コラム

公開 2022.05.10 更新 2024.03.25

資産管理会社を活用した節税対策とは?メリットとデメリットについて解説!

資産管理会社を活用した節税対策とは?メリットとデメリットについて解説!

資産管理会社とは、資産を所有させることを主な目的とした法人です。非上場株式や不動産を資産管理会社へ移転することで、相続税や所得税の節税につなげることが可能です。

今回は、資産管理会社を活用するメリットやデメリットについてわかりやすく解説します。

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資産管理会社とは

資産管理会社とは、あくまでも通称名です。
法律上、「株式会社」や「合同会社」などと並列で「資産管理会社」という名称の会社が存在するわけではありません。

一般的に、資産管理会社とは、不動産や株式などの資産を多く所有している人(以後、この記事では「オーナー」と呼びます)が、財産をある程度まとめて所有させる目的で設立する法人を指します。

法人の形態は、通常の企業と同じように、株式会社や合同会社とすることが多いでしょう。

なお、資産管理会社と対比して、製造業やサービス業など一般の事業を営む会社のことを「事業会社」と呼ぶことがあります。

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資産管理会社を活用するメリット

資産管理会社とはいえ、通常の企業と同様に、利益に対しては法人税が課されます。

しかし、個人で多くの資産を保有していることと比べ、主に課税上のメリットが生じる場合が少なくありません。

資産管理会社を活用する主なメリットは、次のとおりです。

相続税対策になる

資産管理会社を活用することで、相続税の節税につながりやすくなります。
その主な理由は次の2点です。

評価額の圧縮効果が期待できるため

オーナーの相続で相続税を計算する際には、オーナーの所有していた財産が個別で評価され、その合計額が相続税の対象となります。

たとえば、オーナーがA土地建物とB土地建物、C土地、D社株式(オーナーが経営する非上場の事業会社など)を所有していた場合には、これらをそれぞれ評価のうえで合計をして、相続税が計算されます。

一方、オーナーが生前にX資産管理会社を設立し、AからDの財産をX資産管理会社に移転していた場合には、それぞれの財産が個別で評価されることとはなりません。

AからDの財産はもはやオーナーが直接所有しているわけではなく、オーナーが所有する財産はX資産管理会社の株式のみとなるためです。

この場合には、X資産管理会社の株式の評価を行い、これに対して相続税が課税されます。

X資産管理会社の評価をする際には、原則としてX資産管理会社が所有している財産を個別で評価して積み上げる形で計算しますが、この場合、X資産管理会社株式の評価額は、AからDの財産の合計額と比較して低くなることが一般的です。

なぜなら、非上場株式を評価する際のルールとして、非上場会社が所有している各資産の含み益(時価と簿価との差額)に対する法人税相当額相当額(37%)が控除されることとなっているためです。

資産から得た収益の分散効果が期待できるため

オーナーが賃貸不動産や配当のある事業会社の株式など収益を生む資産を個人で所有している場合には、これらの財産から得た収益もすべてオーナー個人の財産となります。

つまり、収益を得れば得るほどオーナーの預貯金などの財産が増えていくということです。
預貯金などの財産が増えて亡くなった時点で持っている財産が増えれば、その分だけ相続税も高くなってしまいます。

一方、資産管理会社を設立して子や孫などをその資産管理会社の役員とすることで、資産管理会社から子や孫に対して役員報酬を支払うことが可能です。

これにより、資産から得た収益を次世代などに分散させることができ、オーナーの資産の増加を鈍化させる効果が期待できます。

毎年の所得が分散され所得税や住民税の節税となる

仮に資産管理会社を活用せず、オーナーが単独で個々の財産を所有している場合には、それらの資産から得た収益はオーナーの所得として、すべてオーナーの所得税の対象となります。

資産を多く所有しているオーナーはそもそも所得も高いことが多く、所得税率も最高税率に近くなっているケースが少なくないでしょう。
そのため、毎年の所得税や住民税が高額になっている場合も多いかと思います。

一方、資産管理会社を設立して子や孫などを資産管理会社の役員とすることで、資産管理会社からその子や孫に対して役員報酬を支払うことが可能です。
役員報酬は、給与収入と同じように報酬を受け取った子や孫の毎年の所得税の対象となりますので、子や孫は受け取った額に応じた税金を負担しなければなりません。

しかし、子や孫にかかる所得税率がオーナーに通常かかっている所得税率よりも低ければ、トータルで見た際に所得税や住民税の節税へとつながります。

損益通算の対象が広くなる

所得は全部で10種類に区分されており、原則としてそれぞれの所得ごとに所得額を計算することとなっています。※1

しかし、一部の所得に限り、損失を他の所得のプラスと通算することが認められています。
これが「損益通算」です。※2

損失が生じた場合に損益通算の対象となる所得は、次の4つとされています。

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得

ただし、これらに該当するものであっても、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失や、別荘など生活に通常必要でない資産の貸付けに係る損失など、一部の損失は損益通算の対象から外されています。

一方、資産管理会社を設立して資産を移転した場合、資産管理会社が所有する財産から生じたものを含め、資産管理会社内で発生した収益や損失は、事実上すべて通算をすることが可能です。

