コラム
公開 2022.02.08 更新 2026.01.25

遺産相続での生命保険金の受取人は?生命保険を活用する相続対策のメリットを弁護士が解説

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遺産相続において、生命保険はさまざまな場面で活用できます。

では、遺産相続の側面において、生命保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
また、生命保険金の受取人は誰なのでしょうか?

今回は、生命保険の受取人や生命保険を活用する遺産相続の主なメリット、遺産相続対策で生命保険金を活用する際の注意点などについて弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(Authense法律事務所)は遺産相続に特化した専門チームを設けており、生命保険を活用した相続対策についても豊富なサポート実績を有しています。
遺産相続の実績が豊富な弁護士をお探しの際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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【ケース別】生命保険は遺産?

そもそも、生命保険は遺産なのでしょうか?
生命保険金の性質について、次の前提でケース別に解説します。

亡くなった人(「被相続人」といいます)
相続人 母(父の配偶者)・長男
保険料の負担者 保険契約者と同じ

父が契約者・父が被保険者である生命保険

被相続人である父が契約者であり、被保険者(ここでは、その人が亡くなった場合に保険金が支払われる対象者)も父である場合には、父の死亡にともなって生命保険金が支払われます。

この場合の生命保険金は、原則として遺産ではありません。
遺産ではなく、受取人固有の財産です。

固有の財産ということは、この生命保険金の受取人が長男である場合、母と話し合ったり母の同意を得たりする必要はなく、当然に長男が保険金を受け取れるということです。

ただし、遺産ではないものの、例外的に相続税の課税対象とはなります。
生命保険金が仮に相続税の対象から外れてしまえば、生命保険契約を活用した相続税逃れが横行してしまいかねません。

そこで、相続税法では「契約者=被保険者=被相続人」である生命保険金を遺産とみなして、相続税の対象とする旨の規定を置いています。

父が契約者・母が被保険者など、保険事故が起きていない生命保険

被相続人である父が契約者であり、被保険者が母である場合、父が死亡しても保険金は支払われません。
この保険から生命保険金が支払われるのは、将来、被保険者である母が亡くなったときです。

このような保険は「生命保険契約に関する権利」として遺産となり、遺産分割の対象となります。
つまり、その保険契約に関する権利を母が引き継ぐか長男が引き継ぐか、話し合い(「遺産分割協議」といいます)をする必要があるということです。

また、このような保険契約は、解約返戻金相当額が相続税の課税対象となります。
なぜなら、仮にその時点で解約すれば、契約者が解約返戻金を受け取れるためです。

母が契約者・父が被保険者など、保険料の負担者が父ではない生命保険

契約者が被相続人である父ではなく母であり、被保険者が被相続人である父である場合、父の死亡にともなって生命保険金が支払われます。
この場合の生命保険金は原則として遺産ではなく、受取人固有の財産です。

つまり、仮にこの生命保険金の受取人が母である場合、長男と話し合ったり長男の同意を得たりする必要はなく、当然に母が保険金を受け取れるということです。

なお、この場合の課税関係は、契約者と保険金受取人が同一の者であるか別の者であるかによって異なります。

母が契約者であり、生命保険金の受取人でもある場合、一時所得または雑所得として所得税の課税対象となります。
一方で、母が契約者であり、生命保険金の受取人が長男である場合、母から長男への贈与であるとして贈与税の課税対象となります。

生命保険金の受取人は誰?

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被相続人の死亡に伴って支払われる保険金の受取人は、誰なのでしょうか?
ここでは、ケース別に保険金の受取人について解説します。

なお、ここからは「契約者=被保険者=被相続人」である前提で解説を進めます。

被相続人が被保険者である生命保険契約があるものの、保険金の受取人がわからない場合などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

保険金受取人の指定がある場合

その生命保険契約で死亡保険金受取人として個人が指定されており、その受取人が存命である場合、その指定された受取人が生命保険金を受け取ります。

先ほど解説したように、他の相続人の同意を得たり、他の相続人と分け合ったりする必要はありません。

保険金受取人の指定が「相続人」である場合

死亡保険金の受取人が個人名ではなく、「相続人」と指定される場合もあります。
この場合には、被相続人の相続人が法律で定められた相続分にしたがって死亡保険金を受け取ります。

