コラム

公開 2023.06.23

公正証書遺言とは?作成費用や必要書類を弁護士がわかりやすく解説

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遺言書には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。

では、このうち公正証書遺言にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
また、公正証書遺言を作成するには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?

今回は、公正証書遺言を作成する流れや必要書類、作成に要する費用などについて弁護士がくわしく解説します。

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遺言の方式は主に3種類

遺言書には、死亡の危急が迫った際などに利用する「特別方式」のものと、通常時に利用する「普通方式」のものが存在します。
このうち普通方式の遺言には次の3つが定められています。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言

遺言書は、本人の死亡後に効力を生じるものであるとの性質から、形式的な要件が非常に重視されます。
民法で定められた遺言の方式から外れたものは、たとえ遺言のようなことが書かれていても「遺言」としての法的な効力はないことになってしまうので、要件にはよく注意しなければなりません。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証人の関与のもとで作成する遺言書です。
確実性が高く、もっとも無効となりにくい遺言方式であるといえるでしょう。

公正証書遺言を有効に作成するには、原則として次の要件を満たさなければなりません(民法969条)。

  1. 公証人と2名以上の証人の立ち会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させること
  4. 遺言者と証人が筆記の正確なことを承認した後で、各自が原本に署名と押印をすること(ただし、遺言者の筆記が難しいときは公証人の代筆可)
  5. 公証人が原本に署名と押印をすること

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自書して作成する遺言書です。
手軽に作成できる一方で、要件を満たせず無効となるリスクが低くありません。

自筆証書遺言の主な要件は、次のとおりです(同968条)。

  1. 遺言者が遺言の全文と氏名、日付を自書して、押印すること
  2. 自書でない財産目録を添付する場合には、その目録のすべてのページ(両面に印字した場合には、両面とも)に遺言者が署名押印すること
  3. 加除訂正は遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更の場所に押印すること

なお、自筆証書遺言については令和2年(2020年)7月10日から法務局で保管してもらえる制度がスタートしています。
保管制度を活用することで、紛失や偽造などのリスクを減らすことが可能となるでしょう。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られずに作成できる遺言書です。
遺言者があらかじめ作成し署名捺印した遺言書を封印した状態で公証役場へ持ち込み、公証人と証人に対して確かにこれが自分の遺言書であることなどを宣誓して保管してもらいます。

秘密証書遺言では公証人がその内容に関与するわけではないため、内容があいまいであるなどして手続きに使用できないリスクは低くありません。
また、公証役場へ出向く必要があり、費用や手間がかかります。
このように、デメリットと比較してメリットが大きくないことから、利用件数はさほど多くないのが現状です。

自筆証書遺言と比較した公正証書遺言のメリット

自筆証書遺言と比較した場合の公正証書遺言の主なメリットとしては、次のものが挙げられます。
なお、ここでは自筆証書遺言の保管制度を使用しない前提で比較しています。

自分で全文を自書する必要がない

自筆証書遺言では、自分で文章を考えて、全文を自分で自書する必要があります。
これは、特に高齢やご病気の方などにとってはハードルが高い場合も少なくありません。

一方、公正証書遺言の場合、公証役場に相談すれば、遺言者の意図に沿った文章を公証人が組み立ててくれるため、自分で一から文章を考えたり自書したりする必要がありません。

無効になるリスクが低い

自筆証書遺言は、遺言が要件を満たせず無効になってしまうリスクが低くありません。
たとえば、日付を「吉日」と表記しただけでも無効となってしまいます。

一方で、公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、無効となるリスクは低いといえるでしょう。

偽造や隠匿の心配がない

自筆証書遺言は、偽造や隠匿がなされるリスクが低くありません。

一方、公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、交付されるのはこれをもとに正式に作成された「正本」や「謄本」です。
そのため、偽造されたり隠匿されたりするリスクはほぼないといえるでしょう。

