コラム

相続放棄で要らない土地を手放すことはできる?

相続放棄で要らない土地を手放すことはできる?

要らない土地を相続放棄することはできますが、土地だけを相続放棄することはできません。
また、令和3年4月21日に新しく成立し4月28日に公布された相続土地国庫帰属法を活用する方法もありますが、管理費用がかかるデメリットがあります。
相続で要らない土地を手放す方法や、相続土地国庫帰属法について詳しく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。

相続で要らない土地を手放すためには

「遺産相続」というと、価値のあるものの承継をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、「相続」とは、亡くなった人の持っていた権利義務全般を承継することをいいます。

そのため、遺産の中にはもらっても嬉しくないものや、扱いに困ってしまうものが含まれている場合も少なくありません。

例えば、管理のできない遠方の土地などはその代表格といえるでしょう。

相続人のうちの誰かが今後その不動産を活用する予定があるような場合には問題はないかと思います。
しかし、相続人の誰もが、その不動産を欲しくないという場合もあり得ます。

では、相続人の誰も欲しがらない土地を相続しそうになった場合、その土地を手放すことはできるのでしょうか?
まずは、そのような不要な土地を手放す方法について、いくつかご紹介いたします。

近隣の人にもらってもらう

まず考えられる方法としては、相続した土地の近隣の土地を持っている人に、その土地を買い取ってもらうか、無料でもらってもらうことです。
不便な場所にある土地を第三者に買ってもらうことは容易ではありません。ですが、その土地に隣接する土地を持っている人であれば、可能性はあるといえます。

そのため、まずは近隣の土地を持っている人に打診してみることが、不要な土地を手放す方法の一つといえるでしょう。

市町村などに寄付をする

次に考えられるのは、その土地が所在する市区町村に寄付することです。
しかし、これはあくまで可能性の話で、実現する可能性は低いです。
なぜなら、いくら寄付すると申し出たところで、市区町村に受け取る義務が生じるわけではなく、市区町村も管理できない不動産を抱えたくないからです。
そのため、寄付をすると申し出たところで、市区町村が申し出を受ける可能性はきわめて低いです。
可能性がまったくないわけではありませんので、念のため問い合わせてみてもよいでしょう。
なお、被相続人が遺言書を遺し、その遺言書で市町村に遺贈(寄付)するとした場合も同様に、市町村から断られる可能性があります。なぜなら、遺贈は放棄することができるからです。

相続放棄をする

次に考えられる方法としては、相続放棄することです。
相続放棄については、この後に詳しく解説していきます。

新しくできた「相続土地国庫帰属法」を活用する

最後に、令和3年4月21日に新しく成立し、4月28日に公布された「相続土地国庫帰属法」を活用する方法があります。
この法律は、その名のとおり、相続でもらった土地を、条件を満たすことで国庫に帰属させることができる法律で、公布後2年以内である令和5年4月28日までに施行される予定です。

詳細については、この後に解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは

ここからは、相続放棄について解説します。

相続放棄をするとどうなる?

相続放棄を検討する際には、その効果について正しく知っておきましょう。

相続放棄をすると、その人は始めから相続人ではなかったとみなされることになります。
そのため、相続放棄をした人は、仮に被相続人(=亡くなった人)に借金があれば、その借金も引き継がずに済みます。その一方で、預金や不動産などのプラスとなる財産も一切相続することはできません。

また、遺産の中から一部の財産だけを選んで放棄するようなことはできません。すべての財産を放棄しなければなりません。
例えば、「この土地だけは放棄したいけれど、預貯金は相続したい」ということは認められないのです。

相続放棄をした場合は、相続の権利は一切なくなるのだということを知っておいてください。

相続放棄はいつまでに行うべき?

では、相続放棄はいつまでに行うべきでしょうか?
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にすべきと法律で決められています。

この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められません。
そのため、相続放棄を検討する場合には、相続が起きたことを知ってからすみやかに、専門家に相談するなどして、期限に間に合うよう手続きに取り掛かりましょう。

相続放棄の注意点

相続放棄を検討する際、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?
相続放棄の主な注意点を4点お伝えします。

プラスの財産も何も相続できなくなる

相続放棄するとすべての財産について相続する権利がなくなることには注意が必要です。

例えば、「いらない土地だけを放棄して預貯金はもらう」ということはできません。
不要な財産を選択して放棄ができるわけではない点は、相続放棄を検討する前によく理解しておいてください。

他の親族に相続の権利がうつることがある

相続放棄をすると、元々相続人になるはずではなかった人が相続人になることがある点に、

注意が必要です。
例えば、配偶者と長男、二男の3人が相続人だった場合、長男と次男が相続放棄をしたとすると、被相続人の両親や兄弟姉妹など、後順位の相続人が繰り上り、配偶者と一緒に相続人となります。

両親や兄弟姉妹からすれば、本来関係なかったはずの相続が突然降りかかってくるわけですから、トラブルへと発展してしまうこともあります。

このように、相続放棄の結果、相続には関係がなかったはずの人が、後から相続人になる場合があることもよく理解をした上で、相続放棄をするようにしてください。
場合によっては、事前に後順位の相続人にきちんと話をした上で、相続放棄を行うべきでしょう。

