コラム

公開 2021.06.23 更新 2024.02.26

所得税の「準確定申告」とは?申告期限・必要書類は?

相続_アイキャッチ_107

所得税の準確定申告とは、平たく言えば、亡くなった人の確定申告のことを言います。電子申告も可能です。ここでは、準確定申告とは何か、準確定申告の申告期限、準確定申告が必要となるケース、準確定申告の必要書類や期限を過ぎた場合のペナルティなどについて解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

所得税の準確定申告とは

相続税申告については聞いたことがあっても、「準確定申告」という言葉は耳慣れないという人も多いのではないかと思います。
まずは、準確定申告とはどのような手続きのことを指すのかについて解説していきましょう。

「準確定申告」は亡くなった人の確定申告

準確定申告とは、平たく言えば、亡くなった人の確定申告です。
通常、確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの所得につき、翌年3月15日までに行います。
もっとも、年の途中で亡くなった場合、確定申告の対象となる期間やその期限が異なるのです。

所得税の準確定申告期限には、2つのパターンがあります。
例えば、令和3年の1月31日に亡くなった場合を考えてみましょう。

この方がまだ令和2年分の確定申告を済ませていなかったのであれば、令和2年1月1日から令和2年12月31日分の準確定申告をする必要があります。
これが、1つ目の準確定申告です。

また、令和3年1月1日から、亡くなった令和3年1月31日までの準確定申告も必要となり、これが2つ目の準確定申告となります。

準確定申告には、この2つのパターンがあり、場合によっては2つの準確定申告が必要となることを知っておいてください。

「準確定申告」は誰がするのか

通常の確定申告は本人が申告や納税を行いますが、亡くなった人は自分で確定申告をすることはできません。
では、準確定申告は誰が行うのでしょうか?

準確定申告は、原則として、その亡くなった人の相続人や包括受遺者(以下「相続人等」と言います。)が共同で行います。
もっとも、相続人等の中に関係の悪い人がいる場合など、共同して行うことが難しい場合もあるでしょう。
その場合は、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできるとされています。
別々で提出をした際には、その申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に対して申告した内容を通知しなければなりません。

とは言え、別々で申告書を作成しては、手間も掛かりますし、税理士へ依頼した場合にはその費用もかさんでしまいます。
そのため、できれば原則どおり、相続人等が共同で行うことが望ましいでしょう。なお、共同で行う場合でも、実際に準確定申告をする代表者を決める必要があります。

所得税の準確定申告はいつまでにすべきか

所得税の準確定申告はいつまでにすべきか

では、準確定申告はいつまでに行うべきなのでしょうか?
原則の期限と、期限に遅れてしまった場合のペナルティについて解説します。

所得税の準確定申告の期限

準確定申告には、被相続人が確定申告を行うことなく亡くなった前年分の所得についてのものと、亡くなった年の亡くなった日までの所得についてのものの2つがあることは、既に解説したとおりです。

準確定申告の期限は、いずれも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内で、両者に違いはありません。
相続が起きた後は、非常に多くの慣れない手続きが降りかかり、ただでさえ忙しくなります。
そのような状況下での4か月はあっという間ですので、期限を意識して早めに取り掛かるように注意しておきましょう。

期限を過ぎた場合のペナルティ

では、準確定申告の期限を過ぎてしまったら、どのようなペナルティがあるのでしょうか?

準確定申告が必要であるにもかかわらず、期限までに申告をしなかった場合には、無申告加算税が課される可能性があります。
また、遅れた期間に応じた延滞税も併せて発生することも知っておいてください。

このような余計な税金の支払を避けるためにも、準確定申告の要否について確認し、必要な場合には必ず期限内に申告をするようにしましょう。

所得税の準確定申告が必要な人は誰?

所得税の準確定申告は、全ての亡くなった人に必要となるわけではありません。
では、どのような人に準確定申告が必要なのでしょうか?

