弁護士への遺言書作成の依頼

遺言書は自分一人で作る方法もある一方で、弁護士のサポートを受けて作成することもできます。

遺言書の作成を弁護士に依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
また、弁護士に遺言書の作成サポートを依頼した場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか?

今回は、弁護士に遺言書の作成サポートを依頼するメリットや流れ、かかる費用などについてくわしく解説します。

遺言書とは

はじめに、遺言書の概要を解説します。

遺言書とは、自身が亡くなった後における遺産の配分などを、遺言書の作成者(「遺言者」といいます)が生前に決めておく書類です。
遺言書がない場合、故人(「被相続人」といいます)の遺産は、相続人全員が話し合って分けることとなります。

一方で、すべての遺産について承継者を定めた遺言書があれば、原則として遺産分けの話し合いは必要ありません。

遺言書の効力は、相続が起きた時点(死亡時点)で生じます。
遺言書の効力が生じた時点では遺言者はすでに故人であり、直接その意図などを確認することはできません。
そのため、遺言書は民法によって厳格に方式が定められており、方式から外れた遺言書は無効となります。

実際によく活用されている遺言書の方式は次の2つです。

  • 自筆証書遺言:遺言者自身が全文を自書し、押印する遺言書
  • 公正証書遺言:公証人が関与し、2名の証人の立ち会いのもとで作成する遺言書

いずれの方式が適しているかは、弁護士へ相談したうえで検討するとよいでしょう。

弁護士のサポートを受けて遺言書を作成する流れ

弁護士のサポートを受けて遺言書を作成する場合、どのような流れとなるのでしょうか?
ここでは、一般的な流れを解説します。

  • 弁護士に初回相談をする
  • 弁護士とともに遺言書の内容を検討する
  • 遺言書を作成する

弁護士に初回相談をする

はじめに、依頼を検討している弁護士に初回の相談をします。

初回相談は遺言書に関する不明点を弁護士に相談する場であるとともに、弁護士との相性を確認する場でもあります。
相談した際の誠実さや具体的なサポート内容、料金などを確認したうえで、その弁護士にサポートを依頼するか否かを検討します。
初回の相談は無料や安価であることも多いため、依頼先の弁護士に迷っている場合は、複数の事務所に相談してみることも一つの方法です。

依頼する弁護士を決めたら、その弁護士とサポート契約を締結します。
着手金が必要となることも多いため、あらかじめ確認しておきましょう。

弁護士とともに遺言書の内容を検討する

弁護士に正式に依頼をしたら、弁護士とともに遺言書の内容を検討します。
遺言書の内容は、弁護士と複数回の面談を重ねて検討していくことが多いでしょう。

また、遺言書を正確に作成するには、次の資料などが必要です。

  • 遺言者に関する資料:戸籍謄本、住民票など
  • 遺産を渡す相手に関する資料:戸籍謄本、住民票など
  • 遺産に関する資料:不動産全部事項証明書、固定資産税課税明細書、預貯金通帳、証券会社の残高証明書

必要な資料は作成する遺言書の内容などによって異なるため、あらかじめ弁護士へご確認ください。
弁護士が代わりに書類を取り寄せてくれることもあります。

遺言書を作成する

作成する遺言書の内容が決まったら、遺言書を作成します。
遺言書の作成方法は、それぞれ次のとおりです。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合は、弁護士の面前で遺言者が全文を自書して押印します。
文章は、弁護士が下書きしてくれることが多いでしょう。

ただし、たとえ弁護士であっても自筆証書遺言を代筆することはできません。

なお、遺言書に添付する財産目録は自書しなくてもよいため、弁護士が作成することもあります。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合は公証役場に出向き、公証人と2名の証人の面前で作成します。

公証役場への予約や証人の手配は、弁護士が行うことが多いでしょう。
当日は、弁護士から公証人にあらかじめ伝えられていた文案を公証人が読み聞かせ、問題のないことを遺言者と証人が確認します。
最後に、遺言者と証人が署名と押印をして作成は完了です。

なお、入院中であるなどの事情で公証役場に出向くことが難しい場合は、公証人に出張してもらうこともできます。
また、公正証書遺言は、遺言者が自分で文章を書く必要がありません。

遺言書の作成を弁護士に依頼した場合にかかる費用

遺言書の作成を弁護士に依頼した場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか?
ここでは、かかる費用の概要について解説します。

初回相談費用

はじめに弁護士へ相談する際に、相談料がかかります。
初回の相談料は、1時間あたり5,000円から1万円程度であることが多いでしょう。
ただし、初回相談に限り相談料を無料としている事務所もあります。

