コラム

公開 2023.01.19 更新 2023.01.30

著作権譲渡とは?譲渡時の注意点や契約書のポイントを弁護士がわかりやすく解説

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著作権は、他者に対して譲渡をすることが可能です。
しかし、譲渡に当たっての契約では、さまざまな点に注意しなければなりません。

今回は、著作権を譲渡する際の注意点や、譲渡にあたってトラブルとならないための対処法などについて弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。明治大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院修了。健全な企業活動の維持には法的知識を活用したリスクマネジメントが重要であり、それこそが働く人たちの生活を守ることに繋がるとの考えから、特に企業法務に注力。常にスピード感をもって案件に対応することを心がけている。
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著作権とは

著作権とは、著作物を保護するための権利です。
著作権の保護対象となるものは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項)とされていますが、その範囲は非常に広く、一般個人のブログ記事や幼児の描いた絵であっても保護対象となり得ます。

また、著作権を主張するために、何らかの登録や申請などは必要ありません。
創作した時点で、自動的に発生する権利です。

著作権には、次の3つが存在します。

  1. 狭義の著作権(財産権):著作物を有形的に複製する権利である「複製権」や複製物を公に譲渡する権利である「譲渡権」などが含まれます
  2. 著作者人格権:著作者に一身専属的に帰属する権利です。著作物を勝手に改変されない「同一性保持権」や、著作物に著作者の氏名を表示するかどうかなどを決める権利などが含まれます
  3. 著作隣接権:歌手などの実演家や、放送事業者、レコード製作者が保有する権利です

このうち、「狭義の著作権(財産権)」には、およそ11の権利が存在します。※1

これらの権利は、必ずしもまとめて譲渡すべきものではなく、たとえば「複製権のみ」や「譲渡権のみ」など、必要な権利を細分化して譲渡することが可能です。
また、たとえば「複製権のうち、複製して出版する権利」だけを譲渡するなど、さらに細分化して取り扱うことも少なくありません。

著作権は一つの権利ではなく、その内容として複数の権利を含むものだということを押さえておきましょう。

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著作権の譲渡とライセンス契約

著作権を他者が自由に利用する方法は、著作権の譲渡のみではありません。
他に、ライセンス契約も考えられます。

では、著作権の譲渡とライセンス契約とは、どのように異なるのでしょうか?
著作権譲渡の考え方とライセンス契約との主な相違点は、次のとおりです。

著作権の譲渡とは

著作権の譲渡とは、A氏が持っていた著作権をB氏に譲り渡す(売却する)ことです。
ある土地をA氏からB氏に譲渡したら、すでにA氏はその土地の所有者ではなくなるのと同じように、ある著作権をA氏からB氏に譲渡した後は、すでにA氏はその著作権者ではなくなります。

つまり、元々の所有者であるからといって、B氏に売った土地をA氏が勝手に使うことはできないのと同様に、B氏に売った著作権は、A氏が自由に使うことはできなくなるということです。

また、いったんB氏に譲渡した著作権を、A氏が別のC氏に譲渡することもできなければ、著作権を使用したいC氏にA氏が利用の許可を与えることもできません。
B氏への譲渡が成立している以上、A氏はもはや著作権者ではないためです。

なお、著作権について考える際には、「著作者」と「著作権者」の違いに注意しましょう。

「著作者」とはその著作物を制作した人であり、著作権譲渡によって変動することはありません。
つまり、上の例でいえば、たとえ著作権がA氏からB氏に譲渡されたとしても、A氏がその著作物の制作者である以上、「著作者」はA氏のままであるということです。

一方、「著作権者」とは、その著作権にまつわる権利を所有している人を指し、著作権譲渡によって変動します。
上の例でいえば、A氏からB氏に対してある著作物の著作権がすべて譲渡された以上、A氏はもはや著作権者ではなくなり、B氏が著作権者です。

ライセンス契約との違い

ライセンス契約とは、他者に対して著作権の利用を許諾する契約です。
ライセンス契約の内容はまちまちですが、一定の利用料を受け取る代わりに、一定期間内かつ一定内容での利用を許諾するケースが多いでしょう。

