コラム

解雇予告とは?不要なケースや解雇予告手当を弁護士がわかりやすく解説

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解雇予告とは、解雇対象の従業員に対して、解雇を予告することです。
解雇予告をする際には、解雇予告通知を交付することが多いでしょう。

では、解雇予告はどのような際に必要となり、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
今回は、解雇予告について弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。大阪市立大学法学部卒業、大阪市立大学法科大学院法曹養成専攻修了(法務博士)。企業法務に注力し、スタートアップや新規事業の立ち上げにおいて法律上何が問題となりうるかの検証・法的アドバイスの提供など、企業のサポートに精力的に取り組む。また、労働問題(使用者側)も取り扱うほか、不動産法務を軸とした相続案件などにも強い意欲を有する。
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解雇予告とは

解雇予告とは、従業員を即時に解雇するのではなく、たとえば「あなたを次の3月末で解雇します」などというように、あらかじめ解雇日を伝えることです。
解雇などについて定めている労働基準法では、従業員を解雇する際には、原則として遅くとも30日前までには解雇予告をしなければならないこととされています(労働基準法20条)。

解雇予告をする際には、会社が確かにその日において解雇予告をしたという証拠を残すため、解雇予告通知書を交付することが一般的です。
解雇予告通知書には、解雇予告をした日のほか、解雇日や解雇理由、解雇をする旨などを明記します。

解雇予告通知書を交付する際には、確かに解雇予告通知書を渡したとの記録を残すため、解雇予告の対象としている従業員から受領の署名や捺印をもらっておくとよいでしょう。

解雇予告が不要となるケース

解雇予告は、どのような場合でも必要となるわけではありません。
次の場合には、例外的に解雇予告が不要とされています。

解雇予告除外認定を受けた場合

解雇予告除外認定とは、解雇予告をしないことについて、労働基準監督署長から受ける認定のことです。
その解雇について解雇予告除外認定を受けた場合には、解雇予告をすることなく解雇することができます。

ただし、申請さえすれば必ず認定されるわけではありません。
解雇予告除外認定を受けられるケースは、次のいずれかに該当する場合のみです(労働基準法20条)。※1

  1. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能な場合
  2. 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

解雇予告除外認定を受けるハードルは、決して低いものではありません。
そのため、解雇予告除外認定を受けたい場合には、あらかじめ弁護士や管轄の労働基準監督署へ相談しておくとよいでしょう。

一定の試用期間中などの解雇である場合

次の場合には、解雇予告の規定は適用除外であり、解雇予告は必要ないとされています(労働基準法21条)。

  1. 日日雇い入れられる者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
  2. 2か月以内の期間を定めて使用される者(ただし、所定の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
  3. 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(ただし、所定の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
  4. 試用期間中の者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

なお、カッコ書きにあるように、たとえば試用期間中や日雇いであるからといって、すべてのケースで解雇予告が適用除外になるわけではりません。
「試用期間中ならいつでも解雇予告は不要である」などと誤解しないよう注意しましょう。

解雇予告にともない解雇予告手当が必要となるケース

解雇予告をする際に、解雇予告手当の支払いが必要となるケースがあります。
そのケースとは、次の場合です。

解雇予告手当の支払いが必要となる場合

先ほど紹介した解雇予告が不要とされるケースを除き、解雇予告は解雇日の30日前までに行わなければなりません。
しかし、事情によっては、それほど前もって解雇予告ができない場合もあるでしょう。

解雇予告日から解雇日までの期間が30日に満たない場合には、解雇予告手当の支払いが必要となります。

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当は、どのように計算すればよいのでしょうか?
基本の計算式は、次のとおりです。

  • 解雇予告手当の額=平均賃金×30日

たとえば、1日あたりの平均賃金が12,000円である従業員を即日解雇した場合の解雇予告手当の額は、次のとおりです。

  • 12,000円×30日=360,000円

ただし、即日解雇ではないものの、解雇予告日から解雇日までの日数が30日に満たない場合には、次の式で算定します。

  • 解雇予告手当の額=平均賃金×(30日-解雇予告日から解雇日までの日数)

たとえば、1日あたりの平均賃金が12,000円である従業員を解雇日の10日前に解雇予告をした場合の解雇予告手当の額は、次のようになります。

  • 12,000円×(30日-10日)=240,000円

原則として1日あたり平均賃金の30日分に相当する額の支払いが必要となり、30日に満たないものの即時解雇ではない場合には、30日に満たない日数分の平均賃金の支払いが必要になるということです。

平均賃金とは

解雇予告手当の計算に使用する「平均賃金」は、どのように算定すればよいのでしょうか?※2
平均賃金とは、算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(出勤日数ではありません)で除した金額を指します(労働基準法12条1項)。賃金の総額は、時間外労働割増賃金や各種手当を含む賃金のすべてが含まれ、臨時に支払われた賃金や手当、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は含まれません。

たとえば、算定すべき事由の発生以前3か月の歴日数(その企業における給与計算対象期間)が次のとおりであるとします。

  • 4月分(3月21日~4月20日):31日
  • 5月分(4月21日~5月20日):30日
  • 6月分(5月21日~6月20日):31日

また、対象の従業員の月給は250,000円であり、別途通勤手当として月に10,000円(月給と合計すると260,000円)が支給されているものとしましょう。

この場合における1日あたりの平均賃金は、次のように計算します。

  1. この期間の賃金総額:260,000円+260,000円+260,000円=780,000円
  2. この期間の歴日数:30日+31日+31日=92日
  3. 1日あたりの平均賃金:780,000円÷92日=8,478.260・・・→(銭未満を切捨)8,478.26円

月給制である場合には、この平均賃金を用いて解雇予告手当を計算します。
日給制、時間給制等の場合には、最低保障額があり、計算式は次のとおりです(労働基準法12条1項1号)。

  • 最低保障額=算定期間中に支払われた賃金総額÷算定期間中に実際に労働した日数×60%

解雇予告をせずに解雇したらどうなる?

