コラム

公開 2022.02.15 更新 2024.03.25

どん底からV字回復を遂げた企業の成功法とは?事業再生を成功させるポイント

どん底からV字回復を遂げた企業の成功法とは?事業再生を成功させるポイント

事業再生とは、債務超過などに陥っている事業の立て直しを図ることを指します。

事業再生ADRや民事再生など事業再生の手法についてそれぞれ解説するとともに、再建を果たした有名企業の成功事例を紹介します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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事業再生とは

事業再生とは、不採算や債務超過となっている事業の立て直しを図ること全般を指します。
具体的な手法には、後ほど解説するとおり、企業努力によるリストラクチャリングや法的整理などさまざまなものが存在し、それらをすべて包括して「事業再生」と呼ぶことが一般的です。

事業再生のために企業が検討すべき方法

事業再生にはさまざまな手法が存在します。
企業が検討すべき主な再生手法を大きく分けると、次の3つに分類が可能です。
それぞれについて解説していきましょう。

企業努力による事業再生

企業努力による事業再生とは、法的な手段に頼らず、かつ特定のスキームを使用しない再生手法です。
私的整理や法的整理をせずとも再建が可能な場合には、まずこの方法を検討することとなるでしょう。

たとえば、事業縮小などのリストラクチャリングなどがこれに該当します。
具体的には、赤字の原因を究明し、不採算となっている店舗の閉鎖や、人員の削減をするなどして事業をスリム化したり、黒字の事業に注力するなどしたりして、事業の立て直しを図ることなどです。

私的整理による事業再生

私的整理とは、裁判所を利用せずに、債務整理を図る再生方法です。

私的整理は法的整理と異なり公告などがなされないため、一般に公表されることが少なく、その会社のブランドやイメージが低下しにくいことが特徴です。
ただし、いずれも金融機関などの債権者が整理手続きに協力してくれる必要があるため、債権者の協力が得られない場合には法的整理を選択せざるを得ないでしょう。

私的整理にはさまざまな手法がありますが、事業の再建を図るための私的整理の主なものとしては、次のものが挙げられます。

事業再生ADR

事業再生ADRとは、経済産業大臣の認定を受けた第三者が関与する、法的整理によらない再生手続きです。※1

過大な債務を負った事業者が再生をするには、金融機関など債権者との調整が欠かせません。
事業再生ADRでは、中立的な立場の専門家が事業と金融機関との調整を行い、事業再生の円滑化を図ります。

税務上、債権者は民事再生と同じく債権放棄により発生する損失を経費に算入することが可能です。

私的整理に関するガイドライン

私的整理に関するガイドラインとは、事業再生を検討する企業と金融機関などの債権者との合意に基づいて債務の猶予や減免をするにあたっての手続き規定です。※2
金融界や産業界を代表する者や学識経験者などで構成される「私的整理に関するガイドライン研究会」が公表しています。

このガイドラインが想定しているのは、私的整理のなかでも特に債務者と多数の金融機関などの債権者が関わって進める再建型の私的整理手続きです。

私的整理ガイドラインに法的な拘束力はありません。
しかし、私的整理を進めるうえで準拠すべきガイドラインとして一般に活用されています。

中小企業再生支援スキームによる手続き

中小企業再生支援スキームとは、中小企業再生支援協議会などが債務免除を含む再生計画の策定支援を実施する際の手順や要件を定めたものです。
中小企業再生支援協議会は中小企業の再生を支援する目的で各都道府県に設置されている公正中立な公的機関で、中小企業の事業再生をサポートしています。※3

利用ができるのは中小企業に限定されていますが、企業の実情に沿ったさまざまな再生スキームの提案を受けることが可能です。

法的整理による事業再生

裁判所の関与のもとで行う事業再生手続きが、法的整理です。
法的整理では債権者間の公平を図るため、より厳格な手続きが求められます。

利害関係者が多かったり複雑であったりするなどして、すべての債権者の協力を得ることが困難な場合などに選択される手続きです。

主な法的整理には、次の2つがあります。

民事再生手続

民事再生手続とは、事業を再建させる目的で使われる裁判上の整理手続きです。※4

民事再生では、原則として旧経営陣がそのまま経営を行なうことが可能です。
ただし、重要な決定事項については監督委員の同意が必要となる場合がある他、旧経営陣がそのまま経営をすることが不適当であると判断された場合には、解任される場合もあります。