相続開始後に検認が不要

自筆証書遺言であれば、相続開始後に家庭裁判所で検認を受けなければなりません。
検認とは、相続人に遺言書の存在を知らせるとともに、以後の偽造や変造を防ぐために行う手続きです。

一方、公正証書遺言は検認が不要とされています。
なぜなら、先ほど解説したように、そもそも偽造などがなされるリスクがほとんどないためです。

自筆証書遺言と比較した公正証書遺言のデメリット

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自筆証書遺言と比較した場合の公正証書遺言の主なデメリットは次のとおりです。

費用がかかる

自筆証書遺言は、紙とペンがあれば無料で作成することが可能です。

一方で、公正証書遺言を作成するには、公証役場で手数料を支払わなければなりません。
手数料の額については後ほど解説します。

証人が2名必要である

自筆証書遺言は、自分一人で作成することが可能です。

一方で、公正証書遺言を作成するには2名以上の証人に立ち会ってもらう必要があります。
証人には特に資格などは必要ないものの、次の人は証人になることができません(同974条)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人や受遺者と、これらの配偶者と直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

信頼できる家族などは、ほとんどがこの欠格事由に該当してしまうでしょう。
なお、思い当たる人がいない場合には公証役場の方で、有料で紹介を受けることができるほか、公正証書遺言の作成を依頼した専門家が手配してくれることも少なくありません。

公証役場との日程調整が必要である

自筆証書遺言であれば、思い立ってすぐにその場で作成することも可能です。
一方で、公正証書遺言は事前の打ち合わせや日程調整が必要であり、思い立ってすぐに作成できるものではありません。

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言を作成するには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?
主な流れは次のとおりです。

遺言書の内容を検討する

遺言書を作成するにあたっては、遺言書の方式を問わず、まず遺言書の内容を検討しなければなりません。
自分で内容を検討することもできますが、思わぬ問題点を残してしまわないためには、弁護士などの専門家へ相談しながら内容を検討するとよいでしょう。

必要書類を収集する

次に、必要書類を収集します。
たとえば、財産を渡す相手を特定するための書類や、財産を特定するための書類などがあります。

公正証書遺言の作成に必要となる主な書類は、後ほど改めて解説します。

公証役場へ事前相談に出向く

必要書類が揃ったら、公証役場へ事前相談に出向きます。
事前相談で希望する遺言の内容を伝えることで、公証人が文案を作成してくれます。
また、資料の不足があれば追加取得を指示されるため、指示に従って不足分の資料を集めましょう。

なお、弁護士などの専門家に公正証書遺言の作成支援を依頼している場合には、専門家が公証役場と事前の打ち合わせを行ってくれます。
そのため、原則として自分で事前相談に出向く必要はありません。

2名の証人を検討する

先ほども解説したように、公正証書遺言を作成するには2名の証人に立ち会ってもらう必要があります。
欠格事由にも注意しながら誰を証人とするか検討しましょう。

思い当たる人がいない場合には、公証役場で紹介を受けることもできます。

日程調整をする

次に、遺言を作成する日時の日程調整をします。
作成日は遺言者のほか、公証人と2名の証人との日程を合わせる必要があるため、複数の候補日を挙げるとスムーズでしょう。

予約した日時に公証役場へ出向く

予約した日時に公証役場へ出向いて所定の手続きを踏むことで、遺言の作成が完了します。

なお、入院中などでどうしても公証役場へ出向くことができない場合には、公証人の出張を受けることもできます。
その場合には、あらかじめ公証役場へ相談しておくとよいでしょう。

ただし、出張を受けた場合には公証役場の手数料が加算されるほか、別途日当と現地までの交通費がかかります。

公正証書遺言の作成に必要な書類

公正証書遺言を作成するにあたっては、財産を渡す相手の情報や財産に関する情報などを正確に特定しなければなりません。
そのため、次の資料などが必要となります。

なお、ここで紹介するのはあくまでも一例であり、希望する遺言の内容によってはこれら以外の資料が必要となる場合もあります。
そのため、実際に作成をする際には公証人や依頼先の専門家などへ相談のうえ資料を集めるとよいでしょう。

