コラム
公開 2021.06.02 更新 2024.09.19

成年後見制度と家族信託の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを解説!

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成年後見制度と家族信託、どちらの制度を使うべき?それぞれの制度のメリット・デメリットを比較し、活用すべきケースをご紹介いたします。

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はじめに

近年、「人生100年時代」という言葉を耳にするようになりました。
実際、日本人の平均寿命は年々延び続けており、厚生労働省の発表によれば、2025年には日本人男性の平均寿命は80.21歳、日本人女性の平均寿命は86.61歳になると予測されています。

他方で、健康寿命(日常生活に制限のない期間)については男性が71.19歳、女性が74.21歳と延び悩んでおり、認知症患者数も2012年には462万人(65歳以上の高齢者の約7人に1人)でしたが、2025年には約700万人(65歳以上の高齢者の5人に1人)がになると予想されています。

認知症などで判断能力が低下すると、悪質な業者から不必要な不動産やリスクの高い金融資産を購入させられたり、特殊詐欺被害に遭う危険性も高まりますので、ご自身で財産を管理し続けていくことに不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
また、認知症などが悪化し、判断能力が著しく低下すると、ご本人が財産管理を行うことがおよそ困難となり、場合によっては金融機関が本人の財産を守るために口座を凍結してしまうなんてケースも見られます。

そこで今回は、認知症などで判断能力が低下した人のために、本人に代わって別の人に財産管理を任せる方法として、成年後見制度と家族信託契約という2つの方法について、それぞれのメリットやデメリットを比較しながらご紹介いたします。

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成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方を保護するために設けられている制度です。
判断能力の程度により、後見>保佐>補助という3つの種類が用意されています。それぞれ後見人、保佐人、補助人という方を任命し、本人の判断能力の程度に応じたサポートを行います。

  • 後見 → 判断能力が欠けているのが通常の状態の方
  • 保佐 → 判断能力が著しく不十分な方
  • 補助 → 判断能力が不十分な方

成年後見制度を利用するためには、まず、上記判断能力の程度に応じ、後見開始、保佐開始、補助開始の審判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

申立人は、本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長などに限られています。
申し立てを受けた家庭裁判所は、後見等の開始の審判をすると同時に、最も適任と思われる方を後見人、保佐人又は補助人に選任します。
親族が後見人等に選任されることもありますが、事情に応じて、弁護士、司法書士などの第三者を成年後見人等に選任することもあります。

なお、第三者が成年後見人等に選任されると、月2~6万円程度の報酬が発生し、本人の財産から上記報酬が支払われることになります。
(親族が後見人等に選任される場合の報酬については、個別の案件により取扱いが異なりますので、適宜家庭裁判所にご確認ください。)

家庭裁判所から選任された成年後見人等は、年金などの定期的な収入を管理し、また住居の家賃を支払うなどの本人の財産管理行為を行ったり、本人のために介護サービス契約を締結するなどのサポートを行います。
ただし、自宅不動産を売却するなどの重要な処分行為を自由に行うことはできず、裁判所の許可が必要となります。
また、本人の財産を減少させる可能性のある資産運用や相続税対策を行うこともできません。

成年後見制度の趣旨は、あくまでも「本人」のために財産を「保全」することにあるため、資産運用などで本人の財産を増加させたい場合や、相続人のために相続税対策を行いたい場合には不向きな制度といえます。
また後見人等は、裁判所に対して定期的に報告を行う義務がありますので、ご多忙な方にとっては過大な負担となる場合もあります。

成年後見制度の主なメリット・デメリット

メリット

  • 本人の財産の保護
  • 本人が行うべき契約行為を本人に代わって行うことなどが可能
  • 本人の身上監護(医療・介護サービスの締結、施設の入退所の手続など)なども行うことが可能

デメリット

  • 本人の財産処分についての柔軟性に乏しい
  • 本人が亡くなる又は判断能力が回復するまで、専門家である後見人(もしくは後見監督人)への報酬が毎月発生する
  • 家庭裁判所への定期的な報告が必要なため、後見人等となる人の事務負担が大きい

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家族信託契約とは?

家族信託契約とは?

