コラム

公開 2022.08.05 更新 2024.04.02

相続税はいつまでに支払うべきもの?相続税の基礎と計算方法

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相続税とは、亡くなった人が亡くなったときに持っていた財産などに対してかかる税金です。
相続税の対象となる財産を紹介するとともに、相続税がかかるかどうかの基準となる基礎控除額や相続税の計算方法などをわかりやすく解説します。

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相続税とは

相続税とは、主に亡くなった人が亡くなったときに持っていた財産に対してかかる税金です。
相続税は、相続や遺言で財産を受け取った人に納税や申告の義務があります。

まずは、申告の期限から確認しましょう。

相続税の申告と納税期限は10ヶ月以内

相続税の申告と納税は、亡くなった人(「被相続人」といいます)が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。
10ヶ月と聞くと、なんとく余裕があるように感じるかもしれません。
しかし、余裕があると思い悠長に過ごしていると、直前になって慌ててしまうことにもなりかねないため注意が必要です。

なぜなら、相続税の申告を期限までに済ませるためには、申告書の作成以前に相続財産を洗い出してそれぞれの財産について詳細な評価を行い、遺産分割協議をまとめる必要があり、そこまで余裕があるわけではないためです。

なお、仮に申告期限までに遺産分割協議がまとまらなくても、申告期限が延長してもらえるわけではありません。
この場合は、いったん期限内に仮の申告を行い、その後協議がまとまった時点で申告をしなおす必要があります。

相続税の対象となる財産

相続税の対象となる主なものは、被相続人が亡くなったときに持っていた財産です。
しかし、その他にも相続税の対象となる財産が存在します。

亡くなったご家族の相続に対して相続税がかかるかどうかを判断するため、まずは相続税の対象となる財産を知っておきましょう。

被相続人の遺産

相続税の対象となる代表的なものは、被相続人の遺産です。
遺産とは、亡くなった時点で持っていた財産のことを指します。

相続税の対象となる遺産には、たとえば次のようなものが挙げられます。
ただし、相続税はこれらの財産のみに対してかかるのではなく、金銭的な価値があるものであれば、これら以外の遺産もすべて相続税の対象です。

  • 土地や建物などの不動産(自宅不動産も相続税の対象です)
  • 預貯金
  • 現金
  • 上場株式や投資信託などの有価証券
  • ゴルフ会員権やリゾート会員権
  • 自動車
  • 貸付金
  • 自社株などの非上場株式
  • 骨董品類など価値のある動産
  • 暗号資産などインターネット上などで使用できる通貨

なお、お墓や仏壇などの祭祀用の財産は、原則として非課税です。

生命保険金や死亡退職金

受取人が定められている生命保険金や死亡退職金は受取人自身の財産であり、遺産ではありません。
しかし、だからといって生命保険金や死亡退職金を相続税の対象から外してしまえば、課税が不公平になってしまうでしょう。
そのため、被相続人が保険料を支払った生命保険金や死亡退職金は、相続税法により特別に相続税の対象とされ、みなし相続税財産とも呼ばれます。

ただし、相続人が受け取った生命保険金と死亡退職金には、それぞれ次の非課税枠が設けられています。

生命保険金の非課税金額の計算式

  • 非課税枠=500万円×法定相続人の数

死亡退職金の非課税金額の計算式

  • 非課税枠=500万円×法定相続人の数

この枠は、法定相続人数に基づいて算定されます。

たとえば、法定相続人が妻と長男、長女である場合の生命保険金の非課税枠は、その相続全体で1,500万円(=500万円×3名)です。
この場合、妻と長男、長女がそれぞれ500万円の生命保険金を受け取った場合であっても全額が非課税となりますし、妻のみが1,500万円の死亡保険金を受け取った場合であっても全額が非課税です。

