コラム

公開 2023.07.03 更新 2024.04.09

法務とは?仕事内容と主な役割を弁護士がわかりやすく解説

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法務とは、法律に関する社内の業務を一手に担う部署です。
法務部員には、法令に関する高度な知識のほか、コミュニケーションスキルなどが求められます。

では、法務は具体的に、どのような業務を担うのでしょうか?
また、現在法務部門がない場合にはどのように立ち上げればよいのでしょうか?

今回は、法務部門について弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。大阪市立大学法学部卒業、大阪市立大学法科大学院法曹養成専攻修了(法務博士)。企業法務に注力し、スタートアップや新規事業の立ち上げにおいて法律上何が問題となりうるかの検証・法的アドバイスの提供など、企業のサポートに精力的に取り組む。また、労働問題(使用者側)も取り扱うほか、不動産法務を軸とした相続案件などにも強い意欲を有する。
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法務とは

法務とは、法律にまつわる社内の業務を一手に引き受ける職種です。
また、企業内の法務部門を「法務」と称することもあります。

法務が適切に機能していなければ、自社にとって不利となる契約を気付かないまま締結してしまったり、法改正に気付かず知らぬ間に法令違反状態となってしまったりするリスクが生じます。
法務は法律の観点から企業を守るという非常に重要な役割を担っているといえるでしょう。

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法務の主な役割

法務が担う役割は、主に次の3つに分類されます。

  • 予防法務
  • 戦略法務
  • 臨床法務

それぞれの概要は次のとおりです。

予防法務

予防法務とは、法律にまつわるトラブルを未然に防いだり、仮にトラブルとなった際に企業への影響を最小限に抑えたりするための業務を指します。
この予防法務は、「守り」の法務と称されることも少なくありません。

予防法務の代表例としては、契約書の作成やレビューのほか、コンプライアンス研修の実施などが挙げられます。

戦略法務

戦略法務とは、法律の観点から企業経営をサポートする「攻め」の業務を指します。

たとえば、経営陣から新規事業立ち上げやM&Aなどの相談を受け、法令の観点からアドバイスをしたりプロジェクトに関わったりすることなどがこれに該当します。

臨床法務

臨床法務とは、すでに発生している法的トラブルへの対応業務を指します。

たとえば、会社が損害賠償請求を行う場合の対応や損害賠償請求をされている場合の対応、企業不祥事への対応などがこれに該当します。また、退職者などから未払い残業代を請求された場合の対応なども臨床法務に含まれます

なお、トラブルへの対応は法務部門がすべて行うわけではなく、外部の弁護士と連携をして行うことも少なくありません。

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法務の仕事内容

法務の仕事内容には、どのようなものがあるのでしょうか?

実際に担う業務は、会社によって多少の違いがあります。
また、他に知財部やコンプライアンス部などがあるかどうかによっても、法務部がどこまでの業務を担うのかは異なるでしょう。

ここでは、法務部が担うことの多い業務の例を紹介します。

契約書の作成やレビュー

法務部が担う業務の代表格ともいえるのが、契約書の作成やレビューです。

企業の活動は、さまざまな契約から成り立っています。
契約書に不備があると、相手方から思わぬ責任を追及されたり、トラブルになった際に自社が不利になったりする可能性があります。
特に、取引先から契約書の原案が提示された場合には、相手企業にとって有利な条項が隠れているかもしれません。

企業側の視点に立って、自社にとって有利な内容での契約成立を目指すことは、法務部の重要な役割の一つです。

社内規程の整備

企業には、さまざまな規程が存在します。
たとえば、定款や取締役会規程など経営の根幹にかかわるもののほか、個人情報取扱規程(プライバシーポリシー)や文書取扱規程、安全衛生管理規程など総務関連のものなど、挙げればきりがないほどです。

これらの作成や改訂などについても、法務部が担うことが多いでしょう。
なお、就業規則や退職金規程など人事関連の規程については人事部が担うケースが多いものの、法務部の意見を求められる場合もあります。

社内の法律相談窓口

法務部は、社内の法律相談窓口としての役割を担います。

たとえば、新たな事業を立ち上げるにあたって経営陣から相談される場合もあるでしょう。
また、社内で起きているパワハラやセクハラなどについて相談されることも考えられます。

