コラム
公開 2023.01.17 更新 2024.12.10

著作権の保護期間は何年?いつまで?著作物の態様別に弁護士がわかりやすく解説

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著作権とは、著作物の盗用などを防ぎ保護するための権利です。
著作権には保護期間が定められており、無期限に保護されるわけではありません。
では、著作権の保護期間は何年なのでしょうか?

今回は、著作権の期限について弁護士がわかりやすく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。明治大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院修了。健全な企業活動の維持には法的知識を活用したリスクマネジメントが重要であり、それこそが働く人たちの生活を守ることに繋がるとの考えから、特に企業法務に注力。常にスピード感をもって案件に対応することを心がけている。
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著作権とは

著作権とは、著作物を保護するための権利です。
広義の著作権には、次の3つが含まれています。

  • 狭義の著作権(財産権):著作物を印刷して配布などする「複製権」や著作物をインターネットで送信する「公衆送信権」など複数の権利の束です。他者に譲渡したり相続したりすることも可能です。
  • 著作者人格権:著作者に一身専属的に帰属する権利です。著作物を公表するかどうかなどを決める「公表権」や、著作物を勝手に改変されない「同一性保持権」などが含まれます。
  • 著作隣接権:歌手などの実演家やレコード製作者、放送事業者などが持つ、著作権に隣接する権利です。

単に「著作権」といった場合には、このうち狭義の著作権(財産権)を指すことが多いといえます。
著作権は一つの権利ではないことを知ったうえで、著作権について調べる際にはどの権利のことを指しているのか注意しておくとよいでしょう。

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著作権の保護期間はいつまで?

著作権の保護期間は、原則として70年です。※1
ただし、その起点となるタイミングが、著作物の態様によって次のように異なっています。

なお、従前は映画の著作物以外についての著作権の保護期間は、原則として50年とされていました。
しかし、平成30年12月30日にTPP11協定が発効されたことにともない、70年へと伸長されています。※2

実名の著作物

実名の著作物の保護期間は、著作者の死後70年を経過するまでの間です(著作権法51条2項)。

実名の著作物とは、たとえば「著作 太郎」氏が「著作 太郎」名義で製作した著作物を指します。

この場合には、この「著作 太郎」氏が亡くなってから70年を経過すると、著作権の保護期間が終了します。

なお、保護期間に関係するのは創作者である「著作者」の死亡日であり、著作権を譲り受けた「著作権者」の死亡日などではない点に注意しておきましょう。

たとえば、「著作 太郎」氏が創作した著作物にかかる著作権を生前に「法律 一郎」氏に譲渡した場合であっても、「著作 太郎」氏が亡くなってから70年後に著作権の保護期間は終了するということです。
法律一郎氏の死亡日や譲渡日などは、著作権の保護期間に一切関係がありません。

無名・変名の著作物

著作物の著作者が無名や変名(いわゆる「ペンネーム」など)である場合の著作権保護期間は、著作物の公表後70年を経過するまでの間です(著作権法52条1項)。
たとえば、本名が「著作 太郎」であるものの、変名である「著作何某」として作品を公表している場合がこれに該当します。

なぜなら、著作者が無名や変名で公表した著作物は著作者が誰であるのかわからない以上、その死亡日もわからないことが多いためです。
そのため、死亡日から70年ではなく、公表時点から70年とされています。

なお、変名であったとしても、著作者の変名が周知のものである場合もあるかと思います。
先ほどの例でいえば、「著作何某」氏とは「著作 太郎」氏が用いているペンネームであることが一般的に知られている場合などです。
また、実例を挙げれば、漫画家の「手塚治虫」氏はペンネームですが、本名が「手塚治」であることは周知の事実であるといえるでしょう。※3

この場合には、原則どおり著作者の死後70年という保護期間が適用されます。

団体名義の著作物

著作物が、会社など団体名義で公表される場合があります。
この場合の保護期間は、公表後70年を経過するまでの間です(著作権法53条1項)。
例外的に、その著作物が創作後70年以内に公表されなかったときは、その創作後70年とされています。

これは、団体には個人と異なり「死亡」という概念がなく、また仮に団体の解散から起算するとすれば半永久的に著作権が消滅しないことにもなりかねないためです。

映画の著作物

映画の著作物の保護期間は、公表後70年を経過するまでの間です。
例外的に、その著作物が創作後70年以内に公表されなかったときは、その創作後70年とされています(著作権法54条1項)。

