コラム

公開 2023.01.24 更新 2023.01.30

著作権の主張に登録や申請は必要?著作権登録制度を弁護士がわかりやすく解説

企業法務_アイキャッチ_2806

著作権とは、著作物を保護し、無断で利用などがされないための権利です。
では、著作権を主張するには、登録や申請などが必要なのでしょうか?

今回は、著作権が発生するための要件や著作権の登録制度などについて弁護士がわかりやすく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

著作権とは

著作権とは、著作物が無断盗用などされないよう、著作物を保護する権利です。
著作権や著作権にまつわる権利は1つではなく、大きく分けて次の3つが存在します。

  • 狭義の著作権(財産権):著作物を有形的に複製する権利である「複製権」や、著作物をウェブサイトに掲載する「公衆送信権」、著作物を翻案する「翻案権」など多数の権利が存在します。権利の全部や一部を、他者に譲渡することも可能です。
  • 著作者人格権:著作者自身に帰属する権利です。著作物を無断で改変されない「同一性保持権」や著作物を公表するかどうかなどを決める「公表権」などがあります。著作者人格権は一身専属権であり、譲渡などをすることができません。
  • 著作隣接権:歌手などの実演家や、CDレーベルなどのレコード製作者、テレビ局などの放送事業者などが持つ著作権に隣接する権利です。

著作権について論じる際には、このうちどの権利のことを指しているのかに注意をしながら確認するとよいでしょう。
以下、特に補足がない場合には「狭義の著作権(財産権)」を前提として解説します。

著作権の発生に申請や登録は必要?

著作権を発生させるために、申請や登録などは必要なのでしょうか?
順を追って見ていきましょう。

申請や登録は原則不要

著作権を主張するために、原則として登録や申請は必要ありません。
日本の著作権法では無方式主義を採っており、著作物が創作された時点で著作権が自動的に発生するとされているためです。

なお、著作権が発生するハードルは非常に低くなっています。

著名な画家が描いた絵や著名な作家が書いた小説に著作権が発生するのはもちろん、「思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であれば、一般個人が創作したものにも著作権が発生します(同法2条1項)。

そのため、たとえば幼児の描いた絵や一般個人のブログ記事などであっても著作権の対象となり得、何ら登録などを経ることなく保護の対象となります。

著作権登録制度

次で解説しますが、日本には著作権登録制度が5つ存在します。※1

著作権は、何ら登録しなくても保護の対象となることは、先ほど解説したとおりです。
しかし、それでは不都合が生じる場面があり、著作権登録制度はこの不都合を取り除く役割を担います。

登録しなければ著作権が発生しないということではなく、登録によるメリットがある場合には、登録も一つの選択肢になるということです。

弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

5種類の著作権登録制度

日本には、5種類の著作権登録制度が存在します。※2
それぞれの内容と登録制度の利用を検討すべき場面は、それぞれ次のとおりです。

実名の登録

実名の登録とは、無名や変名で著作物を公表していた場合において、実名(本名)を登録する制度です。
登録を受けることで、著作権の保護期間が伸長される効果があります。

著作権の保護期間は、原則として「著作者の死後70年を経過するまでの間」です(同法51条)。
ただし、著作者が無名または変名である場合には死亡日がわからないため、例外的に「その著作物の公表後70年を経過するまでの間」とされています(同法52条)。

そのため、たとえばペンネームを用いて2022年に著作物を公表した場合、著作権の保護期間の満了は2092年です。
一方、この著作者が実名の登録を受けることによって起算点が「公表後」から「死後」となるため、仮に著作者が2050年まで生存した場合には2120年まで保護を受けることが可能となります。

なお、実名の登録は著作者が自分で行うことができるほか、著作者に遺言で指定をされた者が行うことも可能です。

第一発行年月日等の登録

第一発行年月日の登録とは、無名や変名で公表した著作物の発行者や著作権者が、その著作物が最初に発行された年月日を登録する制度です。

無名や変名で公表された著作物についての著作権保護期間は、上で解説をしたとおり、「その著作物の公表後70年を経過するまでの間」とされています(同法52条)。
つまり、無名や変名の著作物については、「公表日」がいつであるのかが非常に大きなポイントとなるわけです。