解雇予告が必要なケースであるにもかかわらず、30日前までに解雇予告をせず、かつ解雇予告手当も支払うことなく従業員を解雇したら、どうなるのでしょうか?

この場合に対象となり得るペナルティは次のとおりです。

付加金が請求される可能性がある

解雇予告手当の支払いが必要であるにもかかわらず支払わなかった場合には、本来支払うべきであった解雇予告手当に加えて、付加金を支払うよう裁判所から命じられる可能性があります(労働基準法114条)。

付加金の額は、本来支払うべきであった解雇予告手当の額と同一です。
つまり、本来支払うべきであった解雇予告手当の額の倍額を、従業員に対して支払う必要が生じる可能性があるということです。

罰則の対象となる可能性がある

解雇予告の規定に違反をした場合には、労働基準法の規定により罰則の対象となります(労働基準法119条)。
この場合の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

解雇予告通知をする際のポイント

従業員にとって、解雇は明日からの生活の糧を失う可能性のある非常に重要な事態です。
そのため、状況によっては、解雇の無効などが争われるかもしれません。

この点を踏まえて、解雇予告通知をする際には、次の点に注意しましょう。

あらかじめ弁護士へ相談する

日本の法令では、従業員の権利が非常に強く守られており、合理的な理由なく解雇をするようなことはできません。

また、たとえ従業員に非があり就業規則に懲戒解雇ができると記載してある場合であっても、その非の程度が小さければ、不当解雇であり無効と判断される可能性もあるでしょう。

そして、解雇日の30日前までに解雇予告通知をしたり、解雇予告手当を支払ったりしたからといって、その解雇が当然に有効となるわけではありません。

労働基準法の規定どおりに解雇予告をしたとしても、従業員が解雇の無効を主張して訴訟を提起する可能性もあるでしょう。
そのため、解雇予告をするにあたっては、あらかじめ労使問題にくわしい弁護士にご相談ください。
弁護士に相談しておくことで、解雇の有効性についてあらかじめ見通しを立てることができるほか、万が一訴訟となった場合に備えた証拠の収集や保全などについてのアドバイスを受けることが可能となります。

また、状況によっては従業員との面談に同席してもらうことができるほか、仮に訴訟を提起されたとしても落ち着いて対応することが可能となるでしょう。

解雇理由を明確にする

解雇予告をするにあたっては、解雇理由を明確にしたうえで、解雇予告通知書に記載しましょう。
理由もわからないままに解雇されてしまっては、従業員側の納得感が得られず、解雇無効を主張される可能性が高いためです。

また、先ほども解説したように、解雇をするためには法令や就業規則の根拠が必要とされます。
そのため、解雇理由と併せて、根拠となる就業規則の条文なども記載しておくとよいでしょう。

なお、解雇予告時に解雇理由を告げなかったとしても、従業員側から解雇理由などについての証明書が請求された場合には、使用者である会社などは遅滞なくこれを交付しなければならないとされています(労働基準法22条)。
そのため、証明書の交付請求などの手間を減らすという観点からも、解雇予告通知書に解雇理由を記載しておいた方がスムーズです。

必要な解雇予告手当を支払う

先ほど解説したように、解雇予告をした日から解雇日までの期間が30日に満たない場合には、原則として解雇予告手当の支払いが必要です。

解雇予告手当の支払いが必要であるにもかかわらず支払わない場合には、付加金の支払い命令や罰則の対象となる可能性があります。
また、解雇をされた従業員に不信感を抱かせてしまうことで、訴訟を提起される可能性を高めてしまうことにもなりかねません。

そのため、解雇予告手当の支払いが必要なケースでは、法定された金額をきちんと支払ったうえで、支払いの証拠を残しておきましょう。

解雇予告通知の証拠を残す

解雇予告をしたら、必ずその証拠を残しておきましょう。

解雇日30日前までに解雇予告をした場合には、解雇予告手当の支払いは必要ありません。
しかし、解雇予告をしたことの証拠がなければ、解雇予告をされていないなどと主張されるおそれがあるためです。

具体的には、解雇予告通知書の会社控えに、受領した旨の署名や捺印をもらっておくことなどが考えられます。
また、自宅待機になっている場合など郵送で解雇予告をする場合には、配達証明付きの内容証明郵便で送るとよいでしょう。

内容証明郵便とは、いついかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明する制度です。※3
内容証明郵便で送ることで、郵便を受け取っていないという主張や、郵便は受け取ったものの中味は違うものであったという主張などができなくなります。

まとめ

解雇予告とは、解雇日の前に従業員に対して解雇を予告することです。
原則として解雇日の30日前までにすべきとされているものの、適正な解雇予告手当を支払うことで、それ以後の予告も認められます。

ただし、解雇日30日前に解雇予告をしたり、解雇予告手当を支払ったりすることで、解雇が当然に有効となるわけではありません。
従業員が解雇に納得していない場合には、不当解雇を主張して訴訟が提起される可能性もあるでしょう。
そのため、解雇予告をする前に弁護士にご相談ください。

Authense法律事務所には労使問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、解雇にまつわるトラブルについても数多くの実績があります。
従業員の解雇についてお悩みの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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