コラム

遺産分割協議成立申立書とは?作成の流れや車の相続に必要な書類を弁護士が解説

相続_アイキャッチ_230

自動車の相続では、遺産分割成立申立書を活用することがあります。

遺産分割成立申立書とは、どのような書類なのでしょうか?
また、遺産分割成立申立書は、どのような手順で作成すればよいのでしょうか?

今回は、遺産分割成立申立書の概要や作成方法などについて弁護士が詳しく解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

遺産分割協議成立申立書とは

遺産分割協議成立申立書とは、一定の車の相続手続きに使用できる書類です。

相続が発生し、故人(「被相続人」といいます)の有していた遺産の分け方について話し合いがまとまったら、その分け方を記した「遺産分割協議書」を作成し、この書類を使って遺産の名義変更や解約手続きなどをすることが原則です。
この遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印しなければなりません。

一方、自動車の名義変更に活用する遺産分割協議成立申立書では、その自動車を相続する者の署名や押印だけでよく、その他の相続人の署名や押印が不要である点が大きな特徴です。

遺産分割協議成立申立書が使えない場面

遺産分割協議成立申立書は、その遺産を相続する者の署名や押印だけでよいため、遺産分割協議書よりも作成が容易です。
しかし、遺産分割協議成立申立書が使える場面は限られており、どのような相続手続きであっても使えるわけではありません。

たとえば、次の手続きでは遺産分割協議成立申立書を使えないため、混同しないようご注意ください。

車以外の相続手続き

遺産分割協議成立申立書が使えるのは、車の相続手続きだけです。
一方、不動産の名義変更や預貯金の解約など、車以外の相続手続きには使えません。

査定額100万円超の車の名義変更手続き

遺産分割協議成立申立書が使えるのは、相続によって名義変更しようとする車の価格が100万円以下であることが確認できる場合のみです。
車の相続手続きであっても、その車の価値が100万円超である場合は遺産分割協議成立申立書での手続きは行えません。

遺産分割協議成立申立書と遺産分割協議書の主な違い

素材_弁護士相談_ヒアリング
遺産分割協議成立申立書と遺産分割協議書は、名称こそ似ているものの大きく異なる書類です。
それぞれの主な違いについて解説します。

使える手続き

先ほど解説したように、遺産分割協議成立申立書が使えるのは、査定額が100万円以下の車の名義変更をする場合だけです。
その他の手続きでは、遺産分割協議成立申立書は使えません。

一方、遺産分割協議書はすべての相続手続きで活用できます。
遺産分割協議書が使える相続手続きは、100万円超の車の名義変更のほか、不動産の名義変更や預貯金の解約、有価証券の移管手続きなどです。

署名押印が必要な者の範囲

遺産分割協議成立申立書で署名や押印が必要となるのは、その車を相続する相続人だけです。

一方、遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印での押印が必要となります。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


遺産分割協議成立申立書の作成手順

遺産分割協議成立申立書は、どのような手順で作成すればよいのでしょうか?
ここでは、遺産分割協議成立申立書を作成する一般的な手順について解説します。

遺産分割協議を成立させる

はじめに、車の相続に関する遺産分割協議を成立させます。
平たくいえば、その車を自身が相続することについて、相続人全員の同意を取り付けるということです。
併せて、車の名義変更を遺産分割協議成立申立書で行うことについても同意を得ておくとよいでしょう。

遺産分割協議成立申立書への署名は車の相続人だけでよく、他の相続人の署名や押印は不要です。
だからといって、他の相続人の同意を得る必要がないというわけではありませんので、誤解のないようご注意ください。

書式上は他の相続人の協力がいらないからといって、無断で遺産分割協議成立申立書を作成して車の名義を変えてしまうと、その後他の相続人との間で大きなトラブルに発展する可能性があります。

相続財産である車の査定を受ける

次に、相続で名義変更をしようとする車の査定を受けて査定書の発行を受けます。
その車の評価額が100万円超であると、遺産分割協議成立申立書を使うことができないためです。

査定書の発行は、カーディーラーや中古車ショップのほか、日本自動車査定協会でも受けられます。
ただし、査定書の発行を受けるために、カーディーラーや中古車ショップで無料で査定してもらえることもある一方で、日本自動車査定協会では数千円から1万円程度の手数料がかかりますので、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

