コラム

公開 2021.10.26 更新 2023.01.27

起業家や経営者は「婚前契約」を結んでおくべき?資産家の離婚から見るリスクヘッジ

起業家や経営者は「婚前契約」を結んでおくべき?資産家の離婚から見るリスクヘッジ

起業家や経営者が検討すべき婚前契約についてわかりやすく解説するとともに、近年登場した離婚テックを紹介します。2021年5月にビル・ゲイツ氏が離婚を発表しましたが、婚前契約を締結していなかったものの、離婚合意で資産の分割がされるようです。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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ビル・ゲイツ氏の離婚で巨額資産の行方が話題に

ビル・ゲイツ氏は、米マイクロソフト共同創業者ですが、世界長者番付の上位に常にその名が挙がることでも有名で、資産総額は1240億ドルともいわれています。
2021年5月、そのビル・ゲイツ氏が24年間連れ添ったメリンダ・ゲイツ氏と離婚をしたことが報道されました。

これにより注目されたのは、ビル・ゲイツ氏の巨額資産の行方です。※1

婚前契約は交わしていなかった

婚前契約とは、仮に離婚となった場合の財産分与の内容などについて、婚前に決めておく契約のことを指します。
アメリカでは締結することが少なくない婚前契約ですが、報道によるとビル・ゲイツ氏とメリンダ・ゲイツ氏はこの婚前契約を交わしていなかったようです。

離婚にあたり資産分割の合意書を作成した

離婚にあたり、ビル・ゲイツ夫妻は離婚合意書を作成したようです。
分割の割合や内容は現時点では公表されていないものの、今後はこの合意書を基として資産の分割がなされるものと思われます。

ビル・ゲイツ氏は無事に合意ができたようですが、仮に婚前契約もなく当事者間で離婚の合意もできなかった場合には、資産の半分近くが分与された可能性もありました。

経営者は検討すべき「婚前契約」とは?

婚前契約とは、結婚生活についてのルールや万が一離婚に至った場合の財産分与の内容などについて、パートナー間で婚前に締結しておく契約です。
日本ではあまり一般的ではなく、どちらかといえばアメリカなど欧米諸国で多く用いられている印象があるかもしれませんが、日本でも婚前契約を締結することはできます。

離婚により経営に影響を及ぼさないため、これから結婚を控えた経営者は、婚前契約の締結を検討すべきでしょう。

婚前契約は婚姻前に締結すべき

婚前契約を結ぶのであれば、婚姻届の提出前に締結する必要があります。
なぜなら、民法に「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」との規定があるためです。

こうした規定があることから、婚姻後の約束はたとえそれが書面になっていたとしても、いつでも一方的に取り消されてしまう可能性があります。
いざというときになって、一方的に契約を取り消されてしまうようでは、契約の意味がありません。

そのため、夫婦間での約束ごとを決めておきたいのであれば、夫婦となる前に契約を締結しておきましょう。

経営者が婚前契約の締結を検討すべき理由

婚前契約は、特に経営者であれば締結を検討すると良いでしょう。
その理由は次のとおりです。

離婚時の財産分与による経営へのダメージを防止できる

離婚時の財産分与とは、離婚をした者の一方が他方に対して婚姻期間中に形成した財産の分与を請求することができる制度です。

財産分与の金額や割合は、まず当事者間の合意が優先します。
当事者間で合意ができなければ裁判所が決めることになりますが、その場合には、夫婦共働きであっても一方が専業主夫(婦)であっても、婚姻期間中に形成された財産を2分の1ずつに分けるように命じられることが多いようです。※2

これは、仮に外部から収入を得ていたのが夫婦の一方のみであったとしても、それはもう一方の内助の功があったためであるとの考えによるものといえるでしょう。

しかし、たとえば財産の大半が自社の株式であり、婚姻後に会社を成長させたことで株価が上昇していたような場合に、その上昇した価額分についてまで均等な分与を求められてしまうと経営に支障きたしかねません。

こうした事態に備えて、あらかじめ婚前契約で財産分与の対象から自社株式は除外する旨などを定めておくことで、万が一離婚に至った場合であっても経営への打撃を避けることが可能です。