あくまでも利用の許諾であるため、著作権の譲渡とは異なり、著作権者は変動しない点が特徴です。

また、同じ著作物に関する著作権を、複数の相手に許諾することもできます。

著作権の譲渡ではなくライセンス契約でも目的を果たせる場合には、双方の違いを知ったうえで、ライセンス契約とすることも検討するとよいでしょう。

著作権譲渡をする際の注意点

上で解説をしたように、著作権は一つの権利ではなく、複数の権利が束になっているものです。
このことなどを踏まえ、著作権譲渡をする際には、次の点に注意しましょう。

「すべての著作権を譲渡する」では譲渡されない権利がある

著作権をすべて譲渡したいと考えた場合に、著作権譲渡契約書に「すべての著作権を譲渡する」などと記載すればよいと考えるかもしれません。
しかし、これでは不十分です。

なぜなら、著作権法に、次の規定があるためです(61条)。

(著作権の譲渡)
第61条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

つまり、第27条の権利である「翻訳権、翻案権等」と、第28条の権利である「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」については、単に「すべての著作権を譲渡する」などと記載しただけでは、譲渡の対象から漏れてしまうということです。

これらも含めて著作権を譲渡したいのであれば、そのことを明記して契約書を作成しなければなりません。
たとえば、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」とするなどです。

著作者人格権の譲渡はできない

著作者人格権は、著作者に自動的に発生する権利です。
この権利は一身専属的なものであり、譲渡したり相続させたりすることはできません。

そのため、著作権譲渡契約にあたって、「著作者人格権を譲渡する」などと記載をしても、この規定は無効です。
実際には、「著作者人格権を行使しないものとする」などの不行使特約を入れるなどの処理をすることが多いでしょう。

譲渡後は著作者であっても著作権を行使できなくなる

すべての著作権を譲渡してしまうと、以後は著作者であっても譲受人(著作権者)の許諾がなければ著作権の行使ができなくなります。
たとえば、いったんA氏がB氏へ譲渡した著作権を別のC氏へ譲渡できないのはもちろんのこと、A氏自らがB氏に無断で利用することもできなくなるということです。

この点でライセンス契約とは大きく異なりますので、誤解のないよう注意しましょう。

著作権の消滅時期を知っておく

著作権は、原則として著作者の死後70年(著作者がペンネームであり本人が誰か周知されていない場合は、公表後70年)で消滅します。

これは、著作権が譲渡されたとしても変動しません。
つまり、実名である著作者A氏が2022年に亡くなったのであれば、この著作権は2092年の末に消滅します。

仮にこの著作権をB氏が譲り受け、B氏が2050年まで存命したとしても、著作権の保護期間が伸長されるわけではありません。

二重譲渡のリスクを知っておく

不動産には登記制度があり、各不動産の情報や所有者の情報が登記されています。

そのため、A氏からある不動産の購入を持ち掛けられたB氏が登記の情報を見ることで、その不動産が本当に今もAのものであるのか、それとも既に別の人のものとなっているのかを確認することが可能です。

これが、二重譲渡の防止につながっているといえるでしょう。

一方、そもそも著作権は登録などを要することなく発生している権利です。
そのため、Aからある著作権の購入を持ち掛けられたとしても、その著作権が本当に今もAのものであるかどうかを確認する手立てがありません。

著作権の譲渡を受ける際には、この点も念頭におき、慎重に調査する必要があるでしょう。

なお、著作権の譲渡には後ほど解説をするとおり登録制度が存在し、以前にされた譲渡が登録されている可能性はあります。
ただし、登録をしないと譲渡の効果が生じないわけではなく、登録がないからといってそれ以前に譲渡がされていないことの証明とはならないことには注意が必要です。

著作権譲渡契約書作成のポイント

著作権譲渡契約書を作成する際には、次の点に注意してください。

譲渡する権利を明記する

著作権は、一つの権利ではなく複数の権利が束になったものです。
そのため、著作権譲渡契約書を作成する際には、著作権のうちどの権利を譲渡するのか対象を明確に記載しましょう。契約書においては、著作権法に規定されている権利の名称を使うなどして、譲渡対象を明確にするのがよいでしょう。