準確定申告が義務である場合と、義務ではないけれど還付を受けるためには準確定申告が必要となる場合とに分けて解説しましょう。

所得税の準確定申告が義務となる人

準確定申告が義務となる人は、源泉された税金よりも支払うべき所得税が多いなど、準確定申告により納税すべき金額がある人です。
例えば、被相続人が次に該当する場合には、準確定申告が必要となる可能性が高いでしょう。

  • 事業をしていた場合
  • 不動産の賃貸などで収入を得ていた場合
  • 土地や建物を売却した場合
  • 生命保険の満期金を受け取っていた場合
  • 2,000万円を超える給与収入を得ていた場合
  • 給与所得、退職所得や公的年金などによる雑所得以外の所得の合計額が20万円を超えていた場合
  • 2か所以上から給与をもらっていた場合
  • 公的年金などによる収入が400万円を超えていた場合
  • 株などの有価証券を売却し、かつ、源泉徴収がされていない場合

これらに該当する場合、準確定申告は義務となる可能性が高いと言えます。
そのため、きちんと4か月の期限内に申告ができるよう、早めから準備をするようにしましょう。

所得税の準確定申告で還付を受けられる人

一方で、準確定申告をすることにより、還付が受けられる場合もあります。

この場合は、準確定申告は義務ではなく、単に、申告をしないと還付を受けられないというのみです。
そのため、還付を受けられそうな金額と、準確定申告を行う手間との兼ね合いで申告するかどうかを決める場合もあります。

また、還付を受けるための準確定申告は4か月以内ではなく、相続の開始から5年以内に行えば差し支えありません。もっとも、後ほど解説するとおり、還付を受けた金銭が相続税の対象となることがあるので、その点は、注意が必要です。

準確定申告により還付を受けられる可能性があるのは、例えば次のような場合です。

  • その年の亡くなるまでの間に10万円を超える医療費を支払っていた場合
  • 雑損控除や寄附金控除といった各種控除がある場合
  • 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっている場合

所得税の準確定申告の手順と方法

所得税の準確定申告の手順と方法

では、準確定申告はどのような手順で進めていけば良いのでしょうか?
期限が迫っている場合や、準確定申告に時間や手間をかけられない場合、また、事業所得や不動産所得がある場合には、税理士に依頼されることをお勧めします。

ここでは、一般的な内容の準確定申告を自分で行う場合に何をすべきなのか、順を追って見ていきましょう。

代表して準確定申告をする相続人等を決める

まず、準確定申告を行う前に、相続人等の中で代表して準確定申告をする人を決めることが必要です。
この相続人等の代表者が、税務署から送付される書類の受領をしたり、税務署から問合せがあった場合に対応したりします。
なお、既に解説したとおり、相続人等の間で話し合わず、相続人等がそれぞれで準確定申告をすることもできますが、効率や手間の観点から言えば、できれば避けたいところです。

必要書類を集める

次に、準確定申告の必要書類を集めます。
必要となる書類は、準確定申告をする内容などにより大きく異なります。
そのため、その対象年に起きた新たな事項以外の部分については、被相続人の前年分の確定申告に添付していた書類を参考にすると良いでしょう。

ここでは、基本となる必要書類について解説します。

確定申告書

準確定申告の申告書は、通常の確定申告書と同様です。
申告書は、税務署のホームページから入手できます。

なお、申告書には「申告書A」と「申告書B」の2種類がありますが、被相続人が給与所得者や年金受給者の場合には、比較的シンプルな「申告書A」を使用しましょう。

一方で、事業所得や不動産所得などの所得もある場合には、より詳細な「申告書B」を使用します。

被相続人の源泉徴収票

被相続人の源泉徴収票は、準確定申告に必要です。
被相続人が給与収入を得ていたのであれば、「給与所得の源泉徴収票」がその勤務先の会社から交付されますし、公的年金を得ていたのであれば、「公的年金の源泉徴収票」が日本年金機構などから交付されます。なお、「公的年金の源泉徴収票は」は、死亡届の提出者に自動的に送付されます。

被相続人の控除証明書

被相続人の控除証明書類も必要です。
所得税の控除として、生命保険料控除、社会保険料控除や地震保険料控除などがあります。
控除証明書は、これらの契約先から入手することが可能です。

