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デジタル化に伴って生じる法制度の変革の動向

デジタル化に伴って生じる法制度の変革の動向

デジタル化で業務やビジネスを変革させる「DX」や「リーガルテック」は、ますます身近なものとなりつつあります。脱ハンコやAI契約書レビューを含むリーガルテック、DXの最新事情や、DXを導入する際に利用できる法制度や税制などについて解説します。

DXとリーガルテックの概要

まずは、DXとリーガルテックの概要や定義について解説します。

DXとは

DXは、Digital Transformation (デジタルトランスフォーメーション)の略称です。
DXとは、一般的に、デジタル技術を用いた業務やビジネスの変革を意味します。

では、もう少し詳しく見ていきましょう。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21によれば、DXということばは元々2004年にウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が提唱したことが始まりとされています。※1
このときの定義は、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」であったとされています。

その後、2018年に経済産業省が設置しているデジタルトランスフォーメーションに向けた研究が会策定した「DXレポート」では、DXの定義として、IT専門調査会社である「IDC Japan」が行った定義が引用されました。※2

その定義は、次の通りです。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

つまり、DXはデジタル技術を用いた単なる業務改善や効率化を指すのではなく、変化の激しい時代の中で、新たな価値を生み出すための変革を指すのです。

リーガルテックとは

リーガルテックとは、DXの中でも、特に法務分野の変革を指す言葉です。
リーガルテックの具体的な内容について、経済産業省が2019年5月に公表した事務局資料が参考となります。※3

この中で、

昨今注目されている技術として、AIによる契約書内容の診断・判別、登記や電子署名と言った技術があるが、大別すると以下のような区分に分けられる。

として、「契約書関連」「調査・分析」「登記・電子署名」「紛争解決」の4つが挙げられています。

その上で、日本では、「契約書の作成・締結・管理」がリーガルテックの領域で特に注目されているとしています。

リーガルテックと脱ハンコの流れ

リーガルテックは、脱ハンコの流れの中で、ますます拡がりをみせていくものと思われます。

ここでは、脱ハンコとリーガルテックについて詳しく見ていきましょう。

脱ハンコへの流れ

菅政権発足後の2020年9月、河野行政・規制改革相が全府省庁に対し、行政手続きで押印を原則使用しないよう要請する事務連絡を出したことで、行政手続きから押印を廃止していく脱ハンコの流れが始まりました。※4
これと合わせて、民間の契約書などについても、脱ハンコの流れが強まっています。
これにより、これまで捺印が必須とされてきた車庫証明などの申請につき、既に先行して押印が廃止されました。

また、2021年4月6日には、行政手続きの押印廃止を盛った「デジタル社会形成関係整備法案」が衆議院で可決されています。※5
これにより、押印が必要な行政手続きのうち、商業・法人登記や不動産登記の申請といった実印を求める118の行政手続きを除く、およそ1万5,000の手続きの押印が廃止される予定です。
押印が廃止される行政手続きは全体の99%にものぼり、脱ハンコへの流れはいっそう加速してくことでしょう。

脱ハンコへ向けたリーガルテックのサービス例

脱ハンコの流れを受けて、企業の脱ハンコ化を支援するリーガルテックサービスも登場してきました。
脱ハンコにおいて最も重要な技術に、電子署名があります。

従来、契約書などの重要書類については、会社実印を捺印するなどしてその信頼性を担保してきました。
しかし、脱ハンコと電子化の流れにより、データ上の契約書に署名を付すことで、紙への押印に代わる機会が今後ますます増加していくでしょう。

とはいえ、当然ですが、単にデータ上の契約書にハンコを模したスタンプを押しただけでは、その信頼性が担保されません。
また、契約書自体が押印後に改ざんされてしまう可能性があることも大きなリスクです。

