コラム

公開 2021.06.07 更新 2024.03.01

不動産の共有物分割請求の手続きについて解説

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不動産の共有物分割請求の手続きは、具体的にどのような手続きなのでしょうか?不動産の共有状態を解消するには、どのようにすれば良いのでしょうか?「不動産」に詳しい弁護士が、詳しく解説いたします。

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不動産の「共有」とは

不動産の「共有」とは、1つの不動産に対し、2名以上の人が権利をもっている状態をいいます。
例えば、兄弟2名が、相続財産である不動産を2分の1ずつ相続した場合や、夫婦2人の名義でマンションなどを購入した場合です。

不動産を「共有」している場合、共有者全員の同意がなければ、不動産の全部を売却することができません。
また、自己の持ち分のみを売却すること自体は可能です。しかし、土地や建物を共有している状態ですと、実際の不動産について、どこまでが自分の持ち分か明らかにすることは困難です。そのため、共有している自己の持ち分の売却はとても難しく、売却できたとしても、相場よりも低い金額となることが考えられます。

そこで、民法は、原則として各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できると定めています(民法256条1項)。

ここでは、不動産の「共有」状態を解消する手続きについて、解説していきます。

「共有」状態の解消方法

「共有」状態の解消方法

民法は、不動産の共有状態を解消するための「手続き」として、共有分割請求の手続きを設けています。

それでは、共有状態を解消する「方法」として、どのようなものがあるのでしょうか。
共有関係を解消する方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割があります。

①現物分割は、土地や建物そのものを分割することになります。
建物を実際に分割することは現実的ではありませんので、主に土地について用いられます。
土地であれば、分筆の手続きをとり、各共有者のそれぞれの名義で登記を行うことで、共有関係が解消でき、自己の持ち分を単独で売却することが可能となります。

②代償分割は、共有不動産の持分を、共有者のうち1名が引き取り、持分を引き取った者が、持分を渡した共有者に対して、お金(代償金)を支払う方法です。

代償分割

例えば、兄と弟2人で、3000万円の土地を相続し、2分の1ずつの共有状態になったケースを想定します。その後の話し合いで、兄が弟から持分を全て引き取り、単独で土地を所有することになった場合は、兄が弟に対して、代わりに1500万円を支払うこととなります。

③換価分割は、共有の不動産を売却して、持分に応じて、売却代金を分配する方法となります。

換価分割

②と同じケースで考えます。
土地を3000万円で売却した場合、兄と弟が、それぞれ1500万円ずつ取得するということになります。

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共有物分割協議

不動産の「分割」を請求したい場合、まずは共有者の間で共有物分割協議を行います。

共有物分割協議では、前述の①~③のいずれかの方法で共有状態が解消できないか、話し合いを行います。
共有者全員の同意で共有状態の解消方法を決めなければならないため、不動産の価値や、共有の解消方法について合意を得ることは簡単ではありません。そのため、なかなか話し合いが進まないというケースも多いです。

話し合いがスムーズに進まない場合は、不動産に詳しい弁護士に相談をして、交渉してもらうということも一案になります。

共有物分割請求訴訟

共有物分割協議にて共有状態の解消ができない場合は、裁判手続きをとることになります。
裁判による共有物の分割請求について、民法は、以下のように定めています。

民法258条

1 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

民法258条1項に記載されている「協議が調わないときは」の意味ですが、共有者のうちの1人が、協議に応じない場合や共有状態の解消に反対している場合なども含まれます。

共有物分割請求訴訟の当事者は、共有者全員となります。
管轄の裁判所は、被告の住所地(被告のうち1名の住所地でOK)又は不動産所在地となります。

共有物分割請求訴訟は、最終的に、裁判所が共有物の分割方法を決定する手続きとなります。

裁判所は、前述の①~③の方法で解決を図りますが、「現物を分割することができない、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるとき」は、競売を命ずることもできます。

実際の裁判では、各共有者が各々主張をします。全員の主張が整理できた時点で、裁判所から①~③の方法で解決できないか、和解の提案や勧告が出されます。競売命令が出ることはごく稀な印象です。
共有物分割請求訴訟では、共有不動産の価格について、よく争われます。また、収益不動産では、収益部分や経費の取扱いについて争うこともあります。
そのため、訴訟をお考えの方は、知識・経験が豊富な弁護士に相談をされることをお勧めいたします。

共有物分割請求の最近の傾向

共有物分割請求の最近の傾向

最近ですと、不動産の共有者に相続が発生するケースが問題になっています。相続が発生すると、共有者が非常に多くなります。そのため、当事者が増えた結果として、共有状態の解消がなかなか進まないというケースがよく見られます。
共有者が10名以上となり、その上、所在不明の方もいらっしゃるような場合ですと、解決までに数年以上の時間がかかることもあり得ます。

また、不動産を共有で相続してしまったばっかりに、後から後悔される方もいらっしゃいます。

そのため、不動産が現に「共有」状態である場合や、相続で不動産を「共有」で承継することを検討している場合などは、早めに弁護士に相談しましょう。

まとめ

不動産の共有状態を解消するためには、共有物分割の話し合いや、共有分割請求訴訟の手続きをとることになります。
不動産の価格や共有の解消方法など、考えることが多く、内容も専門的です。
お悩みの方は、できる限り早めに、不動産に詳しい弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

・共有物の分割に関し、お客様にとって最適な解決方法をアドバイスいたします。
・お客様の代理人となって、他の共有者と、共有解消に向けた交渉をいたします。
・共有不動産を次の世代に遺したくない、自分の代で解決したいというご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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