コラム

公開 2019.01.30 更新 2023.01.27

企業が「キャラクター」を利用する際の著作権法上の注意点

企業が「キャラクター」を利用する際の著作権法上の注意点

抽象的な概念に過ぎない「キャラクター」は「著作物」としては認められませんが、「キャラクター」が「著作物」に当たらないとしても、「キャラクター」のイラストを無断で使用するといったことは、原則として許されません。今回は、「キャラクター」を利用する際に注意しなくてはならないポイントを解説いたします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
中央大学法学部法律学科卒業、大阪市立大学法科大学院修了。法律事務所オーセンス入所から、ベンチャー法務を担当し、現在では、HRTech(HRテック)ベンチャー法務、芸能・エンタメ・インフルエンサー法務、スポーツ団体法務等を中心に担当。上場企業をはじめとした日本国内外に成長を求める企業のM&A支援にも積極的に取り組む。
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1.企業が「キャラクター」を利用する際の著作権法上の注意点

「キャラクター」自体は、著作権による保護を受けませんが、そのイラストを無断で利用した場合には、著作権侵害(著作権のうちの複製権の侵害)となります。
また、イラストをそのままデッドコピーしたわけではなく、たとえば、キャラクターのイラストのポージングを変えるなどして利用した場合であっても、複製権侵害が成立する可能性があります。
複製権侵害が認められるためには、利用者がそのキャラクターの特定のイラストに「依拠」して、「類似」ないし「同一」の新たなイラストを作成する必要があります。
「依拠」とは、他人の著作物に接し、それを自己の作品の中に用いることを意味します。

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再びドラえもんを具体例に出してお話します。

ドラえもんのキャラクターグッズが無断で作られたとします。
そうした場合、ドラえもんのイラストの権利者としては、原告作品として漫画『ドラえもん』の1シーンである、なるべく相手方の作品に似ているショットを探してきて、「このショットのイラストが原告著作物である。」と主張することとなります。
そして、そのショットのイラストと相手方のイラストを対照し、「その特徴からドラえもんを描いたものであることが明らかである」旨主張して、複製権侵害を追及することとなります。

また、「類似」ないし「同一」の点では、最判平9.7.17によれば、「複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知りうるものであれば足りる」とされています。
自社キャラクターのイラストが他の有名なキャラクターのイラストに類似している場合には、その有名なキャラクターに「依拠」して自社キャラクターが制作されたと認定される可能性が高くなり、自社キャラクターがポージング、形状、表情、彩色等の点で他の有名なキャラクターに類似する場合には、複製権侵害として、損害賠償や自社キャラクターのイラスト利用の差止請求を受ける可能性があります。
また、自社キャラクターのイラストと他のキャラクターのイラストが「同一」ないし「類似」とまではいえないとしても、自社キャラクターのイラストが他のキャラクターのイラストの表現に、新たな個性を付け加えたものにすぎない、ということになると著作権侵害のうちの翻案権侵害に問われる可能性があります。

2.まとめ

今回の記事では、①著作権とはどういった権利なのか、②著作権はどうすれば成立するのか、③キャラクターの著作権とはどういったものなのか、④企業がキャラクターを制作する際に著作権法的観点からどういった点に注意すべきか、についてご説明いたしました。
スタートアップの企業は、事業活動を進めていく中で著作権の問題には必ず直面するはずです。
著作権に対する理解は、経営者の方々にとって不可欠なものといえますが、「キャラクターと著作権」というテーマで著作権法を紐解いていくと、著作権法の骨格が大変よく理解できるはずです。

なお、著作権法の一部の規定を改正する法律が施行されました(以下の②は平成31年4月1日から施行)ので、改正の重要なポイントを解説いたします。
今回の改正のポイントは、主に以下の5点です。

  • ①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
  • ②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
  • ③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
  • ④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
  • ⑤TPP発行に伴う著作権の保護期間の延長、一部非親告罪化

この中でも特に注目すべきは、⑤の「著作権の保護期間の延長」でしょう。

著作権は、その「保護期間」においてのみ存続し、保護期間をすぎると消滅します。
つまり、著作物としてどんなに高い価値を有する作品であっても、保護期間経過後にはその作品の著作権は消滅するので、第三者が自由に使用することができることとなります(著作者の遺族が存在する場合の特別規定は存在しますが。)。
そして、著作権の保護期間は、改正前までは「著作者の死亡後50年」とされていました。
これが、今回の改正において、その保護期間が「著作者の死亡後70年」とされました。

この改正が社会に影響をもたらした実際の例も存在します。
たとえば、有名な画家である藤田嗣治氏の作品も、平成30年12月31日に著作権の保護期間が満了されるはずでした。
しかし、TPP発行に伴い、滑り込みの著作権法改正が行われた結果、突如として、藤田氏の作品の著作権の保護期間は、2038年12月31日まで延長されました。

保護期間が延長されるということとなれば、その期間満了までは、著作物の利用を希望する人は、その利用の許諾を受けなくてはなりません。また、その際に「許諾料」が発生することがほとんどでしょう。
文化の発展には、「作品の権利を守り、著作権者を保護する」という要請と、「良い作品を誰もが自由に利用できるようにする」という相反する要請があります。
その相反する要請のバランスをとりながら、今後も著作権法は改正されていくものと思われます。

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