VRオフィスやバーチャルオフィスは、従業員が現実のオフィスに出勤するのではなく、仮想空間にあるオフィスへ出勤する仕組みのことです。
アメリカのMeta社(旧:Facebook社)がメタバースをリリースしたことで話題となりました。
今回は、VRオフィスやバーチャルオフィスの概要や導入するにあたっての課題について解説します。
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「VRオフィス」、「バーチャルオフィス」とは?
近年、VRオフィスやバーチャルオフィスが注目され始めています。
VRオフィスやバーチャルオフィスとは、現実世界にあるオフィスに出勤するのではなく、インターネット上にある仮想のオフィスに出勤する形態のオフィスです。
いわゆる住所貸しのオフィス(物理的実体を有さず、郵便物や電話の受取・転送等を行うサービス等を行うのみ。)を「バーチャルオフィス」と呼ぶこともありますが、ここでいうバーチャルオフィスはこれとはまったく別のものだと考えてください。
はじめに、最新の事例と今後の展開について見ていきましょう。
米Meta社が始めた「メタバース」の例
「メタバース」とは、人々が、自身の分身となるアバターを通じて、仮想空間に入り、自由に活動や交流ができるサービスのことです。※1
既にテレワークなどで導入されていることの多いオンラインミーティングツールとは異なり、メタバースではバーチャル上のオフィスに従業員それぞれのアバターが出勤し、まるで実際のオフィスのように自由にバーチャル上にある部屋を行き来したり、他のアバターと会話をしたりすることができます。
米Meta社は2021年8月に、会議やセミナーをCG(コンピューターグラフィックス)で作成した仮想空間で開くことができるサービスを開始しました。
今後は、ゴーグル型のVR機器を活用した本格的なサービスを拡充していくようです。
今後の展望
単に必要な情報を伝達するのみであれば、オンライン会議やチャットツールなどでやり取りをすることが可能です。
新型コロナ禍のテレワークで、これらのツールを活用している方も少なくないことでしょう。
しかし、これらのツールでは必要な事項を伝えることはできても雑談が生まれにくく、コミュニケーションが必要最低限になってしまい、一体感が生まれにくいという点が問題視されていました。
企業活動の中には、会議のような、あらたまった場所のみならず、自由なコミュニケーションの場からアイディアが生まれる場合がある他、従業員同士のコミュニケーションが円滑になることで日常業務のやり取りがよりスムーズになるとの側面があるためです。
こうした問題は、バーチャルオフィスやVRオフィスで現実世界と大差のないコミュニケーションが取れるのであれば解決できます。
後に解説するとおり、現時点ではまだいくつかのハードルはあるものの、バーチャルオフィスやVRオフィスへの出勤が当たり前となる日もそう遠くないかもしれません。
VRオフィス・バーチャルオフィス導入のメリット&デメリット
VRオフィスやバーチャルオフィスは、すでに身近へと迫ってきています。
では、これらを導入することにより、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
メリット
VRオフィスやバーチャルオフィスを導入するメリットには、次のものが考えられます。
地域を問わず採用できる
従業員が勤務先を選択する際には、勤務地も重要なポイントとなります。
事情により実家から離れられないケースや、地元に残って仕事がしたいケース、家族の転勤で海外に居住しているケースなど、さまざまな理由があるためです。
しかし、VRオフィスやバーチャルオフィスであれば、地域を問わずに優秀な人材を採用することが可能です。
また、VRオフィス内で、多言語が同時翻訳されるシステムも開発されているとのことであり、言語の壁も超えることができるかもしれません。※2
現実のオフィスを増やすことなく世界中から優秀な人材を集めることも夢ではないでしょう。
新型コロナなどの感染症が拡大しても業務が継続できる
コロナ禍においては、多くの企業で事業活動の停止や縮小に追い込まれました。