なお、一般的な車種の場合、自動車の査定額の目安は中古車販売店のホームページなどでも確認できます。
しかし、自動車はカスタマイズの有無や走行距離など個々の車によって査定額が異なるため、中古車は販売店などのホームページの情報だけでは、遺産分割協議成立申立書による名義変更は受け付けてもらえません。

遺産分割協議成立申立書の様式を入手する

他の相続人との遺産分割協議が成立し、100万円以下である査定書も得られたら、遺産分割協議成立申立書の様式を入手します。
遺産分割協議成立申立書の様式は最寄りの運輸支局で受け取れるほか、国土交通省のホームページからも入手できます。

必要事項を記載する

様式を入手したら、必要事項を記載します。
書き方のポイントは次のとおりです。

遺産分割協議成立申立書

  • 「自動車の表示」:名義変更をしようとする車の車検証に記載の「登録番号」と「車台番号」を正確に記載します
  • 「被相続人」:その車の所有者であった被相続人の氏名と死亡年月日を、戸籍謄本などを確認しながら正確に記載します
  • 「遺産分割協議成立年月日」:相続人同士の話し合いによって車を相続する者が確定した日を記載します。遺産分割協議は相続発生後にしか行えないため、必ず被相続人の死亡年月日以降の日付となります
  • 「申立書による申請の同意年月日」:遺産分割協議書ではなく遺産分割協議成立申立書で車の名義変更手続きをすることについて、他の相続人の同意を得た日を記載します
  • 日付:遺産分割協議成立申立書の提出日を記載します
  • 管轄の運輸支局の名称:国土交通省が運営する「自動車検査登録総合ポータルサイト」からあらかじめ管轄を確認して記載します
  • 住所・氏名:車を取得する相続人の情報を記載します。住所は、印鑑証明書のとおりに正確に記載してください

車を相続する者が署名押印する

最後に、車を取得する相続人が署名と押印をします。
押印は実印で行ってください。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


100万円以下の車を相続する際の必要書類

素材_チェックリスト

最後に、査定額100万円以下の車を相続し名義変更をするために必要となる書類をまとめて紹介します。
ただし、状況によってはこれら以外の書類が必要となる可能性もあるため、管轄の運輸支局で追加の書類を求められたらその指示に従ってください。

遺産分割協議成立申立書

1つ目は、今回解説の主題である遺産分割協議成立申立書です。
現地で書類を入手してその場で記載することもできますが、提出日以外の箇所をあらかじめ記載してから持参するとスムーズです。

査定書

2つ目は、査定書です。

遺産分割協議成立申立書を使って名義変更をするには、車の評価額が100万円以下でなければなりません。
そのため、100万円以下であることを証する査定書が必要です。
また、査定書と併せてその査定を行った査定士の資格者証の写しも必要となるため、忘れずにもらっておきましょう。

車検証

3つ目は、車検証です。

名義変更によって車検証の書き換えが必要となるため、車検証が必要となります。
車検証は、車のダッシュボードの中などに入っているケースが一般的です。

車庫証明書

4つ目は、車庫証明書です。

車庫証明書とは、その車を停める駐車場があることを示す証明書です。
車庫証明書は運輸支局での取得はできず、あらかじめ名義変更後の駐車場予定地を管轄する警察署で取得しなければなりません。

車庫証明書は警察署へ申請した日にすぐに発行されるわけではなく、申請後数日を挟んで交付されることが一般的です。
そのため、時間に余裕を持って申請しておきましょう。

ただし、車庫証明の有効期限は、実務上40日として取り扱われているため、あまり早く取得しすぎると期限が切れて再取得が必要となるためご注意ください。

また、地域によっては軽自動車の車庫証明が不要とされていることがあります。
そのため、名義変更をしようとする車が軽自動車である場合は、名義変更後における駐車地の市区町村で車庫証明が必要かどうかあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

