コラム
公開 2023.01.31 更新 2024.08.09

電子契約法とは?ECサイト・ネットショップ運営で知っておくべき法律を弁護士が解説

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ECサイト(ネットショップ)の運営などインターネット上で物やサービスを販売する際に知っておくべき法律の一つに、「電子契約法」があります。
電子契約法とは、民法に規定されている契約ルールの一部を変更する法律です。

今回は、電子契約法について弁護士がくわしく解説します。

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電子契約法とは

電子契約法の正式名称は「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」(「(旧)電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」)で、電子での契約に関して、民法の基本ルールを変更する法律です。
この法律は、平成13年(2001年)12月25日から施行され、令和2年(2020年)4月1日から改正法が施行されています。

まず、「契約の成立時期はいつなのか」ということや、「勘違いから契約をしてしまったらどうするのか」など、契約の基本ルールは民法で定められています。

しかし、中には民法のルールを直接適用してしまえば、不都合が生じるケースも存在します。

たとえば、知識が豊富な事業者と一般消費者との契約にそのまま民法を適用してしまうと、消費者が無知に付け込まれて不利益な契約を締結させられるなど、不都合が生じるかもしれません。
民法は対等な立場での契約を前提としており、自己責任の側面が強いためです。
そのため、消費者の保護を強める形で民法の規定を修正する「消費者契約法」が存在します。

同様に、対面や書面での契約とは異なり、インターネット上では誤ってクリックしたことのみで確定的に契約が成立してしまう可能性があります。
このような不都合に対応するため、一定の場合に民法の規定を一部変更して適用する「電子契約法」が定められています。

電子契約法のポイント

2022年11月現在、電子契約法は全部で3条しかない非常にシンプルな法律となっています。
電子契約法のポイントは、次のとおりです。

消費者の錯誤救済

現行の電子契約法は、消費者の錯誤に関する救済のみが定められています。

書面で交わす契約においては、一つの動作で誤って契約してしまうような事態はほとんど想定できません。
一方で、インターネット上での契約では、契約するつもりがなかったにもかかわらず契約してしまう危険があるといえます。

たとえば、契約申し込みボタンの隣にあるリンクを押そうとして誤って契約申し込みボタンを押してしまったり、契約申し込みボタンとは認識しないままに契約申し込みボタンを押してしまったりする可能性などがあるでしょう。

民法においても、誤って契約をしてしまった場合には錯誤取消しの規定を適用し、契約を取り消す手段は存在します。
しかし、民法には次の規定(95条3項)が存在します。

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない

  1. 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
  2. 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

つまり、錯誤(契約するつもりがなかったのに、誤って契約申し込みボタンを押してしまったこと)を理由に契約を取消したい場合には、「重大な過失」がなかったことも必要ということです。

そこで電子契約法では、インターネット上での契約申し込みについて、消費者側に重大な過失がある場合には錯誤による取消しはできないとする民法95条3項の規定を一定の場合には適用しないこととしています。
つまり、消費者側は自分に重大な過失があったとしても、錯誤による取消しを主張することが可能になるということです。

そのうえで、事業者側が「電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込みもしくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合」(同法3条)には、民法の原則どおり、消費者側に重過失がある場合には錯誤による取消しはできないとしています。

「その消費者の申込みもしくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置」とは、消費者が「契約申し込み」などのボタンを押した後確認画面を表示して、もう一度申し込みボタンがクリックされた時点で契約が成立するようにする措置などです。

このことから、契約を事後的に取消しされたくないECサイト運営者側からすれば、ワンクリックで契約を成立させてしまうのではなく、確認画面を表示するなどの措置を講じておくべきでしょう。
このような措置を適切に講じることで、消費者側から錯誤取消しを主張されるリスクを大きく低減することが可能となります。

(旧)契約の成立時期の転換

以前、電子契約法には民法で規定されている契約成立時期を変更する規定が存在していました。
しかし、この規定は、現在は削除されています。

元々、民法では対面での契約と遠隔地にいる人同士での契約で、次のように異なる契約成立時期を定めていました。

  • 原則(対面):到達主義(承諾の意思表示が相手に到達した時点で契約成立)
  • 遠隔地での契約:発信主義(承諾の意思表示を発信した時点で契約成立)

この規定は、遠隔地にいる人同士の契約は郵便などやり取りにタイムラグが生じることを前提としたものです。

しかし、インターネット上での契約では、意思表示の発信時と到達時にほとんどタイムラグが生じません。
そのため、電子契約法では、たとえ遠隔地にいる者同士での契約であっても、インターネットで行う契約であれば到達主義を適用することとしていたのです。