損失の繰越控除の年数が延びる

損失の繰越控除とは、損益通算をしてもなお引ききれなかった損失が生じた場合、その損失を翌年以降に繰り越す制度です。※3

損失の繰越控除は、青色確定申告を行うなど、一定の条件のもと個人にも認められています。
しかし、繰り越しができる期間は3年であるため、控除しきれない場合もあることでしょう。

一方、資産管理会社などの法人であれば、最長10年の繰り越しが認められます。

不動産を個別で名義変更する必要がなくなる

オーナーがA土地建物とB土地建物、C土地を所有していた場合、これらを子や孫などの名義に変えるには、その都度不動産登記の手続きを行い、司法書士報酬や登録免許税(原則として固定資産税評価額の1,000分の20、相続の場合には1,000分の4)を支払わなければなりません。※4

そのため、たとえば贈与税との兼ね合いで一部の持分のみを毎年少しずつ贈与しようとしても、手続きの手間や諸経費から断念する場合もあることでしょう。

しかし、これらの財産をすべてX資産管理会社に持たせた場合、次世代に財産を移す際にはX資産管理会社の株式のみを移転すれば良く、A土地建物やB土地建物を個別で移転させる必要はありません。

そのため、各不動産の名義変更の手間やコストをかけることなく、小分けにして贈与をすることも可能です。

ただし、不動産を資産管理会社に移転する際には、登記の手続きや登録免許税などのコストが発生します。

相続時の遺産分割が容易となる

相続人が複数いる場合、相続で財産を平等に分けることは容易ではありません。
複数の土地があったとしても、不動産の価値や使い勝手は土地によって異なっており、すべての相続人が納得する形で分けることは容易ではないためです。

そうであるからといって、安易に土地を共有にすれば、将来の争いの火種となりかねません。

一方、資産管理会社に不動産を移転しておき、種類株式などを活用することで、たとえば資産管理会社から得られる収益は平等にしつつも、方針を決める議決権は長男のみが保有するような柔軟な設計が可能となります。

資産管理会社を活用するデメリットと注意点

資産管理会社の活用には、デメリットや注意点も存在します。
メリットとデメリットの双方を踏まえ、慎重に活用を検討するようにしましょう。

相続税の計算で小規模宅地等の特例が適用できない

相続税にはさまざまな特例があり、中でも減税効果が高いものの一つに「小規模宅地等の特例」があります。

小規模宅地等の特例とは、被相続人の居住用や事業用などに使用していた宅地等ついて、一定の要件を満たすことにより、最大80%減で評価をしてもらえる制度です。
特に地価の高い場所に土地を持っている場合には、ぜひ活用したい制度であるといえます。

しかし、この制度はあくまでも被相続人が個人で所有していた土地に対してのみ活用ができる制度です。

被相続人が株式を保有する資産管理会社が土地を所有していたとしても、その土地の評価に小規模宅地等の特例を使うことはできません。

将来の税制改正で節税メリットが受けられなくなる可能性がある

税の制度は、将来いつ改正されるかわかりません。
特に、実態を伴わずに大きな節税を伴う制度については、課税逃れを封じるための改正が行われやすい傾向にあります。

資産管理会社を活用した節税は現在では有効であるものの、将来的に資産管理会社たる非上場株式の評価方法などが改正され、効果が弱まってしまう可能性はゼロではないでしょう。

会社の設立と維持にコストがかかる

資産管理会社を設立し、維持するにはコストがかかります。

具体的には、株式会社であれば設立時の登録免許税などに、最低でも20万円ほど(合同会社であれば最低でも7万円ほど)の実費は必要です。※5、※6
設立手続きを専門家へ依頼した場合には、これとは別で報酬も必要となります。

また、はじめに資産管理会社に不動産などの資産を移転する際には、登記にかかるコスト(司法書士報酬と登録免許税)も必要です。

さらに、法人の場合、原則として毎年の確定申告をしなければならず、税理士費用も必要となるでしょう。

他にも、役員の就任や退任など、変更が生じれば変更登記をしなければなりません。

損失が出ていても住民税がかかる

個人であれば、その年の所得がマイナスの場合には所得税や住民税はかかりません。

一方、法人の場合にはたとえ収支がマイナスであっても、最低7万円の住民税均等割は毎年課税されます。※7

資産管理会社の廃業時に手間やコストがかかる

いったん資産管理会社を設立した後で、やはり資産管理会社を廃止したいと考えたとしても、簡単に元の状態に戻すことはできません。

法人を廃業する以上は、税務上や登記上で正式な廃業手続きを踏む必要があるほか、資産を個人へ戻す手続きも必要となります。

これらには手間やコストがかかりますので、資産管理会社は、原則として半永久的に継続する前提で設立すべきでしょう。

まとめ

資産管理会社の活用には注意点も少なくありませんが、その分メリットも多いものです。
多額の資産を保有している場合には、ぜひ資産管理会社の活用を検討するとよいでしょう。

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資産管理会社の活用などをご検討の際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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