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遺留分侵害額の計算方法|3ステップの計算式と具体例を弁護士が解説【割合早見表つき】

遺留分侵害額は、基礎財産に遺留分割合と法定相続分を掛けて遺留分額を求め、そこから受け取った遺贈・生前贈与・遺産を差し引いて計算します。

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遺留分侵害額は、基礎財産に遺留分割合と法定相続分を掛けて遺留分額を求め、そこから受け取った遺贈・生前贈与・遺産を差し引いて計算します。

遺留分の計算は、手順そのものはシンプルに見えますが、基礎財産に何を含めるか、不動産をいくらで評価するか、どの贈与が対象になるかといった前提の部分で見解が割れるケースが少なくありません。計算の全体像を把握したうえで、ご自身のケースに当てはめていただくことで、請求できる金額の見当がつきます。相続の問題を一人で抱え込まず、まずは状況を整理することから始めましょう。

遺留分侵害額の計算式|まず全体像(3ステップ)

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計算は3つのステップで構成されます。まず①基礎財産(相続開始時の財産+一定の贈与−債務)を確定し、次に②遺留分割合と法定相続分を掛けて「遺留分額」を求め、最後に③贈与や遺産分割等により受け取った財産を差し引いて(負担する債務があれば加算し)「遺留分侵害額」を算出します。

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、法律が一定の相続人に保障する最低限の取り分(権利)のことです。被相続人は遺言で財産の処分を自由に行えますが、一定の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言に対しては、相続人が金銭請求できる権利が認められています。

なお、遺留分を持つ相続人は被相続人の配偶者・子・直系尊属であり、兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1042条)。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

遺留分侵害額とは(2019年改正で金銭債権化)

遺留分侵害額(いりゅうぶんしんがいがく)は、自分の遺留分額から実際に受け取った財産を差し引いた不足分のことです。以前は「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」と呼ばれ、特定の財産の返還を求める権利でしたが、2019年の民法改正により金銭請求権に変わりました(民法第1046条)。

この改正によって、不動産や株式を現物で取り戻すのではなく、その価値に見合った金銭の支払いを求める形に整理されています。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

ステップ1:遺留分算定の「基礎となる財産」を確定する

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基礎財産の計算式は「相続開始時の財産+一定の贈与−債務」です(民法第1043条・第1044条)。この基礎財産の確定が計算全体の起点であり、ここがぶれると最終的な侵害額も大きくずれます。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

①相続開始時にあった財産を評価する

相続が開始した時点(被相続人の死亡日時点)で存在した財産を一覧にし、それぞれの評価額を算出します。評価対象となる主な財産は次のとおりです。

  • 不動産(自宅・土地・収益物件など):相続開始時の時価が原則
  • 預貯金・現金:残高をそのまま計上
  • 有価証券(上場株式):相続開始日の終値を使用
  • 非上場株式:後述のとおり評価が複雑になるため別途検討が必要
  • その他の財産(生命保険・退職金・ゴルフ会員権など)

なお、不動産の評価は、相続開始時の「時価」によるのが原則です。固定資産税評価額や路線価はあくまで税務上の指標であり、遺留分計算における「時価」とは異なる場合があります。この評価方法の違いが後に争いになるケースが実務でも多く見られます。

当事務所が対応した事例では、まず財産の全体像を調べるところから始める必要があったケースがあります(詳細:https://www.authense.jp/souzoku/case/12/ )。代襲相続人となった孫が相続財産の詳細を把握できておらず、財産調査の段階から弁護士が関与する形で進めました。計算の前提となる「何がいくらあるか」を明らかにする作業は、請求の準備段階として欠かせません(民法第1043条)。

②生前贈与を加える

被相続人が生前に行った贈与の一部は、基礎財産に加算されます。加算の範囲は次の2種類に分かれます(民法第1044条)。

  • 第三者への贈与:相続開始前1年以内のもの
  • 相続人への特別受益(特別受益にあたる贈与):原則として相続開始前10年以内のもの

ただし、この1年や10年より前の贈与でも、当事者双方が遺留分を侵害すると知りながら行った贈与は加算対象になりえます。この「遺留分を侵害することを知っていたかどうか」の判断が実務上の論点になることがあります。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

③債務を差し引く

被相続人が負っていた借入金などの債務は、基礎財産から差し引きます。この時、葬儀費用については、原則として遺留分の基礎財産から控除しないとされています。この点は混同されやすいため、念のため整理しておくことを推奨します。

