コラム

なくならないパワハラ問題。パワハラ防止法と企業が取るべき対策について解説!

なくならないパワハラ問題。パワハラ防止法と企業が取るべき対策について解説!

トヨタの販売店に勤務していた男性が亡くなった原因が、パワハラによるものと認定されました。今やパワハラは企業にとって避けられない問題です。2022年4月から中小企業にまで対象が拡大されるパワハラ防止法に沿って、企業が取るべき対策をわかりやすく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(東京弁護士会)
東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、慶應義塾大学法科大学院法務研究科修了。企業法務の中でも学校法務を中心に、学校法人・企業側の代理人として、組合対応や訴訟を含む様々な案件を取り扱い、経営者側の労働問題・労使トラブルの解決実績を多く有する。また、複数の芸能プロダクションの顧問弁護士を務めた経験から、テレビ局や広告代理店といったエンタメ分野における実務にも精通しており、業界特有の慣習を踏まえた交渉に長けている。

トヨタ販売店社員へのパワハラ事例

トヨタ自動車の販売店に勤務していた30代の男性が自ら命を絶ったことは、当時の上司によるパワハラが原因だったとして、労災と認定されました。※1

報道によると、男性は他の社員の前などで上司から頻繁に厳しい叱責を受けていた他、月に100時間を超える残業をしていたようです。
男性は、亡くなる数ヶ月前からうつ病を発生していました。

2022年4月1日から中小企業で施行される「パワハラ防止法」を知ろう

ニュースなどで大々的に報道されるパワハラ問題は、大手企業の事例がほとんどです。
しかし、それはあくまでも社会的な影響の大きさから優先的に報道されているにすぎません。
パワハラは決して一部の大手企業のみに関係する問題ではなく、どの企業でも起こりうる問題です。

多発するパワハラは社会問題となっており、これを受けて「パワハラ防止法」が制定されました。
この法律はこれまで、一定規模以上の企業についてのみ先行して施行されていましたが、2022年4月1日からは中小企業を含むすべての企業が対象となります。

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法というのは通称であり、正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。

この法律では、パワハラ以外にも再就職の援助や外国人の雇用管理の改善などについて定めており、このうち第9章の「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」にてパワハラ防止について定めています。

パワハラ防止法では事業主がパワハラ防止のために講じるべき措置などについて定めており、パワハラ予防が事業主の責務であることを明確とした法律です。

そもそも「パワハラ」とは ※2

パワハラ防止法によれば、パワハラは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ことであると定義されています。
これを分解すると、次の3つをすべて満たすものがパワハラに該当します。

「優越的な関係を背景とした」⾔動であること

言動をする人が、言動の対象者に対して優越的な関係を有することが、パワハラの要件の一つです。
優越的な関係といっても、必ずしも上司から部下に対するものに限られるわけではありません。
具体的には、次のようなものがこれに該当するとされています。

  • 職務上の地位が上位の者による言動
  • 同僚または部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協⼒を得なければ業務の円滑な遂⾏を行うことが困難であるもの
  • 同僚または部下からの集団による⾏為で、これに抵抗や拒絶することが困難であるもの

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」⾔動であること

上司が部下を叱責したからといって、それがすべてパワハラに該当してしまえば、部下の指導などできず企業活動が滞ってしまうでしょう。
当然ながら、業務をする上で必要かつ相当な叱責などであれば、パワハラには該当しません。

一方で、たとえば次のものはパワハラに該当し得るとされています。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂⾏するための⼿段として不適当な言動
  • 当該⾏為の回数、⾏為者の数等、その態様や⼿段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

ただし、これに該当するかどうかの判断はその発せられたことばや行為、行為の回数などで画一的に線引きするのではなく、言動が行われた経緯や状況、労働者の属性や心⾝の状況などの事情を総合的に考慮して判断すべきとされています。

「就業環境が害される」こと

言動により、労働者にとって就業環境が不快なものとなったために能⼒の発揮に重大な悪影響が生じるなどの支障が生じることを指します。
これに該当するかどうかの判断に当たっては、平均的な労働者の感じ方が基準とされています。

企業が取るべきパワハラ対策とは?

