コラム

公開 2022.11.29 更新 2024.04.09

企業の法務部がよく使う法律は?どれくらい法律を知っておくべき?

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法務部は、企業におけるさまざまな法律業務を担います。
では、法務部が特に知っておくべき法律には、どのようなものがあるのでしょうか?

今回は、法務部が参照することの多い法律を紹介するともに、法務部人材に求められるスキルや法務部をアウトソーシングすることのメリットなどについて解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。大阪市立大学法学部卒業、大阪市立大学法科大学院法曹養成専攻修了(法務博士)。企業法務に注力し、スタートアップや新規事業の立ち上げにおいて法律上何が問題となりうるかの検証・法的アドバイスの提供など、企業のサポートに精力的に取り組む。また、労働問題(使用者側)も取り扱うほか、不動産法務を軸とした相続案件などにも強い意欲を有する。
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法務部の役割

法務部は、企業内でどのような役割を担うのでしょうか?
はじめに、法務部の概要について解説しましょう。

法務部とは

法務部とは、さまざまな部門や外部の弁護士と連携を取りながら、法律に関連する業務を担う部門です。

企業によっては、法務部の他にコンプライアンスに特化した「コンプライアンス部門」や知財業務を専門に扱う「知財部」などを設けている場合もあります。

法務部が担う主な役割

企業の法務部が担う主な役割は、次のとおりです。

  • 契約書作成:企業が顧客などと締結する契約書を作成する業務です。
  • 契約書レビュー:他部署が作成した契約書や、自社と契約を締結する予定の他企業が作成した契約書に問題がないかどうかをチェックする業務です。
  • 社内規程作成:定款や個人情報保護規程など各種規程の整備を行う業務です。
  • 社内相談対応:社内からの法律に関する相談に対応する業務です。経営陣から、新規事業などについてのアドバイスを求められる場合もあります。
  • 機関法務:株主総会の開催や新株発行手続き、組織再編の手続きなどを行う業務です。
  • 知財管理:特許の出願や侵害時の対応などを行う業務です。別で知財部がある場合には、知財部が担います。
  • 社内トラブル対応:残業代不払いなど労使問題などに、人事部などと適宜連携を取りながら対応する業務です。
  • 社外トラブル対応:社外との契約トラブルなどに対応する業務です。社外弁護士と連携を取りながら進めることが一般的です。
  • コンプライアンス研修の実施:パワハラ研修などコンプライアンスを周知徹底するための研修を実施する業務です。別でコンプライアンス部門がある場合には、コンプライアンス部門が担います。

これらは一例であり、これら以外にも法律に関するさまざまな業務を担います。

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法務部が知っておくべき主な法律

法務部員には、さまざまな法令についての知識が求められます。
業務に必要となる法令はその企業が行う業務内容などによってさまざまですが、次の法令はどの企業であっても必要となる可能性が高いでしょう。

民法

民法とは、私人同士の権利義務や契約の基本ルールを定めた法律です。
企業が他の企業や消費者などと契約を締結したり、商品やサービスを提供したりする際には、民法がベースとなります。

すべての契約行為や権利義務の基本となる法律であるため、しっかりと理解しておく必要があるでしょう。

商法

商法とは、商行為の基本ルールを定めた法律です。

先ほど解説した民法では、当事者が一般個人であるのか企業などの商人であるのかを問わず、広く一般的なルールを定めています。
しかし、いわゆる「プロ」である商人が行う取引等では、民法では実情にそぐわないケースもあるでしょう。

そのため、商法では商人の取引等について、民法のルールを一部変更する規定などが設けられています。
企業は商行為をする存在ですので、民法と併せて商法についてもよく理解しておく必要があるでしょう。

会社法

会社法とは、会社について定めた法律です。
会社の機関設計や株主総会、組織再編に関するルールなどが広く定められています。

なお、会社の定款によって会社法の基本ルールが変更されている場合がありますので、会社法を参照する際にはその会社の定款と合わせて確認するとよいでしょう。

非常にボリュームがあり難関な法令ではありますが、少なくとも自社に関連する部分は押さえておく必要があります。

労働法

労働法という名称の法律は存在せず、一般的には「労働基準法」、「労働組合法」、「労働関係調整法」などをまとめて「労働法」と呼んでいます。
これらは、従業員を雇用したり労働させたりする際の基本ルールを定めた法律です。

雇用に関しては人事部が担当していることが一般的ですが、労使関係でトラブルに発展した際には法務部も対応が必要となることが多いため、労働法の知識は不可欠でしょう。

著作権法など知的財産法

著作権法とは、著作権を保護するための法律です。
知的財産に関する法律としては、他に「特許法」や「実用新案法」、「商標法」、「意匠法」などが存在します。

自社の知的財産を守るため、そして他社の権利を侵害してしまうことのないように、これらの法律についても知っておく必要があるでしょう。

なお、知財については、別途知財部などが担当する場合もあります。

独占禁止法

独占禁止法とは、公正かつ自由な競争を実現するための法律であり、談合や不当廉売などの行為を規制しています。

なお、独占禁止法の補完法として、下請事業者に対する不当な取扱いを規制する「下請法」があります。
こちらも併せて理解しておくとよいでしょう。

消費者契約法

消費者契約法とは、一般消費者との契約のルールを定めた法律です。

契約の基本は民法で定められているものの、民法はお互いが同程度の知識を持っているケースを前提としています。
しかし、現実には事業者と一般消費者では情報に格差があることが多いため、民法の規定をそのまま適用すると、消費者が不利な内容の契約をしてしまう可能性があるでしょう。