相談を受けた際には、会社の法務部門であるというスタンスを忘れることなく、会社の利益を第一に考えて回答することが求められます。
ただし、会社に迎合すべきということではなく、自社が法令違反をしそうである場合には、これを阻止するようアドバイスしなければなりません。

株主総会や取締役会の運営サポート

法務部は、株主総会や取締役会の運営サポートなども担います。
たとえば、これらの日程調整や招集通知の発送、想定問答集の作成支援などが挙げられます。

また、外部の専門家と連携をとりつつ、役員改選や社名変更など登記手続きなどまでを担う場合もあるでしょう。
これらの業務は「機関法務」とも呼ばれます。

知財管理

知財部門がない場合には、知財管理も法務部の役割の一つです。

知財管理とは、たとえば企業の特許権や商標権、実用新案権などの出願をしたり、企業が行おうとしている業務が他社の知的財産権を侵害していないかどうか確認したりすることを指します。
また、企業が持つ知的財産権が他社に侵害されている場合には、相手に対して差し止めの請求を行ったり損害賠償請求をしたりするなどの対応も必要となるでしょう。

これらの業務は、外部の弁理士や弁護士などと連携して行うことも少なくありません。

コンプライアンス研修の実施

他にコンプライアンス部門がない場合には、コンプライアンス研修の実施も法務部の役割の一つです。

コンプライアンスとは、法令のほか社会規範や企業倫理を遵守することです。
近年では特にコンプライアンス遵守への意識が高まっており、企業のコンプライアンス遵守は社会からの要請であるといえるでしょう。

コンプライアンス研修とは、たとえばハラスメントの防止研修や個人情報の漏えいを防止するための研修のことです。
また、他社で何らかのトラブルが報じられた際などには、これを他山の石として自社の取り組みを見直す研修を行う場合もあります。

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法務担当者に求められる主なスキル

企業の法務担当者には、どのようなスキルが求められるのでしょうか?
求められる主なスキルは次のとおりです。

法令に関する知識

法務部員である以上、法令に関する知識は不可欠です。
特に会社法や民法、労働基準法など日常的によく使用する法令はある程度内容を理解しておく必要があるといえます。

他にも、その企業の業務に関連する法令は理解しておかなければなりません。
たとえば、BtoCの業務をしている場合は「消費者契約法」や「特定商取引法」、宅建業者であれば「宅建業法」などが挙げられます。

コミュニケーションスキル

意外だと感じる方もいるかもしれませんが、法務部員にはコミュニケーションスキルが不可欠です。
なぜなら、法務部門は社内外の人とコミュニケーションを取る場面が少なくないためです。

たとえば、経営陣を含む社内から業務に関する相談を受けることは少なくないでしょう。
コミュニケーションスキルに難があれば、相談しづらいと思われてしまうかもしれません。

また、取引先などと契約条項のすり合わせなどを行ったり、外部の弁護士と連携をしたりする場合もあります。

調査スキル

法務部員といえども、すべての法令に精通することは現実的ではありません。
条例なども含めると法令は無数に存在し、また頻繁に改正されるものも少なくないためです。

そこで重要となるのが、関連しそうな法令を探し調査するスキルです。
調べるべきことが生じた際に、どの法令を確認するのかおおよそのあたりをつけて、結論を導き出すことが法務部員には求められます。

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法務部を立ち上げる方法

現在自社に法務部門がない場合、法務機能を持つためにはどうすればよいのでしょうか?
法務機能を新たに立ち上げる主な方法は次のとおりです。

社内の人員を兼務させる

1つ目の方法は、社内の人員を法務部員として兼務させることです。

新たに人を雇用する必要がなく、もっとも手軽に感じるかもしれません。
実際に中小企業などでは、社長や役員が事実上法務部員の役割を担っているケースも少なくないでしょう。

しかし、この方法はあまりおすすめできません。
なぜなら、法務部員には高い専門性が求められる一方で、社内で別の業務を担っていた人材が法務部員としての専門性を備えているとは限らないからです。
仮に他の業務で優秀な成績を収めているとしても、法務部員としてのスキルや知識があるとは限りません。