家族信託契約とは、委託者が保有する財産を受託者に託することを内容とする契約のことです。
受託者は、契約で定められた目的に従って、当該財産を管理・運用・処分することができます。

信託契約の内容は委託者・受託者間で自由に設計することが可能です。
成年後見制度と異なり、本人の判断能力があるうちに、本人の意向・方針、受託者に付与する権限を信託契約の中に残しておくことができるので、受託者は本人の意向に沿った柔軟な財産管理・資産運用を行うことができます。

なお、契約行為になりますので、成年後見制度とは異なり、委託者本人に判断能力があるうちに契約を締結する必要があります。
契約を締結する前に、委託者本人の判断能力が失われてしまった場合には、先ほど説明した成年後見制度を利用するしかありませんのでご注意ください。

また、信託契約書は公正証書で作成するのが一般的です。
(金融機関は、公正証書ではないと、信託口口座(託された金銭を管理するための口座)の開設を認めないことが多いため。)

信託が開始すると、受託者は、委託者から託された財産(以下、「信託財産」という)を、信託契約の内容・目的に従い管理・運用・処分し、受益者の利益を保全するため信託事務を行うことになります。
一般的に、委託者と受益者は同一人であることが多く見受けられますが、委託者と受益者が異なっても構いません。

そして、信託が終了したときには、残余信託財産は、契約の中で定めた帰属権利者へ帰属させることができます。
これをうまく利用すれば、委託者が死亡した場合に、遺言と類似の効果を生じさせることが可能となります。

家族信託契約の主なメリット・デメリット

メリット

  • 当事者間で契約内容を自由に決めることが可能
  • 柔軟な資産管理や運用を行うことが可能(リスクのある資産運用や相続税対策を行うことも可能)

デメリット

  • あくまでも財産管理・運用・処分を目的とするため、委託者本人の身上監護のために介護施設への入所契約などの契約行為を行うことはできない
  • 信託監督人や受益者代理人を選任しない場合は、受託者を監督する機関が無いため、受託者に財産を悪用されてしまうおそれがある

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成年後見制度と家族信託契約の比較

一部これまで説明してきたことと重複もありますが、成年後見制度と家族信託契約には、以下のような相違点があります。

  • 成年後見制度は、本人の判断能力が低下してから家庭裁判所に申し立てをしますが、家族信託契約は本人に判断能力があるうちに当事者間で契約を締結する必要があります。
  • 成年後見制度は、財産を管理する人(後見人等)は家庭裁判所が選任します(申立人が後見人等にふさわしい人物を指名することはできますが、裁判所が別の人物を選任することもありえます)が、家族信託契約は、本人(委託者)が財産を管理する人(受託者)を選任することができます。
  • 成年後見制度は、本人の財産の保全のために財産管理を行うため柔軟な財産管理を行うことはできませんが、他方で本人の身上監護のための契約は行うことができます。家族信託契約では、信託目的に応じて財産管理を行うことが可能ですので柔軟に財産管理を行うことができますが、本人の身上監護のための契約を行うことはできません。
  • 成年後見制度は、裁判所又は監督人が、成年後見人等を監督しますが、家族信託契約では、信託監督人や受益者代理人を定めていない場合は監督する人がいません。

家族信託契約を活用すべきケースとは

家族信託契約を活用すべきケースとは

まず、本人の判断能力がすでに失われている場合には、家族信託契約の締結はできないので、成年後見制度を活用することになります。
それでは、本人に判断能力が備わっているとして、どのような場合に家族信託契約を活用すればよいのでしょうか。

例えば、高齢の母親が実家に住んでいるけれども、近い将来、施設に入所することを希望しているようなケースであれば、お子様を受託者として実家(信託財産)について家族信託契約を締結することが考えられます。
なぜなら、家族信託契約であれば、成年後見制度とは異なり、実家をスムーズに売却することが可能だからです。
また、その売却代金の使途について、信託契約で施設入所費用と定めておくと、施設入所費用に活用することができます。
成年後見制度ですと、実家の売却には家庭裁判所の許可が必要となりますので、迅速な売却は困難となり、売却価格などにも影響を与えかねません。

他にも、高齢の地主さんが、相続税対策をしたいけれども軽度の認知症を発症しているというケースなどは、お子様を受託者として家族信託契約を締結するとよいでしょう。
そうすると、お子様が中心となって不動産の建設や売却などといった相続税対策を行うことが可能となります。
成年後見制度ですと、相続人のための相続税対策のために財産管理を行うことはできません。

そのほか家族信託契約には、遺言類似の機能があったり、後継ぎ遺贈と同様のスキームを組んだりすることができるなど、柔軟な設計が可能です。
ですので、自己の財産管理や財産をどう承継させたいかを検討される場合は、一度専門家に家族信託契約の活用も含め、相談されることをお勧めします。

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まとめ

将来の財産管理について、対策をとっておきたいという場合は、ぜひ弁護士などの専門家に相談しましょう。
判断能力が低下してからだと、家族信託契約を選択することが難しくなってきますので、早めのご相談がお勧めです。
相続対策だけでなく、財産管理対策についても、お気軽に弁護士にお問合せください。

・成年後見制度と家族信託契約、どちらを利用すべきかわからない
・成年後見制度の申立て方法がわからない
・家族信託契約の契約書の作成方法や公正証書にする方法がわからない

といったお悩みをお持ちの方は是非ご相談ください。弁護士がご要望や状況をお伺いしながら、最適な方法をアドバイスいたします。

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(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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