そのため、第一発行年月日等の登録を受けることで公表日が明確となり、著作権保護期間の満了日も明確となる効果が得られます。

創作年月日の登録

創作年月日の登録とは、プログラムの著作者がそのプログラムを創作した年月日を登録する制度です。

プログラムの著作物も、著作権の保護対象となります。
しかし、プログラムの著作物は他の著作物とは異なり、公表されないことも少なくありません。

そのため、仮に著作権侵害が発生した場合などには、当該プログラムを創作した日が問題となる場合において、証明が困難となる場合が多いでしょう。

このような事態に備え、プログラムの著作物に限っては、創作年月日の登録を受けることが可能です。

著作権・著作隣接権の移転等の登録

著作権・著作隣接権の移転等の登録とは、著作権の譲渡などがあった場合において、その譲渡などの事実を登録する制度です。

たとえば、不動産には登記制度が存在します。

仮に、不動産の所有者であるAが、不動産をBに譲渡をした後で、Cに対しても二重に譲渡した場合において、その不動産の所有権を確定的に取得するのは、原則として先に登記をした人です。
登記制度という公示方法により、不動産の所有権が誰にあるかという点を明確にして、取引の安全を図るという趣旨から、後から譲渡を受けたCは登記情報を確認して、本当に権利者がAであるのかどうかを確認しておくべきであったといえるからです。
逆に、Bが登記をしていない間に、Cが登記をしてしまえば、原則として、Cの所有となります。それは、登記を怠っていたBの落ち度であるといえるからです。

一方、登録されていない著作権がAからBに譲渡された後でCに対しても二重に譲渡された場合には、Cは本当にその著作権者がまだAのままであるのか、確認する手段がありません。

また、Bとしても後から譲り受けたCに権利を主張されては困ってしまいます。

そこで、利用を検討したいのが、著作権・著作隣接権の移転等の登録制度です。
この登録を受けることで、権利の変動を第三者に対抗することが可能となります。

先の例でいえば、先に譲渡を受けたBがこの登録を受けておくことによって、後からCが権利を主張した場合においても、BはCに自らの権利を主張でき、せっかく譲り受けた著作権を失わずに済むということです。

出版権の設定等の登録

出版権の設定等の登録とは、出版権の設定や移転などがあった場合において、その移転などの事実を登録する制度です。

1つ前に解説した「著作権・著作隣接権の移転等の登録」と同様に、登録を受けておくことによって、出版権が二重で設定された場合や二重で移転がされた場合であっても自分の権利を主張(対抗)することが可能となります。

著作権登録申請をする流れ

著作権登録をする際の基本の流れは、次のとおりです。※3

必要書類を作成する

はじめに、申請書類の作成や収集を行います。

基本の必要書類は、次のとおりです。

  • 登録申請書:登録する内容を記載する書類です。文化庁から公表されている「登録の手引き」を参照しながら、登録を受ける内容に従って記載します。
  • 著作物の明細書:登録を受ける著作物の内容を記載する書類です。著作物が特定できるよう、明確に記載します。

その他、登録を受ける制度によって、次の書類が必要です。

  • 実名の登録:実名の証明書類(戸籍謄本や住民票の写し、マイナンバーカードの写しなど)
  • 第一発行年月日等の登録:第一発行年月日を証明する書類(受領書や頒布証明書、演奏証明書など)
  • 著作権・著作隣接権の移転等の登録:登録の原因を証明する書類(譲渡契約書の写しなど)、登録権利者が単独で申請する場合には登録義務者の承諾書
  • 出版権の設定等の登録:登録の原因を証明する書類(出版権設定契約書の写しなど)、登録権利者が単独で申請する場合には登録義務者の承諾書