たとえば、相続人が配偶者と長男、二男の3名であり、受取人が「相続人」とされた保険契約から2,000万円の死亡保険金が支払われる場合、配偶者が1,000万円、長男と二男が各500万円の保険金を受け取ることとなります。

ただし、約款で別の定めがある場合には、約款の規定に従います。

保険金受取人の指定がない場合・指定した受取人がすでに死亡している場合

死亡保険金の受取人の指定がない場合や、指定していた死亡保険金受取人がすでに死亡している場合には、約款の規定に従います。

約款において、「第1順位は配偶者、第2順位は子ども」など、保険金受取人の優先順序が定められていることが一般的です。
また、指定した受取人が被相続人より先に亡くなっている場合には、「被相続人の相続人」ではなく、「亡くなった元の受取人の相続人」が保険金受取人になるとされていることもあります。

いずれにしても、この場合には特に約款を読み込む必要があるでしょう。

保険金受取人の指定が「被相続人」である場合

死亡保険金の受取人として、契約者かつ被保険者である被相続人自身が指定されている場合もあります。
しかし、被相続人はすでに死亡しているため、死亡保険金を受け取ることはできません。

このような場合には、原則として被相続人の遺産として、遺産分割協議で受取人を決めることとなります。
ただし、約款で別の規定がある場合には、約款の定めに従います。

遺産相続対策で生命保険を活用する主なメリット

生命保険を遺産相続対策で活用することには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、遺産相続対策としての生命保険の主なメリットを6つ解説します。

  • 預貯金と比較して入金が早い
  • 遺産分割の対象にならない
  • 相続税の非課税枠の適用が受けられる
  • 遺留分対策として活用できる
  • 納税資金の確保に役立つ
  • 相続放棄をしても受け取れる

Authense法律事務所は相続発生後の対応のみならず、生前の対策にも豊富なサポート実績を有しています。
遺産相続の対策をご検討の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

預貯金と比較して入金が早い

1つ目は、預貯金と比較して相続開始後の入金が早いことです。

相続開始後は、入院費用の精算や葬儀費用の支払いなどで、何かとお金がかかります。
しかし、被相続人の預貯金口座は金融機関が死亡を知った時点で凍結され、たとえ遺族であっても自由な引き出しはできません。

被相続人の預金口座を解約して預貯金全額を引き出すには、相続人全員で話し合ってその預貯金を誰が相続するのかを含む遺産分割協議をまとめたうえで、その結果を記した遺産分割協議書などを作成する必要があります。
遺言書がない場合、どれだけ話し合いがスムーズであっても、相続開始から預金全額を引き出すまでには1か月程度は要するでしょう。

一方で、受取人が指定された生命保険の場合、請求内容に不備がない限り、請求から1週間前後で保険金が支払われることが一般的です。
そのため、相続開始直後の資金需要に備える手段として活用できます。

遺産分割の対象にならない

2つ目は、遺産分割の対象とならないことです。

先ほど解説したように、受取人が指定された生命保険は遺産分割の対象となりません。
また、受け取った保険金を他の相続人と分け合う必要もありません。

そのため、たとえば「葬儀や家の片づけをお願いすることになる長男に、その資金として500万円渡したい」など、一定の相手に一定額の資金を確実に遺したいニーズに対応しやすいといえます。

相続税の非課税枠の適用が受けられる

3つ目は、相続税の計算上、独自の非課税枠が設けられていることです。

生命保険金は、原則として相続税の対象となります。
しかし、相続人が受け取った生命保険金には独自の非課税枠が設けられており、その非課税枠の範囲内であれば、結果的に相続税はかかりません。