そこで重要となるのが、そのデータ上に施した署名が本当にその本人や法人内で権限のある担当者が行ったものだということを証明する技術や、署名後に書類が改ざんされないための技術です。
このような技術を用い、脱ハンコへ向けたサービスを提供するリーガルテック企業としては、次のようなものがあります。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社は、企業や自治体向けに電子認証や電子契約などのネットビジネスを展開している企業です。
電子認証局が発行する電子証明書を用いて、なりすましや情報の改ざんを防止する技術である「電子印鑑GMOサイン」を提供しています。※6

電子印鑑GMOサインの導入企業は2021年2月12日には16万社を超え、シェア日本一となりました。

弁護士ドットコム株式会社

弁護士ドットコムは、弁護士向け営業支援のWebサービスや、一般会員向けの法律・税務相談サイトを運営している企業です。※7、8
この企業が運営する、「クラウドサイン」が、脱ハンコの流れの中で注目されています。※9

「クラウドサイン」とは電子署名の技術を提供するほか、電子署名が付された書類の保管、管理も行う、クラウド型の電子契約サービスです。
電子署名の方式につき、電子印鑑GMOサインなどのサービスは「当事者型」と呼ばれ、電子署名の申請から発行までに1~2日かかる一方で、クラウドサインなどの方式は「立会人型」と呼ばれており、最短で数分程度で済む点が特徴です。

クラウドサインの導入社数は1年で2倍に伸びており、弁護士ドットコム株式会社は、東洋経済が「会社四季報」2021年2集春号のデータから算出した「優良企業50」にも選定されました。※10

シヤチハタ株式会社

シヤチハタ株式会社は、名古屋市に本社を置く印鑑メーカーです。※11
インクが内蔵されたスタンプ印全般を「シャチハタ」と呼ぶこともあるように、印鑑メーカーとして広く知られています。

そのシャチハタが、新たにクラウド型電子決裁サービス「シヤチハタクラウドビジネス」の提供を始めると発表しました。
新サービスでは、電子署名やタイムスタンプの機能を追加し、書類が本物であることや本人であることの確認を強化しています。

リーガルテックと契約書

リーガルテックのもう一つの大きな流れとして、AIを活用した契約書レビューがあります。
では、契約書レビューにおけるリーガルテックの具体例を紹介しましょう。

契約書レビューとは

契約書レビューとは、契約書の内容を精査し、リスクを確認することをいいます。

従来、契約書のレビューは、弁護士や企業の法務部員が知識と経験を駆使して1通1通確認していました。
これには、手間も時間も非常に多くかかり非効率な上、レビュー者の知識や記憶に依存するため、成果にバラつきがありました。

とはいえ、通常の取引で用いる契約書であれば、記載する条項や注意すべきポイントは、ある程度定型化が可能です。
これをAIに学習させ、契約書レビューの効率化を図る流れが加速しているのです。

契約書とリーガルテックのサービス例

それでは、契約書レビューに関するリーガルテックを具体的に紹介しましょう。

株式会社LegalForce

株式会社LegalForceは、人工知能(AI)を使った契約書点検システムを展開している企業です。※12、13
同社の提供するサービス「LegalForce」は、既に800を超える企業の法務部や法律事務所で導入されています。※14

株式会社LegalForceは、CB Insights社が世界で最も有望なAIスタートアップ企業100社を年に一度発表する「AI 100」の、2021年版に選出されました。

2021年2月には、第三者割当増資などで30億円を調達したことでも話題となっています。※15

AI-CON

AI-CONはGVA TECH株式会社が運営する、NDA(秘密保持契約書)のみに特化したAI契約書レビューサービスです。※16
従来は、その他の契約書についても対象としていましたが、今後はNDAに特化のうえ、完全無償化をすると公表しました。

そのうえで、NDA以外の類型の契約書レビューも行うことができる有料の「AI-CON Pro」を新たにリリースしています。

生産性向上特措法はDXにも関係する?

