企業不祥事が、後を絶ちません。
ニュースで大々的に報じられる企業不祥事は大手企業のものばかりではありますが、今やどの企業であっても不祥事が起きる可能性があります。
では、企業不祥事が起きてしまった場合、企業はどのように対応すればよいのでしょうか?
今回は、2022年に起きた主な企業不祥事事件を紹介するとともに、万が一自社で不祥事が生じてしまった場合の対応などについて、弁護士がくわしく解説します。
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日野自動車によるエンジン認証に関する不正行為
2022年3月、日野自動車株式会社にて、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスと燃費に関する認証申請における不正行為が発覚しました。※1、※2
不正は少なくとも2003年以前から、約20年もの長きにわたって行われていたようです。
大手企業がこれほど長く不正を繰り返しており、しかも長きにわたって判明しなかったということで、製品の安全性を揺るがす大きな不祥事事件であるといえます。
この不正に関して、国土交通省より「型式指定に係る違反の是正命令」と「型式指定の取消」の行政処分が下されました。
また、これに関連して同社のトラックを購入した者などから、オーストラリアにおいて集団訴訟を提起されています。
大きな不正が発覚した際には、行政庁から行政処分が下されて以後の営業活動に大きな支障が出るおそれがあるほか、顧客などの関係者から訴訟を提起されて対応に追われる可能性があることを如実にあらわしている不祥事事例であるといえるでしょう。
かっぱ寿司元社長による不正競争防止法違反
2022年9月、大手回転寿司チェーンである「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト株式会社の元社長ら3名が、不正競争防止法違反の容疑で逮捕される事件が発生しました。※3
逮捕されたカッパ・クリエイト元社長は以前、株式会社はま寿司の取締役を務め、親会社である株式会社ゼンショーホールディングスに在籍していた経緯があります。
株式会社はま寿司は、「かっぱ寿司」と同じ回転寿司チェーンである「はま寿司」の運営会社です。
元社長は以前の勤務先である株式会社ゼンショーホールディングスから入手した情報を、転職先であるカッパ・クリエイト株式会社の業務で使用した不正競争防止法違反の容疑がかけられています。
元社長とその関係者や、カッパ・クリエイト社は、2022年10月に起訴されており、現在公判中のようですが、仮に有罪とされた場合には不正競争防止法の規定により、10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金、またはこれらの併科に処される可能性があります(不正競争防止法21条)。
また、事件が大々的に報じられたことでブランドイメージの低下や顧客離れが起きるリスクがあり、このような不祥事が発生しないようにするための予防策の必要性を痛感するとともに、万が一不祥事が生じてしまった場合の対策が急務となるでしょう。
ツアーバス横転事件
2022年10月、富士浅間神社と富士山の須走口5合目を結ぶ県道「ふじあざみライン」でツアーバスが横転し、ツアー客である乗客1名が死亡、26人が重軽傷を負う重大事故が発生しました。
この事件では、バスを運転していた男性が過失運転致傷罪容疑で現行犯逮捕され、その後過失運転致死傷罪容疑で調査されていましたが、処分保留のまま釈放されています。※4
また、このツアーの主催者と、バスの運行を行った会社は別の会社でしたが、バスの運行を行った会社に対しても家宅捜索がなされています。
事件の真相は明らかになっていませんが、運転手が下り坂運転の基本であるエンジンブレーキや排気ブレーキを使用せず、フットブレーキの使いすぎが原因でブレーキがきかなくなる「フェード現象」が起きたのではないかといわれています。
このツアーバスの運転手からはアルコールなどの検出はされなかったものの、このルートの走行が初めてであったとのことで、今後運行会社の管理体制などが問われていくことでしょう。
企業不祥事によって人命を奪ってしまった、2022年における重大事件の一つです。
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企業不祥事が起きてしまった場合の対応