被相続人の行った生前贈与は無制限で基礎財産に加算されるのではなく、いつ贈与がされたか、誰に対する贈与か、贈与の目的によって加算されるかどうかが変わります。ただし、原則は加算されないような贈与でも、贈与の当事者双方が贈与時に客観的に遺留分を侵害するような事実関係を知っていれば(遺留分を侵害しようという積極的な意図まではなくても)、その贈与は基礎財産の算定に加算される可能性があるので注意が必要です。

ステップ2:遺留分の割合を掛けて「遺留分額」を求める

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総体的遺留分とは、遺留分権利者全体に確保されるべき遺産のことをいい、その割合は原則として遺産全体の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)です。これに各相続人の法定相続分を掛けることで、その人個人の遺留分割合が決まります(民法第1042条)。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

相続人ごとの遺留分割合(兄弟姉妹に遺留分はない)

相続人の構成によって遺留分割合は変わります。以下の早見表を参考にしてください。

相続人の構成 総体的遺留分 配偶者 子(全員) 直系尊属(全員)
配偶者のみ 1/2 1/2
子のみ 1/2 1/2
配偶者+子 1/2 1/4 1/4(子全員で)
配偶者+直系尊属 1/2 1/3 1/6(全員で)
直系尊属のみ 1/3 1/3(全員で)
  • 兄弟姉妹は遺留分の対象外です(民法第1042条1項)。
  • 子が複数人いる場合、「子の遺留分全体」を子の人数で均等に分けます。
  • 代襲相続人(被相続人の子が先に亡くなり、その子の子=孫が代わりに相続する場合)も同様に遺留分を主張できます。

個別の遺留分額の計算

このように、個別の遺留分額は次の式で算出します。

個別の遺留分額=基礎財産 × 総体的遺留分率 × その人の法定相続分

たとえば、基礎財産が6,000万円で相続人が配偶者と子1人の場合を例にとると次のようになります。

  • 配偶者の遺留分額:6,000万円 × 1/2(総体的遺留分)× 1/2(法定相続分)= 1,500万円
  • 子の遺留分額:6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円

ステップ3:遺留分侵害額を計算する(控除計算)

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遺留分侵害額の計算式は「遺留分額−(受けた遺贈・特別受益)−(遺産分割で取得する財産)+(承継する相続債務)」です(民法第1046条第2項)。計算結果がプラスになった分だけ、遺留分侵害額として金銭請求ができます。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

遺留分額から差し引くもの・加えるもの

以下の内訳を順番に当てはめていきます。

差し引くもの(マイナス要素)

  • 遺言によって受けた遺贈(いぞう)の価額
  • 生前に受けた特別受益(生前贈与のうち持ち戻しの対象となるもの)の価額
  • 相続や遺産分割によって取得することになる財産の価額

加えるもの(プラス要素)

  • 承継する(引き受ける)相続債務の額

ここまでの計算で最終的な侵害額がゼロ以下になれば、遺留分の侵害は発生していないことになります。一方、プラスの数字が出れば、その金額を相手に請求する権利が発生します。

結果がプラスなら金銭請求できる

計算結果がプラスになった場合、遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)として行使できます。請求先は、遺留分を侵害した遺贈や贈与を受けた相手方です。複数の受遺者・受贈者がいる場合は、原則として遺贈から先に負担を求め、次に贈与の新しいものから遡る順序が定められています(民法第1047条)。

【具体例】金額を入れて計算してみる

実際の数字で確認しましょう。以下、3つのケースで計算の手順を確認します。それぞれ「基礎財産の確定→遺留分額の算出→遺留分侵害額の算出」の順に追っていただくと、手順が整理されます。

計算例1:配偶者と子のシンプルなケース

前提条件

  • 相続人:配偶者1人、子1人(合計2人)
  • 相続開始時の財産:預貯金2,000万円、自宅不動産(時価)3,000万円
  • 生前贈与:なし
  • 被相続人の債務:なし
  • 遺言の内容:「全財産を子に相続させる」