著作権の保護期間の考え方

次の場合には、著作権の保護期間をどのように考えればよいのでしょうか?
それぞれの考え方は、次のとおりです。

共同著作物の保護期間

複数人が協力して創作をした著作物であり、それぞれの創作部分を切り離せないものを、共同著作物といいます。

共同著作物の保護期間は、共同著作者のうち最後に死亡した著作者の死亡時点から70年とされています(著作権法51条2項かっこ書き)。

保護期間延長の改正前に保護期間が切れた著作物の保護期間

平成30年12月30日より、著作権の保護期間が50年から70年に伸長されたことは、先ほども触れたとおりです。

では、平成30年12月30日以前にすでに著作権が切れた著作物の保護期間は、どうなるのでしょうか?

結論として、改正法施行前にすでに保護期間が満了した著作物は、改正によって著作権が復活するわけではありません。※1

改正法施行前の時点で著作者の死亡から50年が経過しているのであれば、その時点で著作権の保護期間は確定的に終了しており、平成30年12月30日以降に著作権が復活することはないのです。

著作権の保護期間を過ぎた作品を使う際の注意点

著作権の保護期間が過ぎた著作物は、原則として自由に利用することが可能です。
たとえば、小説の著作物であれば全文をホームページに掲載したり、写真の著作物であればその写真を印刷したマグカップを販売したりしても著作権侵害とはなりません。

しかし、保護期間が切れた場合であっても、次の点に注意が必要です。

著作隣接権はまだ保護期間内である可能性がある

著作権本体の保護期間が満了していても、著作隣接権は保護期間内である可能性があります。
たとえば、すでに著作権の保護期間が終了した楽曲を、現在も活動している歌手が歌った場合で考えてみましょう。

その楽曲自体の著作権は切れているため、楽曲を自由に演奏することは問題ありません。
しかし、歌手には実演家として著作隣接権があり、これは楽曲の著作権自体とは別の権利です。
そのため、たとえばその歌手が楽曲を歌う音声を録音した姿を無断で録音してそのデータを配布すれば、歌手の著作隣接権を侵害します。

また、歌手が著作権の切れた楽曲を歌唱する姿がテレビ番組で流れた場合において、その映像を録画して動画配信サイトに転送するなどすれば、歌手の著作隣接権のみならず、放送事業者の著作隣接権も侵害する可能性が高いでしょう。

このように、その創作物の著作権は切れていても著作隣接権が保護期間内であれば、自由に利用することはできません。
そのため、保護期間切れの著作物を利用しようとする場合には、実演家や放送事業者、レコード製作者など、著作隣接権者の権利を侵害していないかどうか慎重に確認する必要があります。

著作者人格権に配慮する

著作者人格権とは、著作物の製作者である著作者のみに帰属する人格権としての権利です。
著作者人格権は、譲渡や相続などをすることができません(著作権法59条1項)。
そのため、原則として著作者の死亡とともに消滅します。

しかし、著作権法には、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」という規定があります(著作権法60条)。

つまり、著作者が亡くなったからといって著作者人格権を無視してよいわけではなく、引き続き著作者人格権に配慮する必要があるということです。
そのため、著作権の保護期間が満了した著作物を使用する場合であっても、著作者人格権の侵害にあたるような行為は行わず、利用は常識的な範囲に留めておくべきでしょう。

外国の著作物の保護期間

最後に、外国の著作物の保護期間についての考え方について解説していきましょう。

外国の著作物保護期間の基本

それぞれの国にはそれぞれの国の著作権法が存在し、保護期間が異なる場合があります。
外国の著作物に関する日本国内での保護の考え方は、次のとおりです。

  • 日本の著作権法(70年)よりも保護期間が短い(例:50年)場合:相手国の保護期間(50年)保護される
  • 日本の著作権法(70年)よりも保護期間が長い(例:100年)場合:日本の保護期間(70年)保護される

各国の著作権保護期間

主要国の著作権保護期間は、次のとおりです。※4

  • アメリカ:70年 ※5
  • EU加盟国:70年 ※6
  • ロシア:70年 ※7
  • オーストラリア:70年 ※8
  • インド:60年 ※9
  • メキシコ:100年 ※10

まとめ

日本における著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年です。
保護期間が満了した著作物は原則として自由に利用することができるものの、その際には著作隣接権に注意するとともに、著作者人格権にも配慮しましょう。

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