しかし、2020年4月1日に施行された改正民法により、契約の成立時期はすべて到達主義に一本化されました。

これにより電子契約法による契約成立時期の転換は意味をなさなくなったため、現在は削除されています。

電子契約法の対象となる取引・対象とならない取引

電子契約法の対象となる取引と対象とならない取引は、それぞれ次のとおりです。

電子契約法の対象となる取引

電子契約法は、インターネットを介して行う取引のうち、次の要件をいずれも満たすものに適用されます。

  1. 消費者と事業者との間の契約であること
  2. 映像面に表示する手続に従って消費者がその使用する電子計算機を用いて送信することによってその申込みまたはその承諾の意思表示を行うもの

このうち「2」は、あらかじめ作成されたウェブサイトの表示に従って消費者が「購入」ボタンを押して行う取引などをイメージするとよいでしょう。

表現が難しいものの、通常のECサイトであればこれに該当すると考えて差し支えありません。

電子契約法の対象とならない取引

インターネットを介して行う取引であっても、次の取引には電子契約法は適用されません。

  • インターネットオークションなど、一般消費者間の取引
  • 事業者側が画面に表示した手続きに従うのではなく、消費者側が自分で電子メールを書いて申し込むような取引

ECサイト開設でトラブルに遭わないために

ECサイトを運営するにあたっては、消費者などとの間でトラブルになる可能性があります。
トラブルの発生を最小限に抑え、万が一トラブルが起きても不利となってしまわないためには、次の対策を講じるとよいでしょう。

相談先の弁護士を確保しておく

ECサイトを運営する際には、万が一に備え、相談先の弁護士を確保しておくとよいでしょう。

トラブルとなった際、事後的にすみやかに弁護士へ相談することで早期の対応が可能となり、トラブルを最小限に抑えられる可能性が高くなります。
また、事前に予防措置を講じておくことで、トラブルの発生を未然に防ぐことが可能となります。

電子契約や消費者契約にまつわる法律をよく理解しておく

ECサイトを始めるにあたっては、関連する法令をよく理解しておきましょう。
電子契約法のほか、ECサイト運営者が知っておくべき主な法律は次のとおりです。

民法

民法は、契約の基本となる法律です。
消費者契約法などで一部の規定に修正が加えられるものの、ベースとなる法令であることには変わりありません。

そのため、ECサイト運営において最重要となる法律であるといえます。

特定商取引法

特定商取引法とは、事業者による違法や悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。

インターネットを利用した通信販売も特定商取引法の対象とされており、広告をする際や申込みを受ける際に表示すべき項目などが定められています。

消費者契約法

消費者契約法とは、消費者と事業者間に存在する情報量や交渉力の格差に着目し、消費者を保護するために設けられている法律です。
消費者の利益を不当に害する契約を無効とする規定などが存在します。

景品表示法

景品表示法とは、商品やサービスの品質や内容、価格などを偽って表示を行うことなどを規制する法律です。
実際よりも優れたものであるように見せかけて商品を販売することなどが禁止されています。

個人情報保護法

個人情報保護法とは、個人情報の有用性に配慮しつつも、個人の権利利益を保護することを目的とする法律です。
ECサイトを運営するにあたっては、顧客の個人情報を取り扱うこととなるでしょう。
この個人情報を適切に取り扱うべきであるのはもちろんのこと、ウェブサイトなどにプライバシーポリシーを定める必要があります。

利用規約をつくり込む

ECサイトを運営する際には、利用規約をしっかりとつくり込んでおきましょう。

運営するサービスと適合しない、いわゆる「コピペ」で利用規約を作成してしまうと、いざトラブルが発生した際に不利となってしまう可能性があります。

利用規約は、ECサイトの利用者と事業者間の契約ともなる非常に重要な規程です。
そのため、弁護士へ作成を依頼するか、公開前に弁護士に確認してもらうとよいでしょう。

まとめ

電子契約法とは、インターネット上での契約における錯誤取消しの規定を修正する法律です。
ECサイト運営者側としては無用なトラブルを避けるため、ワンクリックで契約を成立させるのではなく、最終申し込みの前に確認画面を表示させるなど、対策を講じておきましょう。

Authense法律事務所には、企業法務にくわしい専門家が多数在籍しております。
ECサイト開設時には、電子契約法や消費者契約法など、注意すべき法律が少なくありません。
また、トラブル予防のため、運営するECサイトの内容に応じた利用規約をつくり込む必要もあるでしょう。

ECサイト運営における法令の理解や利用規約の作成などでお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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