準確定申告に必要な場合には、その申告期限までに手元になければなりません。
そのため、できるだけ早い段階で、各契約先に被相続人が亡くなったことを連絡し、控除証明書の送付依頼を行うようにしてください。

所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表

これは、複数の相続人等がいる場合の準確定申告に特有の書類です。

確定申告書の付表には各相続人につき相続分の割合やマイナンバーなどを記載の上、各相続人が署名と捺印をする必要があります。

被相続人の医療費の領収書

準確定申告により医療費控除を受けたい場合には、その医療費控除の対象となる医療費の領収書が必要です。

他の相続人から相続人代表者への委任状

相続人代表者に対する他の相続人からの委任状も必要となります。

相続人全員の本人確認書類

準確定申告の際には、運転免許証などの相続人全員の本人確認書類のコピーが必要です。
上記付表に記載すべきマイナンバーなどの情報と併せて、委任状への捺印時に回収しておきましょう。

準確定申告の申告書を作成する

必要書類の準備ができたら、準確定申告書の作成を行います。
準確定申告書の書き方は、国税庁ホームページの「死亡した方の準確定申告をする場合」欄に詳しい説明がありますので、こちらを参照してください。

また、こちらで分からない場合や不安がある場合には、資料を持参の上で管轄の税務署に相談することをお勧めします。
一般的な確定申告シーズンは混みあいますが、それ以外の時期であれば、比較的相談しやすいでしょう。

申告と納税をする

資料が揃い確定申告書も作成ができたら、申告と納税をします。

申告は、管轄の税務署に対して郵送したり持参したりしても良いですし、e-taxソフトを使って電子申告をすることも可能です。
慣れていない場合には、窓口に持参するとその場で簡単に確認もしてもらえるので安心でしょう。

また、通常の確定申告にも言えることですが、申告書を提出する際には、必ず手元に控えを取っておくようにしてください。
きちんと申告をしたことの証明となりますし、他の手続きで控えが必要となるケースもあるからです。

準確定申告の申告先は、被相続人の死亡時の納税地を管轄する税務署とされています。
申告をする相続人の住所地の管轄税務署ではありませんので、こちらもご注意ください。

所得税の準確定申告の注意点

最後に、所得税の準確定申告の注意点をお伝えしましょう。
主な注意点としては、還付金の取扱いと相続税との関係です。

還付金は誰がもらうのか

準確定申告をした結果、戻ってきた還付金は誰のものなのでしょうか?
結論を言えば、この還付金は相続財産です。
そのため、その相続分に応じて各相続人に帰属することが原則です。

また、還付金の受け取り方としては、2つのパターンが存在します。
各相続人が付表に還付先口座を記載して相続分に応じて受け取る方法と、相続人代表者が代表して受け取る方法です。

所得税の準確定申告に相続税はかかる?

準確定申告で所得税の還付を受けた場合、この還付金は相続財産であり、相続税の課税の対象となります。
そのため、相続税の申告が必要な場合には、還付を受ける場合の準確定申告も早めに行うようにしましょう。

なお、還付の際に、利子のような意味合いの還付加算金が付加される場合がありますが、この還付加算金は相続税の対象とはなりません。
還付金は、本来、被相続人が受け取るはずであったものと考えられる一方で、還付加算金は最初から相続人に帰属すべきものであるためです。
この違いも、知っておくと良いでしょう。

まとめ

相続が起きた後で必要となる税務申告は、相続税申告のみではありません。
準確定申告という手続きがあることも知っておいてください。

その上で、被相続人について準確定申告が必要かどうかも確認しておくと良いでしょう。
いざというときに慌てないために、毎年の確定申告書の控えも保管しておくと準確定申告をする際の参考となるので安心です。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

準確定申告は、たとえ遺産分割の方法に争いがあったとしても、被相続人が亡くなった後、すぐに手続きを行わなければなりません。そのため、まずは、相続人等でなんとか協力し、準確定申告を行ってください。相続人等での協力が難しい場合や、遺産分割の方法などでお困りの場合には、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。

こんな記事も読まれています

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。