必要となる書類は状況によって異なる場合があります。
あらかじめ申請の支援を依頼する弁護士などの専門家もしくは文化庁の窓口に確認するとよいでしょう。

申請する

必要書類の作成ができたら、申請を行います。

申請先は、原則として文化庁著作権課です。
ただし、プログラムの著作物について創作年月日の登録などを受けようとする場合には、一般財団法人ソフトウェア情報センターが窓口となります。

審査がされる

申請書類等が審査窓口に到着したら、審査が開始されます。
審査にかかる標準処理期間は、30日です。※3(P14)

登録または却下がされる

審査後、登録または却下がなされ、通知がなされます。
通知は、メールアドレスがある場合には、原則としてメールによる通知となります。※3(P9)

著作権登録にかかる費用

著作権登録などにかかる費用は、次のとおりです。※2

登記,登録,特許,免許,許可,認可,指定又は技能証明の事項 課税標準 税率
10 著作権の登録(著作権の信託の登録を含む。)
(1)著作権の移転の登録 著作権の件数 1件につき18,000円
(2)著作権を目的とする質権の設定又は著作権若しくは当該質権の処分の制限の登録 債権金額 1,000分の4
(3)著作権を目的とする質権の移転の登録 著作権の件数 1件につき3,000円
(4)無名著作物又は変名著作物の著作者の実名登録 著作権の数 1件につき9,000円
(5)信託の登録 著作権の件数 1件につき3,000円
(6)第一発行年月日若しくは第一公表年月日又は創作年月日の登録 著作権の件数又は著作物の数 1件又は1個につき3,000円
(7)抹消した登録の回復の登録又は登録の更正若しくは変更の登録 著作権の件数又は著作物の数 1件又は1個につき1,000円
(8)登録の抹消 著作権の件数又は著作物の数 1件又は1個につき1,000円
11 出版権の登録(出版権の信託の登録を含む。)
(1)出版権の設定の登録 出版権の件数 1件につき30,000円
(2)出版権の移転の登録 出版権の件数 1件につき18,000円
(3)出版権を目的とする質権の設定又は出版権若しくは当該質権の処分の制限の登録 債権金額 1,000分の4
(4)出版権を目的とする質権の移転の登録 出版権の件数 1件につき3,000円
(5)信託の登録 出版権の件数 1件につき3,000円
(6)抹消した登録の回復の登録又は登録の更正若しくは変更の登録 出版権の件数 1件につき1,000円
(7)登録の抹消 出版権の件数 1件につき1,000円
12 著作隣接権の登録(著作隣接権の信託の登録を含む。)
(1)著作隣接権の移転の登録 著作隣接権の件数 1件につき9,000円
(2)著作隣接権を目的とする質権の設定又は著作隣接権若しくは当該質権の処分の制限の登録 債権金額 1,000分の4
(3)著作隣接権を目的とする質権の移転の登録 著作隣接権の件数 1件につき3,000円
(4)信託の登録 著作隣接権の件数 1件につき3,000円
(5)抹消した登録の回復の登録又は登録の更正若しくは変更の登録 著作隣接権の件数 1件につき1,000円
(6)登録の抹消 著作隣接権の件数 1件につき1,000円

手数料が30,000円以下である場合には、収入印紙による納付が可能です。
30,000円を超える場合には収入印紙での納付ができず、近くの日本銀行歳入代理店などで相当額を納付し、申請書にその領収証書を添付します。

まとめ

著作権は、登録や申請をしなくても発生する権利です。
しかし、登録を受けることでメリットを享受することができる場合がありますので、状況によって登録を検討するとよいでしょう。

著作権の登録や移転に伴う契約書の作成などでお困りの際には、Authense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所には著作権制度にくわしい弁護士が多数在籍しており、大切な著作権を守るサポートをしております。

顧問契約、企業法務のご検討・ご相談はこちら

企業法務に関する資料、様々なプランを
ご用意しています。

弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

こんな記事も読まれています

CONTACT

法律相談ご予約のお客様
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

ご相談から解決までの流れ