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事例をもとにわかりやすく解説!遺留分侵害額請求について

相続人には最低限保障された一定の相続割合(遺留分)が法律で定められています。しかし、この遺留分は、被相続人の遺言や生前贈与によって侵害されてしまうことがあります。それでは、遺留分が侵害された場合、誰に何を請求できるのでしょうか?具体的な事例を交えながら解説します。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。

遺留分ってなに?

法律では、各相続人がそれぞれ相続できる割合が定められており、これを「法定相続分」といいます。例えば、亡くなった方(被相続人)に、配偶者と子ども1人がいた場合、配偶者と子どもの法定相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります。
他方、被相続人は、遺言によって法定相続分とは異なる相続分を指定することも認められています。先述の例でいうと、被相続人は、配偶者の相続分を全部と指定することもできるのです。
しかし、子どもからしてみれば、被相続人が亡くなったときには、遺産を相続できることに対して一定の期待を抱いているのも事実でしょう。こうした期待を保護するために、法は、相続人に対して最低限相続できる相続割合を一定程度保障しています(これを「遺留分」といいます)。原則として遺留分は法定相続分の2分の1の割合になります。
先述の例でいえば、子どもの遺留分は(法定相続分2分の1)×(2分の1)で遺産全体の4分の1となります。たとえ被相続人が配偶者の相続分を全部と指定したとしても、子どもには4分の1の遺留分が認められているため、子どもは配偶者に対して4分の1相当の金銭的請求を行うことができるのです(これを「遺留分侵害額請求」といいます。)。

兄弟姉妹には遺留分がない!

先述のとおり、遺留分を侵害された相続人は、侵害している者に対して金銭的な請求(遺留分侵害額請求)をすることができます。
ただし、兄弟姉妹には遺留分は認められていないため、遺留分侵害額請求できるのは、法定相続人が、被相続人の子(孫も含む)、配偶者、親(祖父母も含む)である場合に限られます。

遺留分の割合ってどれくらい?

遺留分の割合は、法定相続人の構成により異なります。
まず、直系尊属(被相続人の両親や祖父母のこと)のみが法定相続人である場合には、法定相続分×3分の1が遺留分となります(例えば、両親が相続人である場合には、父親と母親の遺留分は6分の1ずつとなります。)。
次に、法定相続人が上記以外の場合、法定相続分×2分の1が遺留分となります(例えば、配偶者と子が相続人である場合には、配偶者と子の遺留分は4分の1ずつとなります。)。

遺留分が侵害される典型的な事例って?

遺留分が侵害される典型的な事例って?

遺留分が侵害される典型的な事例としては、遺言(遺贈)や生前贈与が挙げられます。いきなり、遺言(遺贈)や生前贈与と言われてもよくわからないと思うので、それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

遺言による相続分の指定など

被相続人は、生前に遺言書を作成しておくことで、誰に何をどれだけ相続させるか定めることができます(これを「相続分の指定」と呼びます)。
例えば、法定相続人が3人いる場合に、そのうちの1人にだけ全財産を相続させるという旨の遺言をすることができるのです。しかし、そうすると、遺言によって、最低限相続できるはずの遺留分すら相続できなくなってしまう相続人がでてきます。これが、遺言によって遺留分が侵害される典型的な事例です。
上記のようなケースでは、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害している相続人に対して、遺留分侵害額請求を行うことができるのです。遺留分侵害額請求の中身については後ほど解説いたします。

遺贈

次に遺贈によって遺留分が侵害されるケースをご紹介しましょう。
被相続人は遺言によって法定相続人以外の第三者に遺産を贈与することができます(これを「遺贈」と呼びます)。

例えば、被相続人が遺言によって法定相続人以外の第三者に全財産を遺贈したとしましょう。この場合、法定相続人は遺贈を受けた人(受遺者)に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
ちなみに、被相続人が死亡することによって効力が生じる贈与のことを死因贈与と言います。遺贈とは若干異なりますが、これも遺留分侵害額請求の対象となります。

生前贈与

被相続人が亡くなる前に行っていた贈与(いわゆる生前贈与)も、遺留分侵害額請求の対象となります。
ただし、法定相続人以外の第三者への生前贈与については、基本的には亡くなる前1年以内の生前贈与のみが対象となります。これに対して、法定相続人への生前贈与については、亡くなる前10年以内の贈与が対象となります(その代わりに、婚姻若しくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与に限られます)。

遺留分侵害額請求の意思表示は1年以内に

遺留分が侵害された場合には、相続の開始及び遺贈や贈与があったことを知った時から1年以内に遺留分侵害額請求の意思表示を行わなければ時効によって権利が消滅してしまいます。

他方、遺留分侵害額請求の意思表示は、具体的な金額まで示して行う必要はありません。
そのため、遺留分を侵害される懸念がある場合には、とりあえず遺留分侵害額請求の意思表示を行っておき、その後ゆっくりと、具体的な金額について算定することも可能です。

遺留分侵害額請求の際の注意点

遺留分侵害額請求の際の注意点

遺留分の権利を有する人は、生前贈与や遺言で遺産を譲り受けた受遺者または受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
なお、相続法の改正により、遺留分が侵害された場合に侵害者に対して請求することができるのは金銭だけになりました。そのため2019年7月1日以降に開始した相続については、遺産に含まれる不動産などの引渡しを請求することはできないので注意しましょう。

それでは、具体的な事例を見ていきましょう。

遺留分侵害額請求の事例1:法定相続人のみの問題(生前贈与なし)

遺留分侵害額請求の事例1:法定相続人のみの問題(生前贈与なし) 図1

被相続人である夫が亡くなり、遺産が2,000万円あったとします。
また、法定相続人は、妻と、子である長男と二男の合計3人いたと仮定しましょう。
この事例において、被相続人である夫の遺言で、子である長男に遺産の全てを相続させる旨定められていた場合を考えてみます。