生命保険金の非課税限度額は、次の式で算定されます。

  • 非課税限度額=500万円×法定相続人の数

そのため、同じ金額を預貯金で遺す場合と生命保険で遺す場合とでは、生命保険で遺す方が相続税を軽減できることが一般的です。

たとえば、法定相続人が配偶者、長男、二男の3名である場合、生命保険金の非課税限度額は1,500万円(=500万円×3名)です。

この場合において、仮に配偶者が1,000万円と長男が300万円の死亡保険金を受け取った場合、相続税の計算上加算される保険金額はありません。
相続人が受け取った保険金の合計額(1,300万円)が、非課税限度額以下であるためです。

一方で、仮に配偶者が1,000万円、長男と二男が各600万円の死亡保険金を受け取った場合、相続人が受け取った保険金の合計額(2,200万円)は、非課税限度額を超過します。
この場合には、非課税限度額を超える700万円(=2,200万円-1,500万円)部分について相続税が課されます。

遺留分対策として活用できる

4つ目は、遺留分対策として活用できることです。
遺留分とは、被相続人の配偶者や子どもなど一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。

この遺留分を侵害する内容の遺言や生前贈与も有効であるものの、相続開始後に「遺留分侵害額請求」がされる可能性があります。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう求めるものです。

そこで検討したいのが、生命保険の活用です。

生命保険金は、原則として遺留分計算の対象とはなりません。
そのため、遺産を多く渡したい相手を受取人として生命保険契約を締結することで、万が一遺留分侵害額請求をされた場合の支払い原資として活用できます。

また、遺産である預貯金を遺産ではない生命保険金に変えることで、結果的に他の相続人の遺留分を減らす効果も期待できるでしょう。

納税資金の確保に役立つ

5つ目は、納税資金の確保に役立つことです。

相続税の申告と納税の期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内です。
各相続人が納めるべき相続税額を正確に算定するには遺産分割協議がまとまっている必要もあるものの、協議が難航し、申告期限までにまとまらない場合もあるでしょう。
その場合であっても、相続税の申告・納税期限は伸長されません。

期限までに協議がまとまらない場合には、期限までにいったん仮の申告と納税を行います。
その後、協議が成立した時点で、改めて修正申告や更正の請求をして調整をはかることとなります。

つまり、協議がまとまっておらず、まだ被相続人の預貯金の解約などができる状態になかったとしても、相続開始の10か月後には納税をしなければならないということです。

そこで検討したいのが、生命保険の活用です。

先ほど解説したように、生命保険は受取人固有の財産であり、遺産分割協議がまとまっていなくても請求できます。
そのため、相続税の納税資金を確保する手段として活用できます。

相続放棄をしても受け取れる

6つ目は、相続放棄をしていても受け取れる場合があることです。

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人ではなかったこととなる手続きです。
一般的には、被相続人に多額の借金があり、これを引き継ぐ事態を避けたい場合に行うことが多いでしょう。

相続放棄をすると、マイナスの遺産のみならず、預貯金や不動産などプラスの遺産もすべて承継できなくなります。
一方で、受取人が指定された生命保険金は「遺産」ではなく「受取人固有の財産」であるため、相続放棄をしても生命保険金は受け取れると解されています。

とはいえ、「財産の大半を生命保険金にして受け取らせたうえで、相続放棄をして借金は承継しない」など極端な対策は債権者(被相続人にお金を貸している人)を害することになるため、許容されない可能性が高いでしょう。

そのため、仮に借金を原因として相続放棄をする予定の者を生命保険の受取人にしようとする場合には、事前に弁護士にご相談ください。

遺産相続対策で生命保険金を活用する際の注意点

遺産相続対策で生命保険金を活用することには、注意点もあります。
ここでは、主な注意点を4つ解説します。

  • 保険契約があることを家族に知らせておく必要がある
  • 受取人が相続人でない場合には、相続税の非課税枠は適用できない
  • 遺産の大半が生命保険金など、極端な場合には遺留分計算の対象となる
  • 受取人が「被相続人」である場合など、相続放棄をすると受け取れないこともある

なお、Authense法律事務所は相続開始後のトラブル対応のみならず、生前の対策にも注力しています。
生命保険を活用した遺産相続対策をご検討の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