被相続人の死亡が分かる戸籍謄本または除籍謄本

5つ目は、被相続人の死亡がわかる戸籍謄本または除籍謄本です。

相続による名義変更をするには、元の所有者が亡くなっていることが大前提です。
そのため、被相続人が亡くなった旨が記載されている戸籍謄本または除籍謄本が必要です。

死亡の旨が記載された戸籍謄本や除籍謄本は、被相続人の最後の本籍地を管轄する市区町村役場で取得できます(なお、令和6年3月1日から、「広域交付制度」により一定の条件のもとで最寄りの自治体窓口でも取得可能となりました)。
取得手数料は、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円です。

なお、戸籍謄本か除籍謄本かは自分で選べるものではなく、被相続人が亡くなってもその戸籍にまだ存命の人が残っている場合には「戸籍謄本」、被相続人の死亡によってその戸籍から存命の人が誰もいなくなった場合には「除籍謄本」となります。

また、被相続人の最後の本籍地が遠方である場合などには、次の書類などを同封して郵送で取得することもできます。

  • 戸籍謄本(除籍謄本)の請求用紙
  • 請求する者の本人確認書類(運転免許証など)のコピー
  • 返送先の住所と氏名を明記し、切手を貼った返信用封筒
  • 金額分の定額小為替(郵便局で購入する為替)

被相続人と車を相続する者との関係が証明できる戸籍謄本や除籍謄本

6つ目は、車を相続する者が被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本や除籍謄本です。

遺産分割協議成立申立書を使った車の名義変更では、相続人全員の戸籍謄本などまでは必要ありません。
ただし、車の名義を取得しようとする者が被相続人の相続人であることを示す戸籍謄本や除籍謄本は必要です。

親子である場合は、相続人の戸籍謄本に親である被相続人の氏名が載っているため、これだけでよいことが多いでしょう。
一方、相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合には、相続人と被相続人の両親の除籍謄本などを取り寄せ、これで両者が兄弟であることを示すことなどが必要です。

なお、これらの書類は車の名義変更だけに必要となるのではなく、不動産の名義変更や預貯金の解約など他の相続手続きの多くで必要となります。
これらの書類の取得が難しい場合や、どの書類を取得すべきかわからない場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。

車を相続する者の印鑑証明書

7つ目は、車を相続する者の印鑑証明書です。

遺産分割協議成立申立書に実印を押す必要があることから、これが実印であることを証明する印鑑証明書が必要です。
印鑑証明書は、取得から3か月以内のものでなければなりません。

印鑑証明書は住所地の市区町村役場で取得できますが、近年マイナンバーカードを持っていることを前提に、コンビニエンスストアのコピー機の操作で取得できる市区町村も増えています。
取得手数料は市区町村によって異なり、1通200円から300円程度です。

まとめ

遺産分割協議成立申立書の用途や、作成手順などについて解説しました。
遺産分割協議成立申立書は、評価額が100万円以下である自動車の名義変更手続きに使用できる書類です。
遺産分割協議書とは異なり、その車を取得する相続人以外の署名や押印は不要であるため、手軽に作成しやすいといえるでしょう。
ただし、遺産分割協議成立申立書を使って車の名義変更手続きをするには、その車の評価額が100万円以下であることを示す査定書などを添付しなければなりません。
また、他の相続人の押印などは不要とはいえ、車を相続することについて他の相続人との協議は成立していることが大前提です。
遺産分割協議成立申立書で手続きをする際は、これらの点に注意しましょう。
Authense法律事務所では、相続トラブルの解決に力を入れており、過去にも多くの解決実績があります。
遺産分割協議成立申立書の作成でお困りの際や相続人間で遺産分割協議がまとまらずお悩みの際、相続に関して相続人間でトラブルが生じている際などには、Authense法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
遺産相続や相続対策に関するご相談は、初回60分間無料でお受けしています。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。創価大学法学部卒業。創価大学法科大学院修了。不動産会社やIT企業などの顧問弁護士として企業法務に携わるとともに、離婚や相続をはじめとする一般民事、刑事弁護など、様々な案件に取り組んでいる。また、かつてプロ選手を志した長年のサッカー経験からスポーツ法務にも強い意欲を有し、スポーツ法政策研究会に所属し研鑽を重ねる等、スポーツ法務における見識を広げている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。