ステップ1:基礎財産を確定する

基礎財産 = 2,000万円(預貯金)+ 3,000万円(不動産)− 0円(債務)= 5,000万円

ステップ2:配偶者の遺留分額を求める

配偶者の遺留分額 = 5,000万円 × 1/2(総体的遺留分)× 1/2(法定相続分)= 1,250万円

ステップ3:遺留分侵害額を計算する

配偶者は遺言等によって何も受け取っておらず、被相続人には債務もないため、差し足し引きする財産はゼロです。

遺留分侵害額 = 1,250万円 − 0円+0円 = 1,250万円

配偶者は子に対し、1,250万円の金銭の支払いを求めることができます。

計算例2:特定の相続人に生前贈与(特別受益)があったケース

前提条件

  • 相続人:子A(長男)・子B(次女)の2人(配偶者はすでに死亡)
  • 相続開始時の財産:預貯金4,000万円
  • 生前贈与:子Aが5年前に住宅購入資金として2,000万円を贈与(特別受益)
  • 被相続人の債務:なし
  • 遺言の内容:「全財産4,000万円を子Aに相続させる」

ステップ1:基礎財産を確定する

相続人への特別受益は相続開始前10年以内であれば加算されます(民法第1044条)。

基礎財産 = 4,000万円(相続開始時)+ 2,000万円(生前贈与)− 0円(債務)= 6,000万円

ステップ2:子Bの遺留分額を求める

子のみが相続人の場合、総体的遺留分は1/2です。これに子Bの法定相続分(1/2)をかけます。

子Bの遺留分額 = 6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円

ステップ3:子Bの遺留分侵害額を計算する

子Bは遺言でも生前贈与でも何も受け取っておらず、被相続人には債務もありません。

遺留分侵害額 = 1,500万円 − 0円 +0円 = 1,500万円

子Bは子Aに対し、1,500万円の金銭の支払いを求めることができます。

計算例3:基礎財産が高額で計算が争点になったケース

当事務所に寄せられたご相談では、基礎財産が2億円規模になり、遺留分侵害額が数千万円に上るケースもあります。以下は実際のご相談をもとに概算・一般化した例です。

前提条件(一般化・概算)

  • 被相続人:祖母。子は2名(長男=叔父・存命/二男=相談者の父・すでに死亡)
  • 代襲相続人:亡くなった二男の子3名(相談者・姉・妹)が、父の相続分を引き継ぐ
  • 相続開始時の財産:不動産・預貯金を合わせて約2億円(時価)
  • 遺言の内容:全財産を長男(叔父)に相続させる
  • 受け取った財産:代襲相続人3名は遺言で除外され、受領額はゼロ(贈与・債務はここでは考慮しない概算)

ステップ1:基礎財産を確定する(概算)

基礎財産 ≒ 約2億円(相続開始時の財産。本例では贈与・債務を考慮しない概算)

ステップ2:代襲相続人の遺留分額を求める(概算)

総体的遺留分は1/2です。法定相続分は、子が2名なので子1人あたり1/2となり、亡くなった二男の枠(1/2)を代襲相続人3名で分けるため、代襲相続人1人あたりは1/6になります。

代襲相続人1人の遺留分額 = 2億円 × 1/2(総体的遺留分)× 1/6(法定相続分)≒ 約1,667万円

代襲相続人3名の合計 = 2億円 × 1/2 × 1/2(二男の枠)= 5,000万円

亡くなった父(二男)が本来持っていた遺留分5,000万円を、3名で分け合うイメージです。

ステップ3:遺留分侵害額を計算する(概算)

代襲相続人3名は遺言で完全に除外されており、受け取った財産がゼロのため、遺留分侵害額はそのまま遺留分額と同額になります。

遺留分侵害額:1人あたり ≒ 約1,667万円 / 3名合計 ≒ 約5,000万円(不動産評価により変動)

このケースでは、不動産の評価方法(時価をどう算定するか)が計算の核心です。専門家と協力して財産を調査し、評価額の根拠を固めることが請求額の確定に直結します。また、被相続人が生前贈与を行っている場合は、遺留分の計算においてその贈与を考慮するかどうかで最終的な遺留分侵害額に影響が出てくるため、生前贈与がある場合も注意が必要です。

当事務所に寄せられたご相談では、不動産と預貯金を合わせて相続開始時に約9,000万円規模の財産があり、その評価が計算の出発点になったケースもあります(民法第1043条)。財産の規模が大きいほど、評価方法ひとつで侵害額が数百万円単位でずれることがあります。

また、請求された側の対応も重要です。当事務所が対応した事例では、請求された側が計算の前提(評価や特別受益の主張)を見直すことで支払額が変わったケースがあります(詳細:https://www.authense.jp/souzoku/case/96/ )。遺留分の計算は、請求する側だけでなく、請求された側にとっても金額の妥当性を検討する機会になります(民法第1046条)。