企業不祥事を避けるためには、日頃からコーポレートガバナンスを強化したり、従業員教育に力を入れたりする必要があります。
しかし、いくら対策を講じていても、不祥事が起きる可能性をゼロにすることは困難です。
では、万が一自社で企業不祥事が起きてしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
企業不祥事が起きた場合の主な対応方法は次のとおりです。
早期に弁護士へ相談する
企業不祥事が起きてしまったら、直ちに弁護士へご相談ください。
不祥事対応を自社のみで行おうとすれば、初期対応を誤ってしまうなどして、傷口を広げてしまうおそれがあるためです。
ただし、すべての弁護士が企業不祥事への対応に慣れているわけではありません。
そのため、相談する際には、不祥事対応にくわしい弁護士を選択してください。
企業の内情を知っている顧問弁護士がいれば、相談先として適任であるといえるでしょう。
また、企業幹部による不正など、経営陣の関与が疑われる場合には、経営陣と日ごろかかわりのある顧問弁護士よりも、外部の弁護士等により「第三者委員」を組織してもらって調査等を依頼する方が、調査の公平性・信頼性などの点からも適している場合もあります。
企業不祥事は、今やどの企業であっても起きる可能性があります。
万が一の事態にそなえ、不祥事対応やコーポレートガバナンスに強い弁護士とあらかじめ顧問契約を締結しておくと安心です。
事実関係を確認する
不祥事が起きてしまったら、依頼した弁護士とともに、まずは事実関係を確認しましょう。
事実と大きく異なる内容を報告してしまったり、後出しのように次から次へと不祥事が発覚したりしては、企業の信頼をさらに損ねることとなりかねないためです。
確認すべき内容は起きてしまった不祥事によって異なりますが、たとえば事情を知る従業員などに聞き込みをしたり、社内の記録を調査したりすることなどが考えられます。
早期に謝罪と報告をする
事実関係を確認したら、早期に謝罪と報告を行います。
謝罪と報告ではその時点で発覚している事実を公表するとともに、誠実に対応しましょう。
企業側が保身的な態度や投げやりな態度を取ってしまえば、企業イメージがより失墜してしまいかねません。
また、謝罪や報告の方法は起きた不祥事の内容や影響の規模、社会の関心の大きさなどによって検討します。
もっとも誠実であると捉えられやすい謝罪方法は、謝罪会見です。
また、軽微な不祥事であれば、企業のホームページで掲載する場合もあります。
謝罪会見をすることにはコストがかかるほか、ニュースなどでも映像が報じられ、より不祥事を知る人がより増える可能性があるなどのデメリットがあります。
また、企業側の発言や態度によっては、さらに不信感を与えてしまうリスクもあるでしょう。
その一方で、社会の関心や影響が大きかったり不祥事が重大であったりするにもかかわらずホームページ上での謝罪のみでは不誠実であると捉えられ、影響が拡大する可能性があります。
そのため、弁護士などの専門家とも相談の上、事案に合った対応方法を慎重に検討することが必要です。
再発防止策を講じる
不祥事の初期対応が済んだ後は徹底的に原因の究明を行い、再発防止策を講じましょう。
企業の仕組み自体に問題がある場合には、たとえ不祥事を起こしたのが一人の従業員であったとしても、不祥事が再発しかねないためです。
しかし、企業内の問題を自社のみで把握し、抜本的な改革をすることは容易ではありません。
そのため、再発防止策の検討は社内のみで行わず、弁護士などの専門家とともに行うことをおすすめします。
まとめ
企業不祥事は、どの企業にとっても他人事ではありません。
不祥事のニュースなどを目にした際には、ぜひ「自社では大丈夫だろうか?」と立ち返り、自社の対応を見直すきっかけとして頂くとよいでしょう。
また、いざ不祥事が起きてしまった場合に備えて対応マニュアルを整備し、弁護士と顧問契約を締結しておくこともおすすめします。
Authense法律事務所には不祥事対応に強い弁護士が多数在籍しており、顧問契約メニューも設けております。
また、不祥事対応マニュアルの整備や、実際に不祥事が起きてしまった場合の対応、第三者委員のご依頼などでもお力になることが可能です。
企業不祥事対応でお悩みの際には、ぜひAuthense法律事務所までお問い合わせください。