まずは、法定相続分と遺留分を算出してみましょう。
妻の法定相続分は2分の1ですから、遺留分は4分の1となり、これを金額に換算すると500万円となります。
同様に、子である二男の法定相続分は4分の1ですから、遺留分は8分の1となり、これを金額に換算すると250万円になります。

遺留分侵害額請求の事例1:法定相続人のみの問題(生前贈与なし) 図2

しかし、この事例においては、遺言により全財産を長男が相続することとなり、妻と二男は全く相続できませんので、妻の遺留分500万円と、二男の遺留分250万円がそれぞれ侵害されていることになります。
そこで妻と二男は、長男に対し、遺留分侵害額請求として、妻は500万円、二男は250万円の金銭請求をすることができるのです。

遺留分侵害額請求の事例2:法定相続人のみの問題(生前贈与あり)

遺留分侵害額請求の事例2:法定相続人のみの問題(生前贈与あり) 図1

被相続人である夫が亡くなり、遺産が2,000万円あったとします。
また、法定相続人は、妻と、子である長男と二男の合計3人いたと仮定しましょう。
さらに、生前贈与として、被相続人である夫が死亡する前10年以内に、妻に600万円、長男に400万円の贈与があったとします(この贈与は婚姻若しくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与であったとします)。
この事例において、被相続人である夫の遺言で、子である二男に遺産の全てを相続させる旨定められていた場合を考えてみましょう。

まずは、先ほどと同様に、法定相続分と遺留分を算出します。
この事例において、遺留分の対象となる遺産総額は、死亡当時の遺産2,000万円に、生前に妻に贈与した600万円、長男に贈与した400万円を加算して算出するため、遺産総額は3,000万円と考えます。
そうすると、妻の遺留分は4分の1ですので、これを金額に換算すると750万円となります。
同様に、子である長男の遺留分は8分の1ですので、これを金額に換算すると375万円となります。

遺留分侵害額請求の事例2:法定相続人のみの問題(生前贈与あり) 図2

では、この事例において、妻と長男は遺留分を侵害されているでしょうか?
たしかに、この事例においても、先に見た事例と同様に、死亡当時の全財産2,000万円を二男が相続することとなるので、二人の遺留分が侵害されているようにも思えます。しかし、長男については、遺留分が375万円であるのに対し、生前に400万円の贈与を受けていますので、法律的には遺留分は侵害されていないと評価されるのです。
したがって、長男は、二男に対して、遺留分侵害額を請求できません。

他方、妻は、遺留分が750万円であるのに対して、生前の贈与が600万円ですので、その差額である遺留分150万円が侵害されていることになります。
したがって、妻は、二男に対し、遺留分侵害額請求として150万円の金銭を請求することができます。

遺留分侵害額請求の事例3:法定相続人以外への遺贈・贈与

遺留分侵害額請求の事例3:法定相続人以外への遺贈・贈与 図1

被相続人である夫が亡くなり、遺産が2,000万円あったとします。
また、法定相続人は、妻と、子である長男と二男の合計3人だったと仮定しましょう。
さらに、生前贈与として、被相続人である夫から第三者Aに対して、被相続人である夫が死亡する6ヶ月前に600万円、同様に第三者Bに死亡する2年前に400万円の贈与があったとします。
この事例において、被相続人である夫の遺言で、子である長男に遺産の全てを相続させると定められていた場合を考えてみましょう。

まずは、法定相続分と遺留分を算出します。
この事例において、遺留分の対象となる遺産総額は、死亡当時の遺産2,000万円に、被相続人である夫が亡くなる6ヶ月前に贈与された600万円を加えた2,600万円となります。
被相続人である夫が亡くなる1年以上前にされた第三者Bへの贈与400万円については、遺留分侵害額請求の対象とはならないので無視してください。

そうすると、妻の遺留分は4分の1ですので、これを金額に換算すると650万円となります。
同様に、子である二男の遺留分は8分の1ですので、これを金額に換算すると325万円となります。

遺留分侵害額請求の事例3:法定相続人以外への遺贈・贈与 図2

この事例においては、死亡当時の全財産2,000万円を長男が相続することとなり、妻と二男は何も相続できないため、妻の遺留分650万円、二男の遺留分325万円が侵害されていることになります。

では、この事例において、妻と二男は、長男と第三者Aのいずれに対して遺留分侵害額請求を行えばよいのでしょうか?法律上、このような場合には、生前贈与によって遺留分を侵害しているAよりも、相続によって遺留分を侵害している長男が優先的に遺留分侵害額を負担する旨定められています。

したがって、妻と二男は、長男に対して、妻は650万円を、二男は325万円を請求できることとなります。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

本コラムは、典型的な事例をもとに解説いたしましたが、現実のケースではもっと複雑なことが往々にしてございますので、このコラムを読んだだけでは、わからない点もあるかと思います。
もし以下のような点でお悩みの際は、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

  • ・そもそも自分は遺留分を侵害されているの?
  • ・自分のケースだと、誰にいくら請求できるの?
  • ・遺留分侵害額請求の意思表示ってどうやればいいの?

まとめ

遺留分は、民法において法定相続人に保証された相続分に対する最低限の権利です。
ただ、上記の事例でお伝えしたように、遺留分の計算方法はなかなか難しく、また誰に対して、いくら遺留分侵害額を請求できるかというのは法律的な知識がないとわかりません。

また、1年という短い期間制限がある点にも要注意です。
自分の遺留分が侵害されているかどうか、侵害されているとしたら、誰に対していくら請求できるのかというのは、ご自身で調査してみることも重要ですが、お悩みの場合には専門家である弁護士の活用をご検討ください。

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