金額が大きいほど評価方法ひとつで結論が変わります。概算を出したうえで方針を相談したい方は、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

計算で間違えやすい3つの落とし穴

遺留分侵害額を計算する上で、ミスの多くは次の3点に集約されます。いずれも「知っているか知らないか」で結論が大きく変わる論点です。この3つを事前に押さえておくだけで、交渉や訴訟での立ち位置が変わります。

①不動産・非上場株式の評価(時価か固定資産税評価か・評価時点)

不動産の評価額には複数の基準があります。固定資産税評価額・路線価・時価(実勢価格)など、何を基準に評価するかで評価額が異なってきます。遺留分の計算では相続開始時の時価(実勢価格)が基本ですが、実勢価格は不動産鑑定士による鑑定や周辺取引事例を根拠にするため、評価方法をめぐって当事者間で意見が対立しやすい箇所です。

非上場株式の評価も、会社との関係や規模に応じて、類似業種比準価額・純資産価額・折衷法など複数の評価方法があり、どの評価方法を採用するかで評価額が大きく異なることもあります。

当事務所が対応した事例では、生前の不動産の贈与(特別受益)を計算にどう反映するかが争点になったことがあります(詳細:https://www.authense.jp/souzoku/case/16/ )。財産の評価と特別受益の認定は一体として争われるケースも多く、専門家の関与が欠かせない局面です(民法第1044条)。

さらに対象となる不動産に抵当権が付いている場合は、抵当権の存在を考慮して不動産の評価をすることになります。その際は、その抵当権の被担保債務者が被相続人かどうかで考慮するべきポイントが異なり、それによって評価額も大きく異なる場合があるので注意が必要です。

遺留分侵害額の請求後に相続税の更正の請求または修正申告が必要になる場合があります。税務上の処理については国税庁の公式案内も確認することをおすすめします。

引用元(税務の取扱い):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/sozoku.htm

②生前贈与の持ち戻し期間の誤解(第三者1年・相続人10年・例外)

基礎財産を計算する際に加算する生前贈与の範囲は、相手が誰かによって異なります。整理すると次のとおりです(民法第1044条)。

  • 相続人以外(第三者)への贈与:相続開始前1年以内のもの
  • 相続人への贈与(特別受益に当たるもの):相続開始前10年以内のもの
  • 例外:当事者双方が遺留分を害することを知って行った贈与は、期間に関係なく加算対象

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

「10年前の贈与だから安心」と思っていた方が、例外の適用で争いに巻き込まれるケースもあります。過去の贈与を「もう関係ない」と断言する前に、状況に応じた確認が必要です。

③債務・葬儀費用・遺産分割で得る財産の扱い

債務は基礎財産から差し引きますが、葬儀費用は原則として差し引けません。葬儀費用は相続財産ではなく喪主等の個人的な支出と整理されているためです。

また、遺産分割で実際に取得できる財産がある場合は、その価額を侵害額から差し引きます。「遺言がある場合でも遺産分割が行われる財産が残っているケース」など、プロセスが複数並行するときは侵害額の計算が複雑になります。遺産分割の状況を確認しながら計算を組み立てることが重要です。

計算後の遺留分侵害額請求の進め方と時効

計算で侵害額が出たら、内容証明郵便による通知→話し合い(協議)→調停・訴訟の順で請求を進めます。時効に注意することが最重要です。

請求の流れ(内容証明郵便→協議→調停・訴訟)

遺留分侵害額請求の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 内容証明郵便の送付:まず内容証明郵便で遺留分侵害額請求権の行使の意思を伝えます。内容証明郵便で送付することで、行使の日付と内容が証拠として残ります。
  2. 当事者間での協議:内容証明郵便を受け取った相手と話し合いを行います。金額の合意に至れば合意書を作成して解決します。
  3. 家庭裁判所への調停申立て:協議が整わない場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申立てます。第三者(調停委員)が間に入り、合意形成を試みます。
  4. 訴訟:調停でも解決しない場合、地方裁判所に訴訟を提起します。

調停等の手続の詳細は裁判所のウェブサイトにも掲載されています。

引用元:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html

時効・除斥期間(「侵害を知ってから1年」と「相続開始から10年」)

