高齢の父親に遺言書の作成を弁護士がアドバイス
相談までの経緯・背景
依頼者のAさん(60代・女性)は、ある日お父様から「遺言書の作成を手伝ってほしい」と相談を受けました。
Aさんのお父様は高齢で介護施設に入所していることもあり、判断能力があるうちに、来るべき時に備えておきたいとのことでした。遺言書を作成するにあたってAさんには1点気がかりなことがありました。
Aさんの実弟であるB男さん(50代)が音信不通で数十年にわたって連絡が取れない状況だったのです。
遺言書作成前にお父様が亡くなってしまったら、預貯金の払い戻しや不動産の処理といった相続手続きにおいて多くの問題が発生することは必至でした。当初はAさん自ら遺言書作成をしようと本やインターネットで調べたのですがどうしたら良いのか分からず、当事務所にご相談にお見えになりました。
解決までの流れ
まずはAさんから詳しい状況をお伺いしました。
その上で法律的な観点から現状抱えているリスクについてご説明しました。まずはお父様の判断能力です。
お父様はご高齢であるために判断能力について問われる可能性があり、遺言の無効を請求された場合には、作成した遺言書も無効となってしまう可能性があることなどをお伝えしました。
次に行方不明の弟であるB男さんについてです。
遺言書を作成した後にB男さんが現れ、遺言書の内容に異議を唱えた場合にも無効になる可能性がありました。
その上で遺言書を作りたいとのご希望でしたので作業を進めていきました。Aさんのお父様は自筆証書遺言の作成をご希望されていました。
そこで、ご高齢であることを考え、複雑かつ長文な内容ではなく、「すべてAさんに相続させる」というような、できるだけ短く簡単に書ける内容で作成することをご提案しました。
また、必ずお父様が自筆で書くことや、署名、押印、作成日などの記載漏れがあると、遺言書が無効となってしまう可能性があることなど、注意すべきポイントも説明しました。
結果・解決ポイント
最終的には、作成した遺言書の文案にご満足いただき、Aさんのお父様は、無事に自筆証書遺言を作成することができました。
残念ながら、その後Aさんのお父様は亡くなられましたが、お父様が遺された遺言書通りに相続手続きを進めることができました。遺言書の作成は、元気なうちにしかできません。病気で思うように体が動かなくなってしまったり、認知症を発症してしまってからでは遅いのです。
特に今回のAさんのケースでは、もしお父様が遺言書を作成せずに亡くなってしまった場合、預貯金の払い戻しについては、行方不明の兄弟がいたため、不在者財産管理人選任の申し立てを行わなければならないことが目に見えていました。
家庭裁判所で不在者財産管理人が選任されるまでには3か月~半年程度の時間がかかります。
このような手続きを踏まなければならないことを考えると、事前に遺言書を作成しておくことで、後の手続きをスムーズにすることができるといえるでしょう。現在では、50代から遺言書の準備を始める人も増えています。遺言書の作成をご検討されている方は、ぜひ早い段階で一度作成をしておくことをおすすめします。お悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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