事前に夫婦の考え方を共有できる

離婚原因のトップは、性格の不一致によるものです。※3
恋人同士のときとは異なり、いざ婚姻をして夫婦となれば共同で乗り越えるべき局面も少なくなく、子が生まれれば協力すべき場面もさらに多くなります。
こうした際に性格や考え方の不一致が表面化し、修復できないほどにズレが大きくなってしまえば、離婚へ至ってしまうのです。

婚前契約には、離婚時の財産分与など金銭面に関することの他に、生活において守るべきルールや家事分担のルールなどについても定めることができます。
たとえば、次のような内容です。

  • 飲酒は最大週2回までとすること
  • 帰宅時間が遅くなる場合は、必ず連絡を入れること
  • 不貞が発覚した場合は、慰謝料として500万円を支払い、離婚の判断をすべて相手に委ねること

こうした生活面のルールすべてに法的な拘束力が生じるわけではありません。
しかし、婚前契約の作成にあたり、あらかじめしっかりと話し合いをしておくことで、婚姻前に考えのすり合わせや共有をすることが可能です。

婚姻後のトラブル対応の指針となる

長い結婚生活の中では、トラブルが生じてしまう場合もあるでしょう。
こうした際にも、あらかじめ婚前契約に定めておけば、解決の指針となります。

たとえば、婚前契約において「育児の負担が偏らないよう最大限の努力をする」と定めたとします。
それにもかかわらず、仕事の多忙を理由にほとんどすべての育児を妻が担っていることが原因で夫婦喧嘩となった場合、この指針に立ち返り、自らが負えそうな育児を検討するなどです。

経営にも迷った際に立ち返るべき経営指針が必要なように、婚前契約は夫婦間でトラブルになった際に立ち返る基本指針のような役割も担います。

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アメリカで登場している「離婚テック」とは?

離婚するには、労力や費用がかかる場合が少なくありません。
こうした労力や費用の負担を軽減するため、アメリカでは「離婚テック」と呼ばれるサービスが登場しています。※4

ここでは、近年注目されている離婚テックについて紹介します。
こうしたサービスは日本ではまだ見かけませんが、今後似たようなサービスが登場する可能性は十分に考えられるでしょう。

離婚協議を支援するサービス

シリコンバレー発のウィボース(Wevorce)がリリースした「プライベートジャッジ」は、裁判所に行かずとも離婚協議をおこなうことができるサービスです。
プライベートジャッジでは、夫婦がそれぞれウェブサイト上で親権や財産分与などの条件を提示し、弁護士が調整して両者が合意をすることで、裁判所に出向くことなく離婚が成立します。

また、プライバシーにかかわる情報が非公開である点も大きな特徴です。
円満な離婚をスピード解決することへの活用が見込まれています。

離婚後の家計のシミュレーションサービス

デトロイトのディボースAI(Divorce AI)が提供しているのは、離婚後の家計をAIでシミュレーションするサービスです。
子どもの養育費や分与する財産などの情報を入力することで、レポートを生成してくれます。

離婚後は家計の状況が大きく変動するため、あらかじめシミュレーションをすることで、事前の備えや離婚時の条件提示の検討などへ活用することが可能です。

まとめ

経営者の財産には自社株式が含まれていることが多く、財産分与の金額も大きくなりやすい傾向にあります。
離婚により経営にまで支障をきたしてしまわないためにも、これから結婚をする経営者は婚前契約の締結を検討すると良いでしょう。

婚前契約書の作成を検討している方は、ぜひAuthense法律事務所へご相談ください。

オーセンスの弁護士がお役に立てること

離婚をする際には、離婚後の紛争を避けるため、様々な事項を取り決めておく必要がありますが、財産関係の整理として、財産分与は、原則として婚姻期間中に形成した夫婦の財産を折半するという処理になるため、離婚時に大きな問題となります。

万が一の際、財産分与において生じうるリスクを正しく考慮し、これに備えた効果的な事前合意をしておくことは非常に重要ですので、是非、経験豊かなオーセンスの弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

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