コラム

公開 2022.04.19 更新 2024.04.09

法務部がないデメリットやリスクは?取るべき対応を弁護士がわかりやすく解説

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法務部は、企業内の法務機能を担う、非常に重要な部門です。
法務部がないという企業も存在するものの、法務部がなければ企業が不利益を被るリスクがあります。

今回は、現在法務部がないことによるリスクや法務部を持つ方法などについて弁護士が解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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法務部の主な役割とは

法務部は、企業の法務機能を担う部署です。
法務部が担う役割は企業によって多少異なるものの、おおむね次の役割を持つことが多いでしょう。

予防法務

法務部が担う役割のうち、もっとも中心となる業務は、予防法務です。
たとえば、契約書のチェックや作成などがこれに該当します。

企業は事業活動を行う中で、日々さまざまな契約を締結します。
契約書に自社にとって不利な内容が書かれていたり契約書に不備があったりすれば、いざトラブルとなった際に不利益を被りかねません。

法令や判例などに照らしてあらかじめ契約書を確認し、適宜修正をすることで、企業を守る契約を締結することにつながります。

法令調査

企業が新たな業務を始めるにあたっては、関連する法令に違反しないよう注意しなければなりません。
法務部門は、このような際などに必要な法令を調査し、経営陣に助言する役割を担います。

また、法令は日々改正されています。
そのため、法務部は自社に関連する法令の改正情報を定期的に確認し、自社が違法状態とならないよう配慮します。

法律相談対応

法務部は、社内からの法律相談業務を担います。
各部署からの相談に応じる他、経営陣から助言を求められることも多いでしょう。

コンプライアンス業務

コンプライアンス業務も、法務部の役割の一つです。
たとえば、パワハラ予防研修や機密情報を漏えいさせないための研修など、コンプライアンス関連の研修や啓蒙活動を担います。

なお、社内に法務部とは別でコンプライアンス部門がある場合には、この業務はコンプライアンス部門が担うこととなるでしょう。

社内規程の整備

企業には、さまざまな規程が存在します。
たとえば、定款や個人情報保護規程、就業規則、退職金規程などです。

これら社内規程を整備することも、法務部の役割の一つなるでしょう。
なお、人事系の規定については、人事部などと連携をして作成する場合もあります。

機関法務

機関法務とは、会社の機関にまるわる法務手続きなどを担う業務です。
たとえば、株主総会の運営や取締役会の開催の補助などを行います。

知的財産権管理

知的財産権管理とは、特許権や実用新案権、商標権などの知的財産権の登録申請をしたり、他の企業の特許権などを侵害していないか調査したりする業務です。

法務部門が担う場合の他、別で知財部門がある場合には知財部門が担います。

社内トラブル対応

パワハラや残業代の不払いなど、社内でトラブルが起きた際の相談窓口を担う業務です。
必要に応じて他の部門や、外部も弁護士と連携をしながら対応を行います。

社外トラブル対応

社外の関係者とトラブルが生じた場合に、対応窓口を担う業務です。
社外トラブルには、たとえば相手の契約不履行や代金の不払い、社外からの訴訟提起など、さまざまなケースが考えられます。

状況に応じて、外部の弁護士などと連携を取りながら対応することが多いでしょう。

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法務担当者がいる企業の割合

先ほど解説したように、法務部は企業において非常に重要な役割を担います。
しかし、法務部がなく法務担当者もいない企業は、実は少なくありません。

東京商工会議所経済法規委員会が2019年3月に公表したデータによれば、契約などの内容をチェックする法務担当者等がいないと回答した企業の割合は、全体の67.2%を占めています。※1

また、担当者はいるものの、兼任であると回答した企業は全体の25.6%であり、専任の法務担当者等がいると回答した企業は8.3%のみでした。

この設問への回答企業は888社であり、決して回答母数が多いわけではないものの、非常に参考になるデータであるといえるでしょう。

法務部がないことのデメリット

先ほど解説したように、法務部がなかったり法務担当者がいなかったりする企業は少なくありません。

では、法務部がないことには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
主なデメリットやリスクは次のとおりです。

本業に割く時間が削られる

法務部がなく法務担当者もいないということは、個々の社員や代表者などが、契約書チェックなど法務担当者「的な」役割を担っている可能性が高いということです。

この場合には、法務業務にかかった時間分だけ、本業の時間が削られることとなります。
そもそも、法務担当者でない人が法務業務を行う場合には、その業務に慣れていないことが多いため、専門の法務部員が担う場合と比べて時間を要している可能性も高いでしょう。

法務判断が社内で統一されにくい

法務部がない場合には、法務判断が社内で統一されにくいリスクがあります。
なぜなら、法務業務が生じた都度、個々の社員や代表者などが判断しており、事例が蓄積されにくいためです。

また、法務判断に関する業務マニュアルなども存在せず、法務にまつわるヒヤリハット事例なども共有されていない場合が多いでしょう。

さらに、当該社員が退職した場合には、当該社員の知識や、経験などが会社に残らない可能性も考えられます。

対応が後手になりやすい

法務部がない場合には、トラブルへの対応が後手になりやすい傾向にあります。
なぜなら、そもそも法務業務が重視されておらず、契約書チェックも厳重に行われていないケースが多いためです。