その相続で相続人が受け取った生命保険金や死亡退職金の合計がそれぞれ非課税枠を超える場合には、超えた分だけが預貯金など他の遺産と合算されて相続税の対象となります。

相続開始以前3年間の贈与と相続時精算課税贈与

被相続人が生前にした次の贈与も、相続税の対象となります。

相続開始以前3年間にした贈与

相続開始以前の3年間に被相続人からの贈与で受け取った財産は、相続税の対象です。

このように、過去に贈与した財産を相続税の対象として加算することを、「持ち戻し」といいます。
ただし、持ち戻しの対象になるのは相続や遺言で被相続人から財産を受け取った人が受けた贈与に限定されており、相続などで財産を受け取らなかった人が受けた贈与は、たとえ亡くなる直前に受けたものであっても持ち戻しの対象とはなりません。

なお、贈与を受けた時点で贈与税を支払っていた場合には、支払った贈与税の相当額が相続税からマイナスされます。

相続時精算課税制度を使った贈与

相続時精算課税制度とは、相続の際に精算して課税されることを前提とした贈与です。
この制度を使うと、複数年にわたる計2,500万円までの贈与にかかる贈与税が非課税となる他、2,500万円を超えた分についても一律20%という比較的低い税率で課税されます。

ただし、この制度を使った贈与は、全額が相続税の対象として持ち戻される決まりとなっています。
過去3年分だけが持ち戻しの対象となる通常の贈与と異なり、かなり前の贈与であっても持ち戻しの対象となりますので、注意しましょう。

債務や葬儀費用は控除できる

被相続人の借金(「債務」といいます)や葬儀にかかった費用は、相続税の対象となる財産の額からマイナスをすることが可能です。
控除対象となる被相続人の債務には、たとえば次のようなものがあります。

  • 銀行や消費者金融などからの借金
  • 友人からの借金
  • 自分が代表となっている会社からの借金
  • 医療費の未払金
  • 未払いの税金
  • クレジットカードの未払金

ただし、お墓や仏壇などの非課税財産を購入した場合の未払金は、控除の対象とはなりません。

また、控除の対象となる葬儀費用には、次のものが含まれます。

  • 葬儀や納骨、火葬にかかった費用
  • お寺やお坊さんに支払った費用
  • お通夜の費用

一方で、香典返しにかかった費用や葬儀とは別の日に行った初七日などの法要にかかった費用は、控除することができません。

相続税がかかるかどうかの判断基準

相続税は、すべての相続にかかるわけではありません。
上で解説をした相続税の対象となる財産の合計額(「課税価格の合計額」といいます)が一定額以下であれば、相続税はかかりません。

判断基準は「3,000万円+600万円×法定相続人数」

相続税が無税となるかどうかは、課税価格の合計額が次の式で算定する相続税の基礎控除額を超えるかどうかによって決まります。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

この式に当てはめて計算すると、法定相続人の数ごとの基礎控除額は、次のとおりです。

  • 1人:3,600万円
  • 2人:4,200万円
  • 3人:4,800万円
  • 4人:5,400万円
  • 5人:6,000万円
  • 6人:6,600万円

課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税がかかります。
一方で、課税価格の合計額が相続税の基礎控除以下であれば、相続税はかかりません。

基礎控除額を計算する際の注意点

相続税の基礎控除額を計算する際には、次の点に注意しましょう。

養子の数には算入制限がある

養子は、実子と同じく相続人となり、相続での権利も実子と何ら変わりありません。
ただし、相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数に算入できる養子の数には、次の制限があります。

  • 実子がいる場合:1人まで
  • 実子がいない場合:2人まで

これは、養子を無数に増やすことにより相続税の基礎控除額を無限に拡大するような極端な課税逃れを防ぐために設けられている規定です。

遺産の分け方や遺言の有無、相続放棄などによって変動しない

相続税の基礎控除額の計算で使うのは、「法定相続人の数」です。
法定相続人とは法律(民法)で定められている相続人のことを指します。

そのため、その相続で実際には財産を受け取らなかった人がいる場合や、遺言によって相続人以外の人が財産を受け取った場合であっても変動しません。
また、相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして法定相続人をカウントすることとなっています。

相続税を計算する流れ・手順

それでは、流れに沿って実際に相続税を計算してみましょう。
ここでは、次の前提で計算します。

  • 法定相続人:妻、長男、長女の3名
  • 課税価格の合計額:2億5,000万円
  • 実際に受け取った財産の額:妻が1億5,000万円、長男が1億円

課税価格の合計額を計算する

はじめに、それぞれの相続人が受け取った財産の価額を合計し、「課税価格の合計額」を算定します。
課税価格の合計額に含まれる財産については、上の「相続税の対象となる財産とは」を参照してください。