期限が短い

前述のとおり、相続放棄には、相続があったことを知ってから3ヶ月以内という期限があります。
相続が起きた後は、ただでさえバタバタとしてしまうものです。そんな中で相続放棄をするためには、必要書類の準備や財産の調査をしたりで、3ヶ月はあっという間に経ってしまいます。

相続放棄を検討する場合には、相続が起きたらできる限り早く動き始めるようにしましょう。
もし、被相続人の財産の調査に時間がかかるようであれば、あらかじめ家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることにより、期限を伸長してもらうことが可能です。

他の財産を処分すると放棄が認められなくなる

3ヶ月という期限の前であったとしても、被相続人の財産の処分など、相続を「単純承認」したとみなされる行為をしてしまうと、もはや相続放棄が認められなくなってしまう点にも注意が必要です。

例えば、被相続人の古い車を売却したり、定期預金を解約して普通預金にしたりすると、相続放棄ができなくなってしまう場合があります。

そのため、相続放棄を検討している場合は、被相続人の財産を処分することのないように注意してください。

「特に財産的な価値がないものだからよいだろう」などと勝手に判断して処分しまうと、それが原因で相続放棄ができなくなることにもなりかねません。
判断に迷った場合は、事前に管轄の家庭裁判所か弁護士へ相談することをお勧めします。

「相続土地国庫帰属法」で要らない土地が放棄できる?

「相続土地国庫帰属法」で要らない土地が放棄できる?

続いて、令和5年4月28日までにまでに施行される予定の「相続土地国庫帰属法」について詳しく解説していきましょう。

不要な土地の放棄が可能

令和3年4月21日、民法と不動産登記法の改正法が成立しました。
この背景には、近年社会的に大きな問題となっている「所有者不明土地」の問題があります。
所有者不明土地とは、相続が起きた後、名義変更をしないまま放置された結果、所有者が不明となってしまった土地のことです。

なぜこの所有者不明土地が問題なのでしょうか。
それは、所有者がわからない土地は、それを利用しようと誰かが考えたときに、所有者がわからないために誰に許可を取ればよいのかわからず、結果として使いようのない土地になってしまうためです。

そこで、この所有者不明土地の問題に対応するため、民法や不動産登記法などが改正されました。

不動産登記法の改正により、相続発生後3年以内の相続登記が義務付けられました。

そして、この相続登記の義務化と併せて、相続財産の中で要らない土地を国庫に帰属させることができる、相続土地国庫帰属法(相続などにより取得した)が成立しました。
相続登記の義務化と表裏一体となる制度として、相続した土地の放棄を認めることとしたのです。

放棄するには管理費の支払いが必要

相続土地国庫帰属法では、土地の放棄が無条件で認められるわけではありません。
土地の所有権を放棄するには、負担金の支払いが条件の一つとなっているのです。

土地の放棄に必要な負担金は、審査手数料の他、土地の性質に応じた標準的な管理費用を基に算出した10年分の土地管理費相当額とされています。
その費用の目安は、法務省が公表している資料によれば、「粗放的な管理で足りる原野は約20万円、市街地の宅地(200㎡)は約80万円」となるようです。

「相続土地国庫帰属法」でも放棄できない土地とは

相続土地国庫帰属法によっても、放棄が認められない土地もあります。
次のような土地はこの法律による放棄はできないことを知っておくとよいでしょう。

建物が建っている土地

建物や、通常の管理または処分を阻害するような問題がある土地については、相続土地国庫帰属法による放棄はできません。
建物や工作物が土地の上にある場合には、あらかじめそれらを撤去した上で国庫帰属を申し入れることとなりそうです。

土壌汚染などがある土地

土壌汚染や埋設物がある土地や崖がある土地についても、この法律による放棄は認められていません。

担保権などが設定されている土地

抵当権など担保が付されている土地も、この法律の対象外です。
この法律の利用を希望する場合には、あらかじめ担保を外してから申し入れる必要があります。

通路など他人によって使用される土地

通路など、他人によって使用される土地も、この法律を使った放棄はできません。
例えば、奥まった土地に別の人が住んでおり、奥まった土地の住人が公道へ出るためにその土地を通行しなければならないような場合が考えられます。

争いのある土地

権利関係に争いがある土地についても、この法律の利用はできません。
例えば、隣地との境界についての争いがある場合などが、その代表例といえます。

まとめ

相続土地国庫帰属法が新たに成立したものの、その利用には要件もあり、また負担金の支払いも必要となります。
一方で、相続放棄をする場合、他の財産もすべて引き継ぐことができません。
かといって、近隣の土地所有者や市町村が受け取ってくれるとも限りません。

このように、不要な土地を放棄するのは簡単なことではありません。
そのため、家族が今後使わないと考えられる土地を家族に遺す場合には、あらかじめ権利関係を整理しておいたりするなど、対策をしておく必要があるでしょう。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・子どもや親族に相続させたくない土地をお持ちの方は、生前に対策をしておくことを強くお勧めいたします。
仮に、相続したくない土地を相続することになった場合、熟慮期間内に相続放棄をするか、将来的には国庫に帰属させるなどの方法を検討することが必要です。
相続発生前、後、いずれの場合であっても、相続させたくない、したくない土地をお持ちの方は一度ご相談ください。弁護士が適切なアドバイスをさせていただきます。

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