中でも、上で解説した著作権法27条の権利(翻訳権、翻案権等)と28条の権利(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)を含めて譲渡をしたい場合には、その旨を契約書に明記しておく必要があります。

著作者人格権の不行使特約を明記する

たとえ「すべての著作権を譲渡する」などと記載をしても、著作者人格権を譲渡することはできません。
著作者人格権は著作者に一身専属的に帰属する権利であり、譲渡や相続の対象とはならないためです。

しかし、著作権の譲渡を受けた側からすれば、著作者人格権を行使されれば目的の達成が困難となる場合もあるでしょう。

特に、著作者人格権のうち同一性保持権の及ぶ範囲は非常に広く、使用にあたって必要な改変であっても制約されてしまう可能性があるためです。

そのため、「著作者は、その著作物の改変について著作者人格権を行使しないことを予め承諾する」など、著作者人格権の不行使特約を盛り込んでおくことをおすすめします。

著作権譲渡でトラブルにならないための対策

著作権譲渡に関してトラブルとならないためには、どのような対策を講じておけばよいのでしょうか?
検討したい主な対策は、次のとおりです。

あらかじめ弁護士に相談する

著作権譲渡に関する契約をする際には、あらかじめ著作権法にくわしい弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
なぜなら、著作権はさまざまな権利が束になったものという点で、非常に特殊であるためです。

著作権譲渡で問題を生じさせないためには、どの権利を譲渡するのか、当事者双方で誤解のないよう擦りあわせておかなければなりません。
この擦りあわせが不十分であれば、譲渡を受けた側としては「二次創作についても自由に行える」と認識している一方で、譲渡をした側としては「二次創作をする権利までは譲渡していない」と主張するなど、トラブルの原因となる可能性があります。

このようなすれ違いを防ぐため、著作権譲渡をする際にはあらかじめ弁護士へご相談いただくとよいでしょう。
状況によっては、弁護士立ち合いのもとで、譲渡の条件などを擦りあわせておくことも一つの手段です。

著作権譲渡契約書を作り込む

著作権譲渡をする際には、譲渡契約書をしっかりと作成しておきましょう。
口頭のみでの契約ではあいまいな部分が残りがちであるところ、契約書を作成することで、たとえ齟齬があったとしても事前に気が付ける可能性が高くなるためです。

また、きちんと契約書を交わしておくことで、譲渡する権利の範囲やその他の条件などの取り決めが明確となり、「言った、言わない」などのトラブル予防にもつながります。

なお、上でもお伝えしたように、著作権はやや特殊な権利ですので、譲渡契約書は弁護士に作成を依頼するか、自社で作成をする場合であっても弁護士にチェックをしてもらうとよいでしょう。

著作権譲渡の登録を検討する

著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生する権利です。
著作権を主張するために登録などをする必要はなく、またプログラムの著作権を除いて著作権自体を登録する制度もありません。

一方で、著作権を譲り受けた場合には、「著作権・著作隣接権の移転等の登録」をすることができます。
「著作権・著作隣接権の移転等の登録」とは、著作権の譲渡や質権の設定などがあった場合において、文化庁に移転の事実を登録する制度です。

この登録をすることで、仮に著作権が二重譲渡されたとしても、第三者に対して権利を主張することが可能となります。
そのため、特に価値の高い著作権の譲渡を受けた際には、譲渡の登録を受けることを検討するとよいでしょう。

まとめ

著作権は一つの権利ではなく、さまざまな権利が束になったものです。
また、財産権である著作権とは別途、著作者には著作者人格権も発生しています。

そのため、著作権の譲渡をする際にはあらかじめどの権利が譲渡対象となっているのかをよく整理しすり合わせたうえで、譲渡契約書を正確に作成しておく必要があるでしょう。

Authense法律事務所には著作権にくわしい弁護士が多数在籍しており、著作者譲渡契約書の作成やチェック、トラブル発生時の対応などが可能です。
著作権譲渡に関してお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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