コラム

公開 2022.07.08 更新 2024.02.26

相続税の配偶者控除とは?

相続税の配偶者控除とは?

相続税の申告時に活用できる「相続税の配偶者控除」とは、どのような制度なのでしょうか?
活用できるケースや注意点はあるのでしょうか?
相続に詳しい弁護士が解説いたします。

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相続税の配偶者控除とは?

配偶者控除とは、相続税の申告時に活用できる特例の1つです。
通常であれば、相続税が基礎控除を超える相続財産がある場合は、相続人には相続税が課税されますが、相続人が「配偶者」の場合には、相続税の納税を免除(一部免除)するという特例になります。
具体的には、配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が1億6000万円までであれば、配偶者に相続税は課税されない制度です。
また、1億6000万円を超えても、配偶者の法定相続分までであれば、相続税は課税されません。

結論として、配偶者は、相続する遺産が下記の場合は、相続税は課税されません。

  • 1億6000万円以内 または
  • 法定相続分以内

ここでは、「相続税の配偶者控除」の要件や注意点等について、詳しく解説いたします。

配偶者控除の要件

配偶者控除の要件

配偶者控除の要件は、下記となります。

  1. 戸籍上の『配偶者』であること
  2. 相続税の申告期限までに遺産の分け方が決まっていること
  3. 相続税の申告書を提出していること

①戸籍上の『配偶者』であること

役所の婚姻届を提出している「配偶者」であることが必要となります。
そのため、「内縁者」は、配偶者控除の要件を充たしませんので、ご注意ください。

②相続税の申告期限までに遺産の分け方が決まっていること

「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内」に相続税の申告は、行わなければなりません。
申告期限までに、遺産の分け方が決まっていない場合は、未分割として相続税の申告を行いますが、未分割として申告を行う場合は、「相続税の配偶者控除」は活用できず、いったんは相続税を納税する必要が出てきます。
後で、遺産の分け方が決まれば、更正の請求を行い、相続税の還付を受けるようにしましょう。

③相続税の申告書を提出していること

「相続税の配偶者控除」を活用すると相続税が0円となる場合においても、遺産が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税の申告は必要となります。

配偶者控除の注意点①~2次相続~

配偶者に全ての遺産を承継させ、配偶者控除によって、納税金額を低く抑えるということを検討される方もいらっしゃいます。
しかしながら、配偶者控除を活用すると納税金額が0円となるからといって、配偶者が全ての遺産を承継することをあまりお勧めできないケースもあります。
それは、配偶者が全ての遺産を承継することで、2次相続といって、被相続人を相続した配偶者自身が亡くなり、配偶者を被相続人とする相続が生じた場合の相続税の金額が高くなるケースになります。
 

【平成27年1月1日以後の場合】 相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

2次相続では、「配偶者控除」は活用できず、配偶者自身が亡くなっている分、法定相続人の人数も1名減りますので基礎控除額も減ってしまいます。
そのため、配偶者が多くの遺産を相続すると、それだけ配偶者の財産が増えてしまい、2次相続時の相続税が高くなってしまうということになります。
偶者控除を活用する場合には、2次相続時のシミュレーションをした上で、2次相続時の相続税との総額を考慮して、相続税の総額が一番小さくなるような分け方を検討されると良いでしょう。

配偶者控除の注意点②~申告期限までに遺産分割を行う~

配偶者控除の注意点②~申告期限までに遺産分割を行う~
配偶者控除は、前述のとおり、多額の相続税の納税を免除できるため、活用できる場合はぜひ活用したい特例の1つとなります。
しかしながら、相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに、遺産の分け方が決まっていない場合は、未分割状態での申告となり、相続税の申告時に配偶者控除は活用できません。
そのため、いったんは、配偶者控除を活用しない相続税の金額を納税しなければならなくなります。
さらに、遺産の分け方が決まらないということは、遺産分割前の預貯金の仮払い制度を利用して預貯金の一部を解約するほかは、被相続人の預貯金の解約ができない状況となりますので、納税資金については、配偶者が自己資金で準備をしなければなりません。
相続税は、配偶者控除を活用しなければ高くなるケースも多いため、相続税が納税できないという理由で不本意な遺産分割協議に応じるという事態も生じかねません。

ですので、遺産分割協議は、相続発生後、なるべく速やかに行うようにして、相続税申告までに完了させるようにしましょう。
相続人の中で、スムーズな遺産分割が困難な方がいれば、可能な限り、生前に『遺言』を作成し、遺産分割協議をしなくても、遺産の分け方が決まるようにしておきましょう。
また、生命保険金は、遺産分割協議の対象とはなりませんので、相続税の申告期限前に遺産分割協議が完了しなかった場合に備え、配偶者を受取人とした生命保険に加入しておくことも一案です。
 
相続税申告時までに遺産の分け方が決まらない場合は、遺産の分け方が決まった日の翌日から4ヵ月以内に相続税の更正の請求(相続税の申告のやり直し)を行います。
更正の請求では、配偶者控除を活用した相続税の金額を納税すれば良いので、納めすぎた相続税の還付を受けることができます。
ただし、この措置を受けるためには、最初の申告時に、「申告期限後3年以内の分割見込書」という書面の添付が必要となりますので、忘れずに添付してもらうようにしましょう。

仮に、申告期限の翌日から3年経過しても遺産分割が整わない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認書」を税務署に提出し、税務署長から承認を受けておくことで、その後の遺産分割が成立した場合には、更正の請求が可能となります。
調停や訴訟等の手続きをとると、3年を経過することは少なくありませんので、当該書面の提出は忘れずに行うようにしましょう。

まとめ

相続税の配偶者控除は、相続税の金額を軽減できる効果的な特例です。
しっかりと活用ができるよう、遺産分割をスムーズに進めるようにしましょう。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

・配偶者が亡くなり相続が発生した場合、相続税の配偶者控除を受けることができますが、そのためには、遺産の分割方法が決まっていなくてはなりません。相続税の申告期限までに遺産分割を完了させるのが一番ですが、所定の書類を提出したうえで一旦配偶者控除のない金額で納税し、遺産分割完了後に還付を受ける場合もあります。いずれにせよ遺産分割をスムーズにすすめる必要がある場合において、弁護士は、遺産や相続人の調査、交渉、必要書類の提出のほか、調停・訴訟におけるご依頼者様の代理人としてスムーズに遺産分割が完了するようサポートいたします。

・配偶者控除を想定して遺言を作成したい場合は、2次相続の際の納税額の見込みを検討したうえ、相続税の申告期限前に遺産分割が完了しなかった場合に配偶者がどのようにして一旦配偶者控除のない金額で納税するかなどを見据えて遺言を作成する必要があります。弁護士は、必要事項を検討し、ご希望に沿う遺言が作成できるようサポートいたします。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
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弁護士 
(神奈川県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学法学部法務研究科を修了。これまで離婚、相続など個人の法律問題に関する案件を数多く取り扱い、依頼者の気持ちに寄り添った解決を目指すことを信条としている。複数当事者の利益が関わる調整や交渉を得意とする。現在は不動産法務に注力。
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