,000万円超の法人 資本金5,000万円以下の法人・個人
資本金1,000万円超、5,000万円以下の法人 資本金1,000万円以下の法人・個人

それぞれの委託業務の内容は、次のとおりです。

製造委託

製造委託とは、物品の販売や製造を請け負っている事業者が、規格や形状、デザインなどを指定して他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。

たとえば、次のような場合がこれに該当します。

  • 自動車メーカーが、自動車の部品の製造を、部品メーカーに委託する場合
  • 精密機器メーカーが、受注生産する精密機械に用いる部品の製造を、部品メーカーに委託する場合
  • 家電メーカーが、販売した製品の修理用部品の製造を、部品メーカーに委託する場合

なお、ここでいう「物品」には、家屋などの建築物は含まれません。

修理委託

修繕委託とは、物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託する場合や、自社で使用する物品を自社で修理している場合にその修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。

たとえば、自動車ディーラーが、請け負った自動車の修理作業を修理業者に委託する場合や、整備工場で使用する機械や工具等の修理を修理業者に委託する場合などがこれに該当します。

情報成果物作成委託

情報成果物作成委託とは、ソフトウェアや映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。

情報成果物の代表的な例は、次のとおりです。

  • プログラム:TVゲームソフト、会計ソフトなど
  • 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの:アニメなど
  • 文字、図形、記号などの結合により構成されるもの:設計図、ポスターのデザインなど

役務提供委託

役務提供委託とは、運送やビルメンテナンスなどのサービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。

たとえば、自動車メーカーが、販売した自動車の保証期間内のメンテナンス作業を自動車整備会社に委託する場合などがこれに該当します。

ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、ここでいう役務には含まれませんが(建設工事については、建設業法に、下請業者の保護規定がおかれており、下請法では除外されています。)、建設業者に下請法が適用される場合もありますので、注意が必要です。

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下請法で定められた義務や禁止事項にはどんなものがある?

下請法には、親事業者が遵守すべき4つの義務と、禁止されている11の事項が定められています。※1
それぞれ紹介していきましょう。

下請法による親事業者の義務4項目

下請法で親事業者に課されている義務は、次のとおりです。※3

  • 書面の交付義務:委託業務の内容、下請代金の額や支払期日など法定された内容を記した書面を、発注に際して下請事業者に交付する義務
  • 支払期日を定める義務:下請代金の支払期日を、物品などの受領日や下請事業者による役務提供日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める義務
  • 書類の作成・保存義務:委託業務の内容、下請代金の額や支払期日など法定された事項を記載した書類を作成し、2年間保存する義務
  • 遅延利息の支払義務:下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、物品などの受領日や下請事業者による役務提供日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を下請事業者に対して支払う義務

下請法による禁止されている11項目

下請法で禁止されている事項は、次のとおりです。※4
親事業者がこれらの行為をおこなってしまえば、下請法違反となります。

  • 受領拒否:下請事業者に責任がないにもかかわらず、注文した物品等の受領を拒むこと
  • 下請代金の支払遅延:支払期日までに下請代金を全額支払わないこと
  • 下請代金の減額:下請事業者に責任がないにもかかわらず、あらかじめ定めた下請代金を減額すること
  • 返品:納入された物品に欠陥があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合でないにもかかわらず、納入された物品等を返品すること
  • 買いたたき:通常より著しく低い額の対価を不当に定めること
  • 購入・利用強制:正当な理由なく親事業者の指定する製品や原材料などを強制的に下請事業者に購入させたり、サービスを強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすること
  • 報復措置:親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、下請事業者に対して取引数量を減じたり取引を停止したりその他不利益な取扱いをすること
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済:親事業者が下請事業者の給付に必要な部品などを有償で支給している場合に、下請事業者に責任がないのにこの部品などの対価を下請代金の支払期日より早い時期に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすること
  • 割引困難な手形の交付:支払期日までに一般の金融機関で割り引くことが困難な手形で下請代金を支払うこと
  • 不当な経済上の利益の提供要請:下請事業者に対して、自己のために金銭などの経済上の利益を提供させることにより下請事業者の利益を不当に害すること
  • 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し:下請事業者に責任がないのに、発注の取消や発注内容の変更をしたり受領後にやり直しをさせたりすることで下請事業者の利益を不当に害すること

下請法に違反した場合の罰則やペナルティ

下請法には、上記のとおり、さまざまな義務や禁止事項が定められています。※2
万が一これらに違反すれば次のような罰則やペナルティが科される可能性があるため、違反することのないよう注意しましょう。

公正取引委員会による勧告や指導がされる

親事業者が下請法に違反をすると、公正取引委員会から勧告や指導がなされます。

違反の内容によっては、不当に減額をした請負代金や支払を遅延した代金にかかる遅延利息などを下請事業者へ支払うよう勧告がなされる場合もあります。

罰金が課される

親事業者が必要な書類を交付していなかった場合や、公正取引委員会の必要な検査を拒んだ場合などには、50万円以下の罰金が科される場合があります。この罰金は、当該違反行為をした人物のみならず、その人物が属する会社にも科されます。

公正取引委員会のウェブサイトで公表される

下請法に違反をした親事業者は、公正取引委員会のウェブサイト上で公表されます。
公表がされると企業のイメージが毀損するおそれがあり、業績へ影響が及ぶ可能性が否定できません。

まとめ

下請法に違反をすれば、処分事例の公表などのペナルティが課されます。
企業によっては下請法の規制内容を知らないままに違反してしまっているケースもあるかと思いますので、ぜひ下請法をご確認の上、違反があれば早期に是正しましょう。

下請法など各種法令順守に取り組みたい事業者や、親事業者に不当な扱いを受けてお困りの事業者は、下請法にも詳しいAuthenseまでぜひご相談ください。

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