Authense法律事務所では初回の相談料を無料としているため、まずはお気軽にご相談ください。

弁護士への報酬

弁護士へ依頼すると、弁護士報酬がかかります。
弁護士報酬は自由とされているため、報酬額は事務所によって異なります。

一般的には、20万円から50万円程度が目安となるでしょう。
ただし、遺産が多い場合や遺言内容が複雑である場合は、報酬が増額されることもあります。

サポートを依頼した場合の報酬は、初回の相談時に確認しておくことをおすすめします。

必要書類の取得費用

先ほど触れたように、遺言書の作成にはさまざまな書類が必要となります。
この書類の取得費用が別途必要です。

必要書類の取得費用は家族構成や遺産の内容によって異なるものの、1万円から2万円程度となることが多いでしょう。
遺産を渡す相手が多い場合や不動産の数が多い場合は取り寄せるべき書類が増えるため、費用がかさむ傾向にあります。

(公正証書遺言の場合)公証役場の手数料

公正証書遺言で遺言書を作成する場合、公証人手数料が別途必要です。
公証人手数料は、公証人手数料令で次のように規定されています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11.000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

これは遺言者の遺産総額をあてはめるのではなく、遺言書で遺産を渡す相手ごとにあてはめて計算します。
たとえば、その遺言書で長男に6,000万円相当、二男に4,000万円相当、長女に4,500万円相当の遺産を渡そうとする場合、公証人手数料は次のとおりとなります。

  • 公証人手数料=43,000円(長男分)+29,000円(二男分)+29,000円(長女分)=101,000円(基本報酬)

ただし、遺産総額が1億円以下であるときは、この表にあてはめて計算した基本報酬に11,000円が加算されます。
また、作成する遺言書の枚数に応じて、数千円程度の用紙代がかかります。

なお、公証人に出張を受けて遺言書を作成する場合は、基本報酬が1.5倍となるほか、日当(1日あたり2万円、4時間以内のときは1万円)と交通費実費が必要です。

作成のほか発生する遺言書にまつわる弁護士費用

遺言書にまつわる作成以外の業務を弁護士に依頼した場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか?
ここでは、作成以外にかかる主な費用を解説します。

遺言書の保管費用

作成した遺言書の保管を弁護士に依頼する場合、保管手数料がかかることがあります。
保管手数料は事務所によって異なるものの、1年間あたり1万円程度が目安です。

遺言執行費用

遺言書に書かれた内容を実現することを、遺言の執行といいます。
遺言書の効力が生じる時点では遺言者はすでに他界しているため、遺言者が自分で遺言を執行することはできません。
そこで、遺言を執行する役割を担う「遺言執行者」を、遺言書内で選任しておくとスムーズです。

遺言執行者は家族や遺産を受け取る者などを選任することもできる一方で、弁護士に依頼することもできます。
特に、遺言に関して争いが生じる可能性がある場合や、遺言を確実に実現してほしい場合は、遺言執行者として弁護士を選任するとよいでしょう。

弁護士に遺言執行を依頼した場合、執行の完了後に報酬が発生します。
遺言の執行報酬は弁護士によって異なるものの、執行対象である遺産総額の0.5%から2%程度の報酬が目安です。

ただし、30万円から100万円程度の最低報酬が設定されることが多いでしょう。
遺言の執行を弁護士に依頼しようとする際は、執行報酬についてもあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

遺言書作成を弁護士に依頼するメリット

遺言書の作成を弁護士に依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、弁護士に依頼する主なメリットを4つ解説します。

  • 無効になるリスクを大きく下げられる
  • 相続トラブル予防のアドバイスを受けられる
  • 遺言執行まで一貫して依頼できる
  • トラブルとなった際の対応がスムーズ

無効になるリスクを大きく下げられる

1つ目は、無効になるリスクを大きく下げられることです。

自分で遺言書を作った場合、要件を満たせず無効となるおそれがあります。
特に自筆証書遺言では、無効となるリスクが小さくありません。

たとえば、次のような自筆証書遺言は無効です。

  • 押印が漏れている
  • 日付が、年月日までが特定できない表記(「2024年7月吉日」など)である
  • 夫婦連名で1枚の用紙で作成している
  • 本文をワープロ打ちで作成し、署名だけ手書きしている
  • 長文を自分で書くことが難しいので、本文を子どもに代筆してもらった

たとえ方式には問題がなかったとしても、遺言書に納得しない相続人などから「作成時点で重い認知症を発症しており遺言書を作成する能力がなかった」などと主張され、無効となるおそれもあります。

ほかにも、遺産を渡そうとした相手についての記載があいまいであったり、不動産など遺産の特定があいまいであったりすれば、せっかくの遺言書が手続きに使えないかもしれません。