「生産性向上特別措置法」について、聞いたことがあるでしょうか?
これは、平成30年6月6日に施行された法律で、中小企業者が保有している老朽化した機械設備を生産性の高い先端設備へと一新させることなどにより、労働生産性の向上を図ることを目的する法律です。※17
この法律に基づき、「生産性向上特別措置法による支援」が行われています。

企業がDXやリーガルテックサービスを導入するには、設備投資が必要となる場合が少なくありません。
実は、このDX化などへの投資も、この「生産性向上特別措置法による支援」の対象となり得るのです。

ここでは、2021年現在も適用を受けることが可能な特措法の概要について解説します。

延長された生産性向上特措法の概要

「生産性向上特別措置法による支援」とは、自治体の策定する「導入促進基本計画」に基づき、「先端設備等導入計画」の認定を受けた中小企業や小規模事業者に対して、自治体の判断により固定資産税の減免を受けることができる制度です。※18、19

この支援の期限は、もともと、2021年3月末とされていました。
しかし、これが2年間延長されたうえ、適用対象となる資産が追加されています。

対象となる事業者

本支援の対象となるのは、「中小企業者等」です。※19
ここでいう中小企業者等とは、次のような事業者のことを指します。

  • 個人の場合:常時使用する従業員の数が1,000人以下であること
  • 法人の場合:資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち従業員数1,000人以下の法人(大企業の子会社除く)

対象となる設備

この支援の対象設備は、先端設備などに該当するもののうち、300万円以上をかけて導入をした下記のものです。
ただし、投資実行の前に市区町村に対して「先端設備等導入計画」を申請し、認定を受ける必要があります。

  • 1.機械装置・器具備品などの償却資産
  • 2.事業用家屋及び構築物(広告塔など)

※2のうち、事業用家屋は、設備の取得価額の合計額が300万円以上の設備等とともに導入されたものであることが必要
※1の償却資産と2の構築物は、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するものであることが必要

令和3年新設のDX投資促進税制とは?

企業のDXを後押しするもう一つの制度として、令和3年度税制改正により、DX投資促進税制が新設されました。※20、21
これは、企業が一定のDX投資を行った際に、税額控除又は特別償却を認める税務上の制度です。
では、制度について詳しく見ていきましょう。

DX投資促進税制の概要

DX投資促進税制を受けるための前提として、まず部門や拠点ごとではない全社レベルのDXに向けた計画を立て、その計画を主務大臣に認定してもらう必要があります。

その計画の実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連の投資をした場合に、その投資により取得した資産に対し、税額控除又は特別償却を受けることが可能です。

税額控除は、グループ外の他法人ともデータ連携・共有するかどうかにより、その投資の5%又は3%、特別償却はその投資の30%とされています。

投資対象となる資産は、ソフトウェアや繰延資産、器具備品、機械装置です。
前述の生産性向上特措法とは異なり、建物や構築物は対象となりません。

また、対象となる投資には下限が定められており、その額は売上高比0.1%です。
なお、300億円を上回る投資をしたとしても、本制度の適用は、300億円が上限となります。

DX投資促進税制認定の要件

前述のとおり、DX投資促進税制を受けるには、主務大臣の認定を受けなければなりません。
この認定を受けるには、デジタル要件と企業変革要件の両方を満たす必要があります。

デジタル要件

デジタル要件としては、次の3つが挙げられています。

  • 1.データ連携・共有 (他の法人などが有するデータ又は事業者がセンサーなどを利用して新たに取得するデータと内部データとを合わせて連携すること)
  • 2.クラウド技術の活用
  • 3.情報処理推進機構が審査する 「DX認定」の取得(レガシー回避・サイバーセキュリティなどの確保)

企業変革要件

また、企業変革要件としては、次の2つが挙げられています。

  • 1.全社の意思決定に基づくものであること(取締役会などの決議文書添付など)
  • 2.一定以上の生産性向上などが見込まれること

まとめ

リーガルテックを含むDXの流れは、今後ますます加速していくと思われます。
DXは、単なるデジタル化による効率化ではなく、デジタル技術を用いた業務やビジネスの変革です。
DXを推進する措置法や税制もありますので、これを機に導入を検討してみても良いでしょう。

※こちらの記事は、2021年4月21日時点の情報に基づいています。

【参考文献】

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所

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