遺留分侵害額請求権には2つの期間制限があります(民法第1048条)。

  • 時効(短期):相続の開始および遺留分を侵害する贈与等を知った時から1年
  • 除斥期間(長期):相続開始の時から10年

この2つのうち、いずれか早い方が適用されます。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

「知った時から1年」という部分については、「贈与等の存在を知った時」ではなく「その贈与等が遺留分を侵害するという事実を知った時」から起算されると解されています。ただし、実務ではこの起算点をいつとみるかが争点になることがあります。時効が迫っている場合は、まず内容証明郵便を送付して時効を止めることが重要です。

例えば、遺贈等の存在は知っているが具体的な内容は知らない場合、その時点で「遺贈等が遺留分を侵害するものであることを知った」とは直ちには言えないかもしれませんが、実務上、この「知った」時がいつかという点について争いになることがあります。そのため、遺贈等の存在を知った時点で、念のために遺留分侵害額請求権行使の意思表示をしておくことが重要です。また、遺留分侵害額請求権の行使によって発生した具体的な金銭債権は通常の債権と同じく5年の時効にかかるため、この点についても注意が必要です(民法166条1項1号)。

よくある質問(FAQ)

遺留分はどうやって計算するのですか?

遺留分の計算は3つのステップで行います。まず「基礎財産(相続開始時の財産+一定の贈与−債務)」を確定し、次に「基礎財産×総体的遺留分率×法定相続分」で個別の遺留分額を算出し、最後に「遺留分額−受け取った遺贈・特別受益・遺産分割取得額+承継債務」で遺留分侵害額を求めます(民法第1042条・第1043条・第1046条)。計算の前提となる財産評価や贈与の範囲の確認が重要です。

遺留分の基礎となる財産には何が含まれますか?

基礎財産には、相続開始時に被相続人が持っていたすべての財産(不動産・預貯金・有価証券など)のほか、一定の贈与財産が加算されます(民法第1043条)。加算される贈与は、原則として、第三者への相続開始前1年以内の贈与と、相続人への相続開始前10年以内の特別受益です。また、借入金などの債務は差し引きます。葬儀費用は原則として差し引きません。

生前贈与は遺留分の計算に含まれますか?

含まれる場合があります。相続人への特別受益に当たる贈与は相続開始前10年以内のもの、相続人以外の第三者への贈与は相続開始前1年以内のものが基礎財産に加算されます(民法第1044条)。ただし、当事者双方が遺留分を侵害することを知って行った贈与は、期間を問わず加算される例外もあります。10年以上前の贈与でも状況次第で対象になりうるため、個別に確認することをおすすめします。

遺留分の計算で不動産はどのように評価しますか?

遺留分の計算では、相続開始時の時価(実勢価格)が原則として用いられます。不動産の評価としては固定資産税評価額や路線価等もありますが税務上の指標であり、遺留分計算上の「時価」とは異なることがほとんどです。実務では不動産鑑定士による鑑定書や近隣の取引事例を根拠にするケースが多く、評価額の差が遺留分侵害額の算定に直結します。評価方法について当事者間で意見が対立する場合、調停や訴訟の中で鑑定が実施されることもあります。

遺留分侵害額請求の時効は何年ですか?

遺留分侵害額請求権の消滅時効は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与等があったことを知った時から1年」です(民法第1048条)。また、知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過すると除斥期間として権利が消滅します。「知った時から1年」は非常に短いため、相続の開始と遺留分の侵害を認識した時点で速やかに内容証明郵便を送付し、時効を止める対応が重要です。

本記事の内容は一般的な法律解説であり、具体的な事案については個別の状況に応じた判断が必要です。ご自身のケースについては、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

参考法令

  • 民法第1042条(遺留分の割合)
  • 民法第1043条(遺留分を算定するための財産の価額)
  • 民法第1044条(贈与の加算・特別受益の持ち戻し)
  • 民法第1046条(遺留分侵害額の請求・控除計算)
  • 民法第1047条(受遺者または受贈者の負担額)
  • 民法第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)

参考データ(公式)

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
大阪弁護士会所属。関西学院大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。法律事務所勤務を経て、任期付き公務員として財務省近畿財務局に入局。組織の一員として実務的な助言を行ってきた知見を活かし、企業法務分野にも積極的に取り組む。クライアントとの対話を通じて真に解決すべき課題を丁寧に汲み取り、納得のいく着地点を見出すことを大切にしている。
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