弁護士にサポートを依頼することで、遺言書が無効となるリスクを最小限に抑えることが可能となります。

相続トラブル予防のアドバイスを受けられる

2つ目は、相続トラブルを予防するためのアドバイスを受けられることです。

自身の思いのままに遺言書を作成すると、相続発生後のトラブルの原因となる可能性があります。

たとえば、自身と同居して長年世話をしてくれた長女に報いるため、「長女に全財産を相続させる」旨の遺言書を作成したとします。
しかし、遺言者に他にも相続人(たとえば、二女)がいる場合、この遺言書は二女の遺留分を侵害しています。

遺留分とは、子どもや配偶者など一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。
遺留分を侵害する内容の遺言書の作成は可能であるものの、相続が起きた後で遺留分侵害額請求がされるかもしれません。

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう、遺産を多く受け取った者に対して請求することです。
このケースでは、二女から長女に対して、遺留分相当の金銭を支払うよう請求される可能性があるということです。

遺産が預貯金など換金の容易なものばかりであれば、請求された遺留分を支払うことはできるでしょう。
しかし、遺産の大半が自宅不動産など換金の難しいものである場合、長女が遺留分を支払えず、自身がこれからも住む予定であった自宅を手放さざるを得ない事態となる可能性があります。

このような結果は、お世話になった長女に報いたかった遺言者の想いと、一致するものではないはずです。
弁護士のサポートを受けることで、このようなリスクをあらかじめ把握したうえで、トラブルを予防するためのアドバイスを受けることが可能となります。

遺言執行まで一貫して依頼できる

3つ目は、遺言執行までを一貫して依頼できることです。

先ほど解説したように、遺言書をスムーズに実現するには、遺言執行者の選任が不可欠です。
遺言書の作成サポートを弁護士に依頼することで、遺言執行までを一貫して依頼することが可能となります。

弁護士に執行を依頼することで家族の負担が軽減されるほか、遺言書の内容を確実に実現することが可能となります。

トラブルとなった際の対応がスムーズ

4つ目は、万が一トラブルが生じた場合でも、スムーズな対応が可能となることです。

遺言書の内容に納得がいかない場合、一部の相続人が遺言書の無効を主張して調停や訴訟を提起することがあります。

弁護士が遺言執行者であれば、このような際にスムーズに対応してもらうことが可能です。
また、弁護士が遺言執行者に就任することで、遺言書に納得がいかない相続人が法的根拠のない「言いがかり」をつけることの抑止力ともなるでしょう。

遺言書の作成を弁護士に依頼する場合の注意点

遺言書の作成を弁護士に依頼する際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?
最後に、弁護士に遺言書の作成サポートを依頼する場合の注意点を3つ解説します。

  • 複数の事務所を比較する
  • 遺言書で実現したいことをしっかり伝える
  • わからないことは何度でも確認する

複数の事務所を比較する

遺言書の作成を依頼する弁護士は、複数の事務所を比較して決めるとよいでしょう。
なぜなら、特に遺言書では自身の想いを伝える必要があり、弁護士との相性も重要となるためです。

遺言書の作成で後悔しないようにするため、複数の事務所を比較したうえで、自身の最期を託せる弁護士を選定することをおすすめします。

遺言書で実現したいことをしっかり伝える

遺言書作成のサポートを弁護士に依頼する場合、自身の想いや遺言書で実現したいことをしっかり伝えることが重要です。
「こんなことを言ったら恥ずかしい」などと考えて伝えずにいると、大切な想いが遺言書に反映されず、後悔するおそれがあります。

弁護士には守秘義務があるため、伝えた内容が外部に漏れることはありません。
自身で納得のいく遺言書を作るため、自身の想いをしっかりと弁護士に伝えてください。

わからないことは何度でも確認する

法律の規定のなかには難しいものもあり、弁護士から一度説明を受けても理解できないこともあるでしょう。
その際は、遠慮をしたり恥ずかしがったりするのではなく、ぜひわかるまでご確認ください。

理解できていないことを言い出せないまま遺言書の作成まで進んでしまうと、後悔する事態となりかねません。
そのような事態を避けるため、萎縮することなく質問できる弁護士を選ぶことをおすすめします。

遺言書の作成はAuthense法律事務所へお任せください

弁護士に遺言書の作成サポートを依頼した場合の流れや費用、弁護士に依頼する際の注意点などを解説しました。

弁護士のサポートを受けることで遺言書が無効となるリスクや、将来トラブルとなるリスクを最小限に抑えることが可能となります。
将来に問題を残さない遺言書を作成するため、遺言書の作成は弁護士のサポートを受けて行うことをおすすめします。

Authense法律事務所では相続トラブルの解決や遺言書の作成サポートに力を入れており、多くのサポート実績があります。
遺言書の作成をご検討の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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