コラム
公開 2021.07.13 更新 2024.08.07

改正薬機法(2021.8施行)の全体像について

改正薬機法(2021.8施行)の全体像について

2020年9月1日より改正薬機法(2019年12月4日公布)の施行が開始されましたが、その一部については2021年8月1日から施行が始まるものもあります。
今回は2021年8月1日から施行される改正薬機法の内容について解説いたします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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はじめに

2019年に薬機法(正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。)の改正法案が可決され、同年12月4日に公布されるに至りました。
今回の改正の概要と施行期日をまとめたものが以下の表です。
以下の表のうち、2021年8月1日から施行される(3)、(5)、(8)、(10)、(11)の概要について解説します。

改正の概要 施行期日
医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善 (1) 「先駆け審査指定制度」の法制化
特定用途医薬品等への優先審査等
2020年9月1日
(2) 「条件付き早期承認制度」の法制化 2020年9月1日
(3) 医薬品等の承認事項の変更手続の迅速化 2020年9月1日
※医薬品及び再生医療等製品については2021年8月1日に施行
(4) 医療機器の変更計画確認制度の導入 2020年9月1日
(5) 添付文書の電子的な方法による提供の原則化 2021年8月1日
(6) 包装等へのバーコード等の表示の義務付け 2022年12月1日
住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し (7) ①薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務と②薬局薬剤師が、患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務の法制化 2020年9月1日
(8) 特定の機能を有する薬局の認定制度の導入 2021年8月1日
(9) 服薬指導について、対面義務の例外として、一定のルールの下で、テレビ電話等による服薬指導を規定 2020年9月1日
信頼確保のための法令遵守体制等の整備 (10) 許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け 2021年8月1日
(11) 虚偽・誇大広告に対する課徴金制度の創設 2021年8月1日
(12) 国内未承認の医薬品等の輸入に係る確認制度(薬監証明制度)の法制化
麻薬取締官等による捜査対象化
2020年9月1日
(13) 医薬品として用いる覚醒剤原料について、医薬品として用いる麻薬と同様、自己の治療目的の携行輸入等の許可制度を導入 2020年4月1日
その他 (14) 医薬品等の安全性の確保や危害の発生防止等に関する施策の実施状況を評価・監視する医薬品等行政評価・監視委員会の設置 2020年9月1日
(15) 科学技術の発展等を踏まえた採血の制限の緩和 2020年9月1日

医薬品等の承認事項の変更手続の迅速化

医薬品等の製造販売業者は、医薬品等を製造販売するにあたり、その品質・有効性・安全性に関する事項について承認を受けなければならないとされています。
そして、承認を受けた事項の一部に変更が生じたときは、その変更が軽微であれば「届出」を行うだけで足りますが、その変更が軽微でない場合には、改めて「承認」を受ける必要があるとされてきました。
しかし、「承認」を受けるまでには相応の期間を要しますし、製造販売業者の手続的な負担も少なくありません。

そこで今回の改正によって、軽微でない変更が生じる場合であっても、あらかじめ変更計画について確認を受けていれば、「事前届出」によって承認事項を変更することができるようになりました。

添付文書の電子的な方法による提供の原則化

医薬品等の用法容量その他使用上の注意等の情報は、これまで「紙媒体」によって提供されてきました(これを「添付文書」といいます。)。
しかし、製造販売後に収集されたデータに基づいて、添付文書の改定が行われることも少なくなく、医療現場において最新の添付文書が参照されないおそれがあるなどの問題がありました。

そこで、今回の改正によって、添付文書情報を電子的な方法によって提供することとされました。
具体的には、製造販売業者は、医薬品等の用法容量その他使用上の注意等の情報を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページ上に公表し、医薬品等の容器等にそのページにアクセスするための「GS1コード(バーコード)」を付すことになります。
なお、一般用医薬品等の消費者が直接購入する製品については、引き続き、紙の添付文書が同梱されることになります。

特定の機能を有する薬局の認定制度の導入

今回の改正で、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の認定制度が新設されました。
「地域連携薬局」とは、地域の医療機関と連携して、地域の患者の個々の状況に応じた服薬指導を行うことができる薬局を指します。
「専門医療機関連携薬局」とは、医療機関と連携して、がん等の薬物療法を受けている患者に対し、高度な薬学管理や調剤を行うことができる薬局を指します。
これらの認定を受けた薬局は、「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」との名称を用いることができるようになるため、患者は薬局の名称を参考に、より自分に適した薬局を選択することができるようになります。

許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け

薬機法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保し、ひいては国民の生命や健康といった極めて重要な法益を保護することを目的としています。
しかし、一部の製造販売業者等の役員が、薬機法に違反している状態を認識しながら、それを漫然と放置するなどの悪質な事例が見受けられたため、今回の改正で、製造販売業者、製造業者、薬局、販売業者等々・・・薬機法上のすべての許可業者を対象に、法令遵守体制の整備の義務付け等が行われました。

法令遵守体制の整備に向けた具体的な取り組み内容については、各許可業者の業務内容等によって異なると考えられますが、製造販売業者および製造業者については、厚生労働省が、ガイドライン(「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン」)を策定していますので、これを参考に整備を整えていく必要があるでしょう。

虚偽・誇大広告に対する課徴金制度の創設

従来、医薬品等の虚偽・誇大広告に対する罰則は、最大でも200万円の罰金にとどまっていました。
業者が虚偽・誇大広告により得られる莫大な収益に鑑みれば、200万円の罰金刑では十分な抑止効果を発揮できているとは到底言い難く、事実、虚偽・誇大広告は後を絶えない状況にありました。

今回の改正によって、虚偽・誇大広告を行って医薬品等を販売することで得た経済的利益を徴収することができる課徴金納付命令が導入されたため、より強力な抑止効果が期待されています。

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まとめ

以上が、2021年8月1日から施行が始まる改正薬機法の概要です。
ご覧のとおり様々な改正が行われますが、特に「許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け」などは、全ての許可業者を対象とする改正のため、インパクトが大きい反面、具体的な取り組み内容についてはまだまだ判然としない部分も多く残されており、対応に苦慮されている企業も少なくないと思われます。

弊所ではこれまで多くの企業の法令遵守体制の整備に取り組んでまいりましたので、その経験を活かしたアドバイスが可能です。
法令遵守体制の取り組みにお困りの際は、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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