パワハラ防止法の対象が中小企業にまで拡大されることで、企業は具体的にどのような対策を取る必要があるのでしょうか?
ここでは、企業が取るべき対応を3つ紹介するとともに、仮に企業がパワハラに対応しなかった場合のリスクについても解説します。

パワハラに関する相談へ応じ適切に対応するための体制を整備する

パワハラ防止法では、事業主はパワハラが起きることのないよう、パワハラを受けた労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとされています。

具体的には、パワハラに関する相談窓口を設けたり、仮にパワハラが疑われる事態が生じた際には必要に応じて人事異動を行ったりするなど、必要な措置を講じなければなりません。

相談者への不利益な取り扱いは禁止される

パワハラ防止法では、パワハラについての相談をした者を解雇するなど、不利益な取り扱いをすることを禁じています。

企業内でパワハラが起きてしまった際には、十分に注意すべき規定です。

パワハラについて理解し注意する

パワハラ防止法によれば、事業主や役員自らもパワハラに対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないとされています。

パワハラの防止については、いわゆる現場任せにするのではなく、事業主や役員自身が率先して学び、労働者への言動に注意することが必要です。

企業がパワハラへ対処しなかった場合のリスク

たとえ企業が何らパワハラへの対処をしなかったとしても、パワハラ防止法自体には罰則はありません。
しかし、仮に企業がパワハラを放置すれば、次のような事態が生じる可能性があります。

社内の雰囲気が悪化し社員のモチベーションが低下する

パワハラは、決して当事者間のみで完結する問題ではなく、部署全体や企業全体の雰囲気が悪化する原因となります。
執拗に叱責されているなどパワハラの対象となっている人以外にとっても、同僚などがパワハラを受けている場面を頻繁に目の当たりにしていては精神的に心地良いものではないでしょう。

場合によっては、いつ自分がターゲットになるのかと怯えながら仕事をしたり、自らの役職が上がった際に部下に対してこれまで見てきたパワハラと同様の対応をするなどパワハラの連鎖が起きたりする可能性も考えられます。
そのような雰囲気の職場では社員のモチベーションを保つことは難しく、業績悪化に繋がる可能性も否定できません。

離職者が増加する

企業がパワハラを放置してしまえば、離職者が増加する可能性があります。

パワハラを受けた当事者のみならず、雰囲気の悪化に耐えられなくなった社員や、企業の対応に失望した社員が離職していくためです。

損害賠償請求がなされる

パワハラを放置した結果、社員がうつ病などを発症したり亡くなってしまったりすれば、企業が損害賠償などで法的責任を追及される可能性があります。

たとえパワハラをしたのが一部の問題社員であったとしても、企業が指導や配置転換など適切な対応をしなかった以上、企業にも責任があると考えられるためです。

企業の評判が低下する

パワハラが常態化していることがニュースになったり、SNSなどで拡散されてしまったりすれば、企業のイメージの低下は避けられないでしょう。
結果として、長期にわたる業績の悪化につながる可能性があります。

まとめ

パワハラを予防することや、万が一パワハラが起きてしまった際に適切な対応を取ることは、企業としての責務です。
パワハラ防止法の対象が中小企業にまで広がったことで、企業の責務はより明確なものとなりました。

パワハラは今や社会問題となっており、人を雇用する以上は避けて通ることが難しい問題です。
パワハラ予防の対策をご検討の際や、社内で起きてしまっているパワハラへの対応にお困りの際は、ぜひオーセンスまでご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

パワハラを未然に防止するためには、まずはパワハラに対するしっかりとした理解が必要です。そのためにもパワハラに関する研修を弁護士が裁判実務も交えつつ行うことは大変有意義です。
また、万が一パワハラが生じてしまった場合には、加害者に対する適切な処遇と被害者に対するしっかりとした事後対応が出来なければ、企業は大きな法的紛争へと巻き込まれてしまう可能性があります。
そうした事態にならないよう、労務管理の経験が豊富な弁護士とワンチームとなり、適切な対応をとり従業員にとっても企業にとっても双方に意義のある解決を目指す必要があるでしょう。

顧問契約、企業法務のご検討・ご相談はこちら

企業法務に関する資料、様々なプランを
ご用意しています。

顧問契約・企業法務に関する
お問い合わせはこちら

お問い合わせ

CONTACT

法律相談ご予約のお客様

ご相談:平日 6:30〜20:00 / 土日祝日 10:00〜18:00

24h予約受付中