民事再生手続きの申し立てが行われ、裁判所から、再生手続き開始決定が下されると、債権調査手続き等を経て、債務者が再生計画案を立案し、裁判所に提出します。この再生計画案について、債権者集会等で可決され、裁判所がこれを認可すると、再生計画案が確定し、債務者は、その計画案に沿って、債権者に弁済していくことになります。
この再生計画案には、今後どのように事業を展開していくとか、債権を何%免除してもらうとか、残りの債権を何年間で支払っていく等の具体的な方法が記載されますので、債権者に納得してもらうことができ、かつ、事業が継続できるような計画を立案することが重要になります。

会社更生手続

会社更生手続は、民事再生手続と同じく事業を再建するために使われる整理手続きです。※4
民事再生手続と比べて債権者数が多く債権額も大きいなど、社会的な影響の大きな会社を想定しています。

社会的な影響の大きさから、手続きは民事再生よりもさらに厳格に定められており、旧経営陣は原則として会社の経営から離脱することとなる点が、民事再生との大きな違いです。

手続きの流れは、民事再生と似たような流れになりますが、民事再生と比べても手続き期間はかなり長期にわたるとされており、更生計画が認可されるまでに数年を要することも少なくありません。

M&Aによる事業再生

M&Aとは、企業の合併と買収のことです。
債務超過に陥った企業であっても、事業内容などに価値があると買い手企業が判断すれば、買収が成立する可能性があります。

M&Aの形態はさまざまであり、双方での合意が成立すれば旧経営陣が経営権を維持することが可能です。

事業再生に成功した企業の事例

誰もが名を知る大手企業であっても、窮地に陥る可能性があります。
業績が悪化しそのまま消滅してしまった企業も存在する一方で、事業再生に成功し見事に復活を果たした企業も数多く存在します。

ここでは、事業再生に成功した企業として、2社の事例を紹介しましょう。

旧カネボウ株式会社

化粧品会社などとして知られていた旧カネボウ株式会社は、多角化路線へと進んだ結果、過剰債務状態へと陥りました。
さらには、これを隠すため粉飾決算を繰り返し、ついには600億円を超える超過債務を抱えることとなったのです。※5

もはや再起不能とも思われた旧カネボウ株式会社の事業を再生させたのが、産業再生機構でした。※6、※7
産業再生機構とは、デフレ対策の一環として、大手金融機関が保有する経営が悪化した企業の債権を買い取ったうえで公的な管理下に置き、企業を再建する目的で設立された機構です。
株式会社産業再生機構法に基づき、5年間の時限組織として設立されたもので、平成19年3月にすでに解散しています。※8

旧カネボウ株式会社は、この産業再生機構のもと、事業が切り離されました。※9

日用品・薬品・食品事業は「クラシエ」へ社名変更し、新たなスタートを切っています。※10
化粧品部門は花王グループの傘下となり、株式会社カネボウ化粧品として現在も存続しています。※11
赤字続きであった繊維部門はセーレン株式会社に事業譲渡され、その後黒字化に転換しました。※12、※13

事業は分割されてしまったものの、それぞれの事業が見事復活を果たしており、事業再生の一つの成功例といえるでしょう。

日本航空株式会社

日本航空株式会社は、2008年のリーマンショックを引き金に経営状況が悪化し、2兆3,000億円もの負債を抱えた結果2010年に経営破綻し、会社更生手続の適用を申請し、裁判所の管理のもと、経営の立て直しが進められました。※14、※15、※16、※17

その後、不採算路線の減便などのコスト削減を徹底し、見事再建を果たしています。※18

日本航空株式会社の再建では、京セラ株式会社の創業者である稲森和夫氏を会長に迎え入れ、リーダー教育とJALフィロソフィの作成に力を入れたことでも話題となりました。※19

まとめ

事業の財務状況が悪化したとき、経営者としては非常に重要な判断を迫られることとなります。
判断が遅れれば遅れるほど、再建が難しくなる可能性も否定できません。

事業再生には記事内で解説したとおりいくつかの手法が存在しますが、それぞれ一長一短であり、再生方法はその企業の状況などに合わせて慎重に検討すべきです。
特に法的手続きを取るかどうか等の手続きの選択や、債権者との交渉、事業計画の策定については、専門家である弁護士のアドバイスを求めるべきであるといえます。

自社のみで事業再生を行うことは、決して容易ではありません。
事業再生についてご検討の際は、お早めにAuthenseまでご相談ください。

参考文献

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