保険契約があることを家族に知らせておく必要がある

被相続人がせっかく生命保険契約を締結していても、遺族がその契約の存在を知らなければ、相続開始後の請求が漏れて保険金を受け取れないかもしれません。

なお、「被相続人が保険契約を締結していたか否かがわからない」場合には、相続人が生命保険契約照会制度を活用することで、保険契約を見つけられる可能性はあります。

とはいえ、そもそも照会制度を知らない人も多く、「生命保険契約があったかもしれない」という認識さえなければ照会を掛けない可能性も高いでしょう。

相続開始後に確実に請求できるよう、生命保険契約があることは信頼できる家族に知らせておくことをおすすめします。

受取人が相続人でない場合には、相続税の非課税枠は適用できない

生命保険金には相続税の非課税枠が設けられているものの、この非課税枠の対象となるのは「相続人」が受け取った生命保険金だけです。
子どもの妻や子どもが存命である場合の孫、内縁の配偶者、相続放棄をした者など、相続人ではない人が受取人である生命保険金には非課税制度は適用されません。

遺産の大半が生命保険金など、極端な場合には遺留分計算の対象となる

先ほど解説したように、生命保険金は原則として遺留分計算の対象から除外されます。
ただし、たとえば遺産の大半を生命保険につぎ込むなど極端な場合には、例外的に遺留分計算の基礎に含まれる可能性があります。

とはいえ、「遺産の〇割までであれば遺留分の対象とならず、〇割を超えたら遺留分計算の基礎に含まれる」などの明確な線引きがあるわけではありません。
そのため、生命保険金を活用して遺留分対策を講じようとする場合には、事前に弁護士に相談しておくとよいでしょう。

受取人が「被相続人」である場合など、相続放棄をすると受け取れないこともある

先ほど解説したように、死亡保険金の受取人が指定されている場合は、たとえ相続放棄をしても保険金は受け取れるのが原則です。
この場合における死亡保険金は、遺産ではないためです。

一方で、死亡保険金の受取人が被相続人本人である場合には、死亡保険金は遺産としての性質を持ちます。
そのため、このような場合には、相続放棄をした者は原則として生命保険金を受け取れません。

ただし、約款の規定により取り扱いが異なる可能性もあります。
そのため、事前に弁護士にご相談ください。

遺産相続における生命保険に関するよくある質問

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最後に、遺産相続における生命保険に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

生命保険金は請求後何日で支払われる?

請求書類に不備がない限り、生命保険金は請求から1週間前後で支払われることが多いといえます。

ただし、具体的な日数は保険会社や保険契約の内容などによって異なる場合があります。
そのため、事前に保険会社へ問い合わせて確認しておくとよいでしょう。

生命保険金に相続税はかかる?

被相続人が契約者である生命保険契約から、被相続人の死亡を期に生命保険金が支払われた場合、その保険金は原則として相続税の課税対象となります。

ただし、相続人が受け取った清家明保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
この非課税枠の範囲内であれば、結果的に相続税はかかりません。

まとめ

遺産相続における生命保険金の取り扱いや、遺産相続対策に生命保険を活用するメリット、注意点などについて解説しました。

生命保険を遺産相続対策に活用するメリットは、小さいものではありません。
代表的なメリットとしては、相続税の非課税枠の適用が受けられることや預貯金よりも入金早い傾向にあること、遺産分割の対象とならないこと、遺留分対策としても活用できることなどが挙げられます。

ただし、受取人が相続人でなければ相続税の非課税枠は適用できないことや、例外的に遺留分計算の対象になる場合があることなどに注意が必要です。
遺産相続対策をご検討の際は弁護士に相談をしたうえで、状況に合った的確な対策を講じるとよいでしょう。

Authense法律事務所は遺産相続に実績のある相続チームを設けており、相続開始後のサポートのみならず、生前の対策のサポートについても豊富な実績を有しています。
遺産相続対策に生命保険を活用したい際や、生命保険にまつわるトラブルが生じている際などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

遺産相続に関する初回のご相談は、原則として初回60分間無料です。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。相続を中心に、離婚、不動産法務など、幅広く取り扱う。相続人が30人以上の複雑な案件など、相続に関わる様々な紛争案件の解決実績を持つ。
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