新たに人材を採用する

2つ目の方法は、新たに法務部員を採用することです。
今後社内で法務部門を立ち上げて維持していくのであれば、まずは責任者となる人を採用する必要があるでしょう。
そのため、最初の1人の採用が非常に重要となります。

その際には可能な限り妥協せず、法律知識やコミュニケーションスキル、自社との相性などをしっかり見極めなければなりません。
採用にあたった法務部員としてのスキルの見極めが難しい場合には、顧問弁護士へ面談の場に同席してもらうことなども検討するとよいでしょう。

法務部門をアウトソーシングする

3つ目の方法は、法務部門としての機能をまるごと弁護士などへアウトソーシングすることです。
法務機能をアウトソーシングすることで、自社で人員を雇用することなく法務機能を持つことが可能となります。

アウトソーシングをすることの主なメリットは、次で詳しく解説します。

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法務部をアウトソーシングする主なメリット

法務部門をアウトソーシングすることには、メリットが少なくありません。
特にコストや人員が限られている中小企業では、アウトソーシングすることが大きな選択肢の一つとなるでしょう。

法務部門をアウトソーシングする主なメリットは次のとおりです。

スキルが担保されやすい

自社で法務部門を立ち上げる場合には、そのスキルの評価が一つの課題となります。
法務部員の職務は非常に専門性が高いため、適正に業務が遂行されているかどうかを判断するには、判断する側にもまた高い専門性が必要となるためです。
また、法務部員としての高い専門性を持った人材は引く手もあまたであり、採用のハードルは低くありません。

一方で、法務部門をアウトソーシングした場合には、一定以上のスキルが担保されます。
スキルの向上に必要である研修の受講などの教育を自社で行う必要もありません。

業務の繁閑に対応しやすい

法務部門の業務は常に同じ程度の分量で発生するとは限らず、時期によって繁閑の差が生じることが一般的です。
これに自社のみで対応しようとすれば、忙しい時期を基準としてこれに対応できるだけの人員を確保する必要があるでしょう。
当然ながら、業務量が減ったからといって一度雇用した従業員を容易に解雇することはできません。

一方、アウトソーシングの場合には、業務の繁閑へ柔軟に対応することが可能です。

コストがかかりにくい

法務部門をアウトソーシングするには、高額な費用が必要であると感じている人もいるかもしれません。
しかし、実際には法務部員を雇用するよりもアウトソーシングの方がトータルコストがかからないこともありえます。

優秀な法務部員を雇用するには一定以上の給与を支払う必要があるほか、社会保険料などの負担も発生します。
採用時のコストも無視できません。

アウトソーシングに要する費用は弁護士によって異なりますが、想定される業務量などによって異なることが一般的です。
なお、Authense法律事務所では、即戦力の法務担当者をお探しの企業様に向けた「ALS(法務機能アウトソーシングサービス)」をご提供しております。
有資格の即戦力人材をアサインすることにより、採用やマネジメントにコストをかけることなく、ニーズに沿った日常の法務業務に幅広く対応いたします。


業務の繁閑に対応しやすい

法務部門の業務は常に同じ程度の分量で発生するとは限らず、時期によって繁閑の差が生じることが一般的です。
これに自社のみで対応しようとすれば、忙しい時期を基準としてこれに対応できるだけの人員を確保する必要があるでしょう。
当然ながら、業務量が減ったからといって一度雇用した従業員を容易に解雇することはできません。

一方、アウトソーシングの場合には、業務の繁閑へ柔軟に対応することが可能です。

まとめ

法務は、企業内の法令に関する業務を一手に担う非常に重要な業務です。
法務部門がきちんと機能していなければ、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。

法務部門は、自社で立ち上げる方法の他、アウトソーシングをすることも選択肢の一つです。
お困りの際には、アウトソーシングを受けている弁護士へ相談してみるとよいでしょう。

Authense法律事務所では、法務部門のアウトソーシングサービスに力を入れています。
法務部門の立ち上げをご検討中の場合や法務部員が退職してお困りの場合などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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