遺言者の実印と印鑑証明書

公正証書遺言の作成時には、本人確認のため、遺言者の実印と印鑑証明書が必要です。
印鑑証明書は取得後3か月以内のものが必要とされることが多いため、あまり早くに取得しすぎないよう注意しましょう。

遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本

遺言書で財産を渡す相手が推定相続人(相続が起きた際に相続人になる予定の人)である場合には、その相手と遺言者との関係がわかる戸籍謄本が必要となります。
その相手が本当に推定相続人であるかどうかや、遺言者との続柄などを正確に確認するためです。

受遺者の住民票

遺言書で財産を渡す相手が推定相続人以外の人である場合には、その相手の住民票が必要となります。
この場合には、相手を「氏名、住所、生年月日」で特定して記載することが多いためです。

財産を特定するための資料

公正証書遺言に記載する財産を特定するために、次の資料などが必要となります。
これらは一例であり、ほかに記載する財産がある場合には、その財産を特定するための資料の提示が必要です。

不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)と固定資産税課税明細書

不動産を記載する場合には、その不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)が必要です。
全部事項証明書は、全国の法務局から誰でも取得することが可能です。

また、公証役場の手数料を算定するために、その不動産の固定資産税課税明細書が必要となります。
これは、毎年市区町村役場から送付される固定資産税の納付書に同封されています。
紛失している場合などには、市区町村役場から別途取り寄せた「固定資産評価証明書」などでも構いません。

預貯金通帳

預貯金を記載する場合には、預貯金通帳が必要です。
金融機関名や支店名、口座番号などを正しく記載するほか、公証役場の手数料を計算するために残高の確認も必要となるためです。

証券会社の取引明細書

証券会社に預託している有価証券について公正証書遺言に記載する場合には、証券会社の取引明細書などが必要です。
また、証券会社から発行を受けた残高証明書などでも構いません。

公正証書遺言の作成にかかる費用

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公正証書遺言を作成するには、どの程度の費用がかかるのでしょうか?
主に要する費用は次のとおりです。

公証人の手数料

公正証書遺言を作成する場合には、次の手数料が発生します。※1

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

これは財産総額ではなく、遺言書で財産を渡す相手ごとの金額です。
たとえば、財産総額が1億5,000円である人が長女に7,000万円相当、長男に6,000万円相当、二男に2,000万円相当の財産をそれぞれ相続させるという内容の遺言書を作成する場合、手数料額は次のように算定できます。

  • 手数料額=43,000円(長女分)+43,000円(長男分)+23,000円(二男分)=109,000円

なお、遺言対象とする財産総額が1億円以下である場合には、これに遺言加算として11,000円が追加されます。
このほか、作成枚数に応じて数千円程度の用紙代が必要です。

必要書類の収集費用

先ほど解説したように、公正証書遺言の作成にはさまざまな書類が必要です。
これらの書類を取り寄せるためにも費用がかかります。

書類の取り寄せに要する費用は遺言の内容によって異なりますが、数千円程度であることが多いでしょう。

専門家報酬

公正証書遺言の作成サポートを専門家に依頼した場合には、専門家報酬がかかります。
弁護士に依頼した場合の報酬額は、おおむね20万円から50万円程度です。

弁護士報酬は依頼先の事務所や遺言の内容などによっても異なるため、依頼を検討している事務所へあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

まとめ

公正証書遺言を作成する流れや費用、必要書類などについて解説しました。

遺言書を作成するのであれば、無効になる可能性の低い公正証書遺言がおすすめです。
相続に対して少しでも不安がある方は、できるだけ早くから公正証書遺言の作成を進めておくとよいでしょう。

Authense法律事務所では、公正証書遺言の作成支援に力を入れています。
公正証書遺言の作成をお考えの際には、ぜひAuthense法律事務所までお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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