コラム

公開 2022.07.26 更新 2024.04.08

相続財産の使い込みが発覚!証拠集めと請求方法について解説!

相続により兄弟で共有となった不動産がある場合、どのようなトラブルが生じるのでしょうか?
また、「共有」状態を解消する手段はあるのでしょうか?相続や不動産に詳しい弁護士が解説します。

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相続財産の使い込みが発覚したら!?

相続財産について、相続人のうちの一名が生前に使い込みをしていたことが発覚した場合、どのような対処法があるのでしょうか?
ここでは、「相続財産の生前の使い込み」について、事例を用いて解説いたします。

使い込みの事例~花子さんのケース~

被相続人:花子さん
相続人:一郎さん・次郎さん

花子さんの相続財産:自宅 2500万円 / 預貯金 500万円

使い込みの事例~花子さんのケース~

花子さんの生前の状況

2020.1.1 花子さん(当時85歳)のご主人が亡くなる ⇒ 花子さんは、預貯金3000万円を相続
2020.1.1~2021.1.1 花子さんの財産は一郎さんが管理
2021.1.1 花子さん(86歳)の相続発生 ⇒ 花子さんの預貯金は500万円となっていた

次郎さんの主張

ご高齢の花子さんが亡くなる直前に多額の現金を使用するとは考えにくい。
一郎さんが花子さんの財産を使い込んだのではないか?

一郎さんの反論

花子さんの介護等に費用が掛かった
そのため、花子さんの預貯金からの支出が増えた。

こちらのケースで、次郎さんが一郎さんに対し、相続財産の生前の使い込みについて請求するためには、どうすればよいのでしょうか?
以下では、資料の収集方法や、請求方法を説明いたします。

使い込みに関する証拠を集める


上記のケースで、次郎さんが一郎さんに生前の相続財産の使い込みについて請求するためには、まず一郎さんが花子さんの相続財産を引き出し、使い込んだことを裏付ける証拠を収集することが必要となります。

使い込みに関する証拠の例

  • 花子さんの通帳の履歴や払戻請求書等
  • 花子さんの要介護認定に関する資料や診断書等の資料
  • 花子さんの生活費に関する資料
  • 花子さんの生前に残した書面 など

まずは花子さんの通帳の履歴を取得して、不正な引き出しがないか確認しましょう。
一郎さん名義の通帳への振込みがあったり、不自然に多額が引き出されていたりといった場合などは、一郎さんによる使い込みを証明するための有力な証拠となり得ます。

反対に、保険金の引き落としや税金の支払等、使途が明確で、花子さんのための出金であることが認められる場合は、不正な引き出しとはいえないでしょう。

また、花子さん自身が、そもそも引き出しを行える状況にあったか否かという点も重要となります。
花子さんが、要介護認定を受けていたり、入院をしていたりといった中では、引き出しを自ら行うことができるはずがないですから、そうであるとすれば、財産を管理していた一郎さんが怪しいのではないかという方向に考えることができます。
そのため、花子さんの要介護認定に関する資料や、診断書等の資料も、重要な証拠となります。

花子さんの生前の生活において、どのくらい費用が掛かっていたかという点も主張するとよいでしょう。
例えば、花子さんが亡くなる前は施設に入所していたという場合であれば、施設の費用がどの程度掛かかっていたかということが、重要となります。
施設の費用以外に、数十万円ないし数百万円の支出があれば、何のために使ったのか、一郎さんに追及しましょう。

花子さんの生前の証言も重要です。
もし花子さん自身が、一郎さんによる使い込みを知っていたような場合で、それが、手紙やメモに残っているようであれば、それらは証拠となり得ます。
そのため、花子さんが亡くなった際、まずは遺言書が残っていないかを確認することは重要ですが、それ以外に何か書面の形で残していたものがないかという点も確認するとよいでしょう。

証拠の収集方法やどの証拠が有効なのか分からない場合は、早めに弁護士に相談をして、証拠の収集からサポートしてもらうことをおすすめします。

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使い込みをした方に対する請求をする

花子さんの通帳の履歴を確認していた次郎さんが、多額の出金を発見し、一郎さんに使い込んだ分について取り戻したいと考えた場合は、どのような手続きをとるべきでしょうか?

まずは当事者間の交渉で解決を試みます。
しかしながら、使い込みについては、請求する側、請求される側、それぞれに言い分があることが多く、話し合いではなかなか解決に至らないことが多いです。

交渉での解決が困難な場合、民事訴訟にて解決を試みます。
相続財産の使い込みは、家庭裁判所で審理される遺産分割調停・審判とは別に、民事訴訟にて不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を提起することになります。

花子さんのケース

亡くなる1年間に引き出された2500万円のうち、使い込まれた2000万円について、次郎さんが一郎さんから取り戻したいと主張する場合
2000万円(使い込んだ分)×1/2(法定相続分)=1000万円

が、請求額となります。

生前の使い込みについては、花子さんが一郎さんに対し、返還するように求める請求権を有しているので、次郎さんが、その請求権を相続したとして、一郎さんに請求することになります。
そのため、裁判等行う場合に、使い込みがなされた金額としては、2000万円を主張しますが、次郎さんが実際に請求するのは、法定相続分に該当する1000万円分となります。
(※花子さんが遺言書を作成している場合は、遺言書に従った相続分を請求することになります。)

使い込みの訴訟では、下記3点が争点となります。

  1. 誰が預貯金を引き出したか
  2. 引き出した人に引き出す権限があったか
  3. 引き出した金銭の使途

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使い込みを発見したら誰に相談すべき?

以上のとおり、使い込みを取り戻す場合は、多くが民事訴訟で争うこととなります。
民事訴訟では、客観的な証拠をもとに、主張を組み立てていく必要があり、一般の方には手続きが非常に難しいです。
そのため、被相続人の財産の使い込みを発見して場合は、なるべく早く弁護士に相談をして、証拠の収集や訴訟の見通しについてアドバイスをもらうようにしましょう。

まとめ

相続が発生して、他の相続人による被相続人の預貯金の使い込みが発覚した場合、その使い込みに関する証拠をしっかりと収集するようにしましょう。
使い込みについては、話合いでの解決は難しいことが多いです。
そのため、早めに弁護士に相談をして、使い込みについてもしっかりと請求ができるように準備をするとよいでしょう。

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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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