中には、相手から提示された契約書をよく読まないまま押印をしてしまっている場合もあるでしょう。
そのため、いざトラブルとなった際にはじめて弁護士とともに契約書を確認し、自社に不利な内容が書かれていたことに気づく場合も少なくありません。

法令の改正に気付かず違反してしまうおそれがある

法令は、頻繁に改正されています。

そのため、本来であれば自社に関係する法令の改正情報を定期的に確認し、改正後の内容に適合するよう業務を見直していかなければなりません。
しかし、法務部がない場合には定期的に改正情報をチェックする人がおらず、改正に気がつかない可能性があります。

改正情報に気付けなければ、当初は法令に添った内容の運用となっていたとしても、改正によって違反状態となってしまうリスクがあるでしょう。

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法務部がない場合の対応方法

多かれ少なかれ、すべての企業に法務業務は発生します。
当然ながら、法務部がないからといって、法務業務と無縁でいられるわけではありません。

では、法務部がない企業が今後法務業務を担っていくには、どのように対応すればよいのでしょうか?
主な対応方法は、次の3パターンです。

社長や役員が法務部の役割を担う

1つ目の方法は、社長や役員などが、法務担当者としての役割を兼任して担うことです。
そのうえで、万が一トラブルが生じた場合など、ポイントごとに社外の弁護士へ依頼します。

個人事業の場合や比較的規模の小さな企業などでは、この方法を取る場合が多いでしょう。

新たに法務部を立ち上げる

2つ目は、新たに法務部を立ち上げる方法です。
今後企業を拡大したいと考えており、かつ社内に法務ノウハウを蓄積したいと考えている場合には、この方法を検討するとよいでしょう。

ただし、優秀な法務部員の採用は容易ではありません。
よい人材がいないからといって、妥協で採用をしてしまうと法務部がうまく立ち上がらないリスクもありますので、弁護士などにコンサルティングを依頼しながら、一つずつ着実に進めていく必要があるでしょう。

法務部をアウトソーシングする

3つ目は、法務部をアウトソーシングする方法です。
外部の弁護士などに法務機能を委託し、業務が生じた都度法務業務を担ってもらいます。

コストが高いことを懸念するかもしれませんが、実は、法務部員を採用した場合の給与や法定福利費、採用や教育にかかるコストなどとトータルで比較をすると、新規で法務部員を採用する場合よりも安価で済む場合も少なくありません。

コストを抑えつつ、かつ能力が担保された法務機能を持ちたいと考えている場合には、この方法を検討するとよいでしょう。

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法務部をアウトソーシングするメリット

法務部をアウトソーシングすることには、多くのメリットが存在します。
法務部外注の主なメリットは、次のとおりです。

法務部員を自社で雇用する必要がない

法務部機能をアウトソーシングすれば、自社で法務部人材を雇用する必要はありません。

人を採用すると継続的に給与や社会保険料などの負担が生じるうえ、たとえ部門を縮小したいと考えた場合でも、解雇することは困難です。
また、採用するにもコストがかかる他、継続的に研修など能力向上にかかる費用も負担する必要が生じます。

一方、法務部をアウトソーシングした場合には、自社で人員を雇用する必要はないため、中小企業でも法務部機能を持ちやすいといえるでしょう。

一定の能力が担保される

優秀な法務部員を、自社で採用することは困難です。
新卒の社員にいきなり法務業務を任せることは難しいでしょうし、経験者を中途採用しようとしても、現在の転職市場には、法務部経験者が必ずしも多くは出てこないからです。
また、これから法務部を立ち上げようとする場合には、採用した人材の業務を評価する人がいないため、その人が求める能力を備えているのかどうか判断することも容易ではないでしょう。

一方、法務部を外注した場合には、一定の能力が担保されるため、安心して重要な業務を任せることが可能となります。

トラブル発生時の対応がスムーズである

法務機能を弁護士へ外注した場合には、万が一トラブルが発生した場合の訴訟対応などがスムーズとなります。

また、契約書チェックなどを行う際にも、弁護士の目線で万が一トラブルが発生した場合のことを想定しながら行うため安心です。

なお、Authense法律事務所では、即戦力の法務担当者をお探しの企業様に向けた「ALS(法務機能アウトソーシングサービス)」をご提供しております。
有資格の即戦力人材をアサインすることにより、採用やマネジメントにコストをかけることなく、ニーズに沿った日常の法務業務に幅広く対応いたします。
ダウンロード資料もご用意しておりますので、ぜひご活用ください。


まとめ

法務部がなく、法務担当者がいない企業は、実は少なくありません。
しかし、法務部がないことは、企業にとって大きなリスクです。
思わぬリスクを抱えてしまわないために、法務部機能を持っておく必要があるでしょう。

本文で解説をしたように、法務部機能を持つにはさまざまな方法が存在します。
中でも、特に中小企業におすすめなのは、法務機能を外注することです。
法務部機能を弁護士へ外注することで、企業は本業にいっそう集中でき、安心して業務に取り組むことが可能となるでしょう。

Authense法律事務所では法務部のアウトソーシングサービスを行っており、業務量や、外注する内容などに応じてさまざまな料金プランをご用意しております。
現在法務部がないなど、法務機能のアウトソーシングをご検討の際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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