
景品表示法は、不当な表示や景品で消費者を誘引することのないよう消費者保護の目的で設けられている法律です。
景品表示法の規制内容や違反をしてしまった場合にどのような罰則が科されるのかなどについて詳しく解説します。
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景品表示法(景表法)とは?
景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。
その目的は、景品表示法1条によると「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」です。
では、詳しく見ていきましょう。
景品表示法の目的は一般消費者の利益の保護
景品表示法の最大の目的は、一般消費者の利益の保護にあります。
消費者にとって、できるだけ良い商品やサービスを購入したいと考えるのは自然なことでしょう。
しかし、消費者が購入を検討する商品の製造過程などをくまなく確認することは不可能です。
消費者は、購入の判断にあたってその商品の広告やパッケージの表示などを見て購入の判断をせざるを得ません。
こうした事情を悪用し、実際より良いものだと見せかける表示が行われたり、過大な景品付きでの販売が行われたりすれば、それらにつられて消費者が実際にはそれほど質の良くない商品やサービスを買ってしまって、不利益をこうむるおそれがあります。※1
こうした事態を避けるために「過大な景品」と「不当な表示」を規制している法律が、景品表示法です。※2
景品表示法で禁止される不当な表示とは
景品表示法で禁止されている「不当な表示」には、次のものがあります。※3
- 通常よりも優良であるかのように誤認させる表示(優良誤認)
- 通常よりも有利であるかのように誤認させる表示(有利誤認)
- その他誤認させるおそれのある内閣総理大臣が指定する表示
たとえば、消費者庁のホームページでは、不当なものとして次のものが例示されています。
- カシミヤ混用率が80%程度のセーターに「カシミヤ100%」と表示した場合(優良誤認)
- 「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた場合(優良誤認)
- 当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合(有利誤認)
- 「他社商品の2倍の内容量です」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった場合(有利誤認)
景品表示法による景品の規制とは
景品表示法による景品規制の目的は、消費者が過大な景品に惑わされて質の良くないものを購入してしまうことや、商品そのものではなく景品による競争がエスカレートすることで商品の質が下がることなどを防ぐことです。※4
景品表示法で規制される「景品類」とは、次の3つの要件を満たすものを指します。
- 顧客を誘引するための手段として
- 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
- 物品、金銭その他の経済上の利益
景品表示法では、消費者に景品などを提供する次の3つの形態に応じ、それぞれ提供できる景品類の限度額などが定められています。
共同懸賞
共同懸賞とは、複数の事業者が共同して行う懸賞のことです。「懸賞」とは、くじやじゃんけんなどの偶然性や特定行為の優劣などによって景品類を提供することを指します。
商店街やショッピングモール内の店舗が共同で行う抽選会などが、この共同懸賞に該当します。
共同懸賞の場合の景品類限度額規制は、次のとおりです。
- 景品総額:懸賞に係る売上予定総額の3%まで
- 景品最高額:取引価額にかかわらず30万円まで
一般懸賞
一般懸賞とは、共同懸賞以外の懸賞を指します。
たとえば、抽選券やじゃんけん大会により景品類を提供するものや、クイズなどの回答の正誤により景品類を提供するものがこれに該当します。
一般懸賞の場合の景品類限度額規制は、次のとおりです。
- 景品総額:懸賞に係る売上予定総額の2%まで
- 景品最高額:取引価額が5,000円未満の場合には取引価額の20倍まで、取引価額が5,000円以上の場合には10万円まで
総付景品
総付景品とは、一般消費者に対して懸賞によらずに提供される景品類を指します。
商品やサービスの利用者などにもれなく提供するものや、先着順により提供されるものがこれに該当します。
総付景品の場合の景品類限度額規制は、次のとおりです。
- 景品総額:規制なし
- 景品最高額:取引価額が1,000円未満の場合には200円まで、取引価額が1,000円以上の場合には取引価額の10分の2まで
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景品表示法に違反するとどうなる?
万が一景品表示法に違反した場合には、次のような措置が取られる可能性があります。
消費者庁や都道府県による措置命令を受ける
違反の疑いがある場合には、消費者庁が調査をします。
調査の結果違反が認められた場合には、消費者庁から誤認の排除や再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令が行われます。※5
課徴金の納付が命じられる
事業者が優良誤認や有利誤認に該当する不当表示をした場合には、消費者庁から課徴金の納付を命じられる可能性があります。
適格消費者団体による差止請求がなされる
適格消費者団体とは、不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するための差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を指します。※6
消費者個々人が事業者に対して訴訟をするにはハードルが高いことも多いため、団体を結成して訴訟を行います。
景品表示法に違反をすると、適格消費者団体から違反行為をやめるよう差し止め請求がなされる可能性があります。
損害賠償請求を受ける
景品表示法に違反したことにより第三者に損害を与えた場合には、損害賠償請求がなされる可能性があります。
損害賠償請求は消費者からなされる可能性があるほか、不正競争防止法にも違反する場合には正当な競争を阻害したとして、比較表示を行った他の事業者から損害賠償請求がなされる可能性も否定できません。
企業の信頼が失墜する
景品表示法に違反をして措置命令を受けると、消費者庁のホームページに企業名などが公表されます。
場合によっては、ニュースなどで取り上げられたりSNSなどで話題になったりしてしまうこともあるでしょう。
これにより、企業の信頼が失墜する可能性があります。
刑事罰が課される
景品表に違反をしたうえ消費者庁などの措置命令に従わずに違反をやめない場合などには、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
違反当事者に加えて事業者にも罰金が科される可能性があり、その額は3億円以下と非常に高額です。
景品表示法に違反しないために
景表法に違反してしまえば上で解説したとおり措置命令や罰則の対象となり得るほか、信頼が失墜して長期的な業績に悪影響を及ぼす危険性があります。
景品表示法に違反しないために、次の事項に注意しましょう。
景品表示法やガイドラインの内容をよく理解する
景本表示法は、すべての事業者に関係する法律です。
法律を知らずうっかり違反をしてしまうことのないよう、法律やガイドラインをよく読んで理解しておく必要があります。
消費者庁が公表する違反事例集を定期的に確認する
景品表示法では、消費者庁から違反事例が公表されています。※7
この違反事例を定期的に確認しておくと良いでしょう。
自社と似た業種での事例などを中心に違反事例を読み込むことで、何をしたら違反行為になるのかのイメージがつかみやすくなるものと思われます。
迷ったら弁護士へ相談する
明かに違反となる行為を行うことはもってのほかであるものの、事業をしていく中での具体的な事例について、違反になるかどうか迷ってしまうこともあるでしょう。
判断に迷った場合には独断で行ってしまうのではなく、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
景表法違反には罰則もあるほか、顧客からの信頼が失墜してしまえばその影響が長期にわたる懸念もあります。
そのため、法令やガイドラインをよく理解したうえで、知らずに違反をしてしまうことのないよう注意しましょう。
判断に迷った場合には、弁護士へご相談ください。
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