これを機に、急ピッチでテレワークやオンライン会議などのシステムを整えた企業も少なくありません。
しかし、平時からVRオフィスやバーチャルオフィスを導入していれば、いざ感染症が拡大した際などにも通常どおり業務を継続することが可能です。
高額なオフィス賃料が不要になる
多くの従業員が集まることのできるオフィスを借りようとすると、大きな費用が掛かります。
優秀な人材を多く集めるためにはある程度通勤しやすい立地である必要であるため、都心の高価なオフィスを借りざるを得ない場合もあるでしょう。
しかし、VRオフィスやバーチャルオフィスを導入することにより、現実世界でのオフィスは不要となります。
これにより、高額なオフィス賃料の負担を軽減することが可能です。
デメリット・課題
一方で、VRオフィスやバーチャルオフィスの導入には、デメリットも存在します。
主に次のようなものがあります。
対面と比べてコミュニケーションが取りにくい可能性がある
VRオフィスやバーチャルオフィスは、従来のオンライン会議システムと比べてコミュニケーションが取りやすいとされています。
しかし、それでも当面は、現実で対面するのとまったく同じようにコミュニケーションが取れるとまでは言いづらいでしょう。
この点は、今後のさらなる技術の発展に期待したいところです。
セキュリティ保護されたインターネット環境の整備が必要
VRオフィスやバーチャルオフィスを導入する際は、仮想空間のオフィスに出勤する従業員それぞれのパソコンやインターネット環境について、より強固なセキュリティ対策が必要です。
現実世界のオフィスで、仮に受付でのセキュリティをすり抜けてオフィス内や会議室に不審者が入ってきた場合、当然ながら従業員がそのことに気づき対処することができるでしょう。
しかし、仮にセキュリティの甘い従業員のパソコンが乗っ取られたりインターネットのセキュリティが突破されたりして、従業員のアバターに成りすました不審者が仮想空間のオフィス内や会議空間に入ってきた場合は、気づくことができない可能性があります。
知らないうちに機密情報が外部に漏れていたなどの事態を避けるため、セキュリティにはより注意する必要があるでしょう。
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VRオフィス・バーチャルオフィスを導入する際の課題
VRオフィスやバーチャルオフィスの導入には課題もあります。
代表的なものは次のとおりです。
就業規則などの大幅改定が必要となる
VRオフィスやバーチャルオフィスを導入し、実際に仮想空間に従業員を出勤させるためには、就業規則や社内規程などの大幅な改訂が必要となる場合があります。
また、従業員の中にはVRオフィスやバーチャルオフィスへの出勤を好まない人がいる場合もあり、場合によっては離職者が出る可能性もあるでしょう。
電子契約や電子印鑑などの環境整備が必要となる
VRオフィスやバーチャルオフィスを導入する以上、現実のオフィスへはできるだけ出勤することなく業務を進める流れを構築する必要があります。
そのような際の障壁となりうるのが、契約書などへの押印です。
VRオフィスやバーチャルオフィスの導入を検討する前に、電子契約や電子印鑑などの仕組みを整える必要があるでしょう。
法整備が追い付いていない
VRオフィスやバーチャルオフィスはまだまだ新しい仕組みであり、法の整備が追いついているとは言いづらいのが現状です。
許認可が必要となる業務については、現実のオフィスがあることが前提となっている場合も少なくない他、中には現実のオフィスに責任者を常駐させることが許可の要件になっている場合もあります。
また、海外に在住する人を雇用する場合には、法の規制や給与支払い時の源泉徴収など、大小さまざまなルールを確認しておく必要があります。
適法にVRオフィスやバーチャルオフィスを導入するには個別の検討が必要となる場合が少なくないため、導入にあたってはまず弁護士へご相談いただくとよいでしょう。
まとめ
VRオフィスやバーチャルオフィスは、まだまだ新しい仕組みです。
現状は課題も多いものの、今後より一層技術が向上し法整備も追いついていけば、導入する企業も増えていくことでしょう。
導入にあたって規程の整備や適法な運用にお困りの際は、弁護士へご相談ください。