ここでは、課税価格の合計額を2億5,000万円とします。

基礎控除額を引いて課税遺産総額を計算する

課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を控除して、課税遺産総額を算定します。
例のケースでの相続税の基礎控除額は次のとおりです。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×3名=4,800万円

これを、課税価格の合計額から控除します。

  • 2億5,000万円-4,800万円=2億200万円

法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額を計算する

課税価格の合計額を、法定相続人が法定相続分で受け取ったと仮定して、それぞれの相続分を計算します。
ここでは、実際に誰がいくらの財産を受け取ったのかは関係がない点に注意してください。

例の場合には、次のとおりです。

  • 妻:2億200万円×2分の1=1億100万円
  • 長男:2億200万円×4分の1=5,050万円
  • 長女:2億200万円×4分の1=5,050万円

税率を乗じて相続税の総額を計算する

上で計算をして法定相続分に応じた各法定相続人の取得額を速算表に当てはめて、相続税額を算定します。

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
  • 妻:1億100万円×40%-1,700万円=2,340万円
  • 長男:5,050万円×30%-700万円=815万円
  • 女:5,050万円×30%-700万円=815万円

これを合計して、この相続での相続税の総額を算定します。

  • 相続税の総額=2,340万円+815万円+815万円=3,970万円

実際に財産を受け取った人で税額を振り分ける

算定した相続税の総額を、その相続で実際に財産を受け取った人に振り分けます。
例の場合には、次のとおりです。

  • 妻:3,970万円×1億5,000万円/2億5,000万円=2,382万円
  • 長男:3,970万円×1億円/2億5,000万円=1,588万円

財産を受け取らなかった長女の納税額はありません。

なお、この後で「配偶者の税額軽減」や「障害者控除」など各種の控除を適用します。

相続税額を抑えられる主な特例


相続税には、相続税額を抑えることができる特例が存在します。
ここでは、特に税額への影響が大きくなりやすい2つの制度について、概要を解説します。

なお、これらはいずれも相続税の申告しなければ適用することはできません。
そのため、これらの特例を使った結果として税額がゼロになる場合であっても、申告書は提出すべきであることに注意してください。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、要件を満たすことにより、相続税の計算において土地を最大8割減で評価することができる特例です。
特例の対象となるのは被相続人の自宅敷地のみならず、事業用の建物が建っている土地や賃貸物件が建っている土地も含まれます。

小規模宅地等の特例の適用を受けることによって、相続税額が大きく減額できる可能性があるため、相続税がかかりそうな場合には、ぜひ適用を検討したい特例の一つです。

関連記事

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者がその相続で受け取った財産のうち、次のいずれか高い金額までにかかる相続税が無税となる特例です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

たとえば、上で挙げた例のケースでは、配偶者の相続税額が「2,382万円」と算定されています。
しかし、例では配偶者が相続した財産は「1億5,000万円」であり1億6,000万円以下であるため、この特例を使うことにより、実際に配偶者が支払う相続税はゼロとなります。

このように、配偶者の税額軽減を最大まで活用すればその相続での相続税はかなり多く軽減できるでしょう。

ただし、配偶者があまり多くの財産を相続してしまうと、その後配偶者が亡くなった際の相続税が高くなってしまう可能性があるため、次の相続までを踏まえて配偶者の取得金額を検討する必要があります。

まとめ

相続税の申告は、10ヶ月以内に行わなければなりません。
そして、原則としてそれまでに誰がどの遺産を相続するのかを決める必要があります。

申告期限までにやるべきことから考えれば、10ヶ月の期限は決して余裕があるものではありません。
遺産分割協議をスムーズにまとめ期限内に申告を終わらせられるか不安な場合には、早い段階から弁護士などの専門家へご相談ください。

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記事を監修した税理士
黒瀧 泰介

 

代表社員税理士 公認会計士

黒瀧 泰介
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