そこで、消費者を保護する目的で設けられているのが消費者契約法です。
一般消費者との取引がある企業の法務部は、消費者契約法についてもよく理解しておかなければなりません。

特定商取引法

特定商取引法とは、訪問販売や通信販売など消費者被害の多い一定の取引について、消費者を保護するための法律です。

訪問販売や通信販売など特定商取引法の規制対象である業務では、契約書の記載内容についてもルールが設けられています。
対象となる事業を行う企業の法務部は、特定商取引法についてよく理解しておきましょう。

関連する業法

企業の法務部員は、その企業が行う業務に関連する業法についても、よく理解しておく必要があります。
業法とは、たとえば次のような法律です。

  • 宅建業を営む場合:宅建業法など
  • 建設業を営む場合:建設業法など
  • 古物商を営む場合:古物営業法など
  • 飲食店を営む場合:食品衛生法など
  • 宿泊業を営む場合:旅館業法など

このように、営む事業によってはその事業を規制する法令の対象となる場合があるため注意しましょう。

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法務部はどの程度法律を熟知すべき?

法務部員は、どの程度法律を熟知しておくべきなのでしょうか?

まず、自社の業務がかかわる業法の他、民法、商法については基本事項を把握し、理解しておくべきでしょう。
一般消費者を対象とした商品やサービスを提供する場合には、消費者契約法と特定商取引法についてもしっかりと理解しておくべきです。

また、先ほど挙げた重要な法律以外に関しては、自社が関わる部分については少なくとも理解しておかなければなりません。

その他の法令に関しては、必要に応じて参照する必要があります。
そのため、どの場面でどの法令を調べるべきなのかがわかるよう、法令の存在と各法令の規制内容を広く知っておくべきでしょう。

法務部の人材に求められるスキル

法務部の人材に求められるスキルには、主に次のものが挙げられます。

法律に関する知識

法務部員には、法律に関する知識は不可欠です。
先ほど紹介した法律についてよく理解し、その他の法律についても広く知っておく必要があるでしょう。

なお、法務部員となるために、資格の保有は必須ではありません。
しかし、資格の保有は法律の理解度合いを測る一つの重要な基準となります。
そのため、可能であれば弁護士などの有資格者を採用することが望ましいでしょう。

調査スキル

先ほど紹介したもの以外にも、法律は非常に多くの種類が存在しており、すべての法律を記憶しておくことは現実的ではありません。

実務においては、必要に応じて参照すべき法律や判例、ガイドラインなどを調査するスキルが役立つでしょう。

文書作成スキル

法務部門では、法律文書を作成したり確認したりする業務が日常的に発生します。
そのため、文書作成スキルが必要であるといえるでしょう。

法務部が作成すべき文書は、契約書や社内規程、株主総会招集通知、社内外への通知文書、取引先への連絡文書などが挙げられます。

コミュニケーションスキル

法務部員には、コミュニケーションスキルも求められます。
なぜなら、状況に応じて社内外の人と折衝をしたり、意見を調整したりする必要があるためです。

また、社内からの法務相談を受ける際、的確なアドバイスをするためには、相談者から必要な情報を聞き出す必要があります。
これにもコミュニケーションスキルが必要となるでしょう。

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法務部をアウトソーシングするメリット

企業が法務部を自社で抱えるためには、採用や教育、コストなどいくつかのハードルを越えなければなりません。
そのため、中小企業が自社で法部門を持つことは容易ではないでしょう。

しかし、契約書への調印など法律に関する業務は日々発生し、専門外の人が対応を続ければ、リスクを抱えることにもなりかねません。

そこで検討したいのが、法務部機能のアウトソーシングです。
法務部機能をアウトソーシングすることには、企業にとって次のようなメリットがあります。

人材の確保に悩まずに済む

法務部の担う業務は、非常に重要です。
そのため、専門性の低い人材に任せてしまうと、企業にとって大きなリスクとなりかねません。
その一方で、専門性が高く適任である人材を採用することは、容易ではないでしょう。

法務機能を外注することにより、人材の確保に悩む必要はなくなります。

自社で教育をするコストが削減できる

法務部員は常に最新情報を仕入れ、知識をアップデートしなければなりません。
法令が改正される他、新たな判例も日々誕生していくためです。

自社で法務部員を雇用する場合には、教育にかかる時間やコストを自社で負担する必要があるでしょう。

一方、法務機能を外注した場合には、法務部員を教育するために自社で負うコストを大きく削減することができます。

必要なときだけ依頼ができる

特に中小企業においては、法務部の業務が常にあるとは限りません。
しかし、自社で法務部員を雇用した場合、業務の繁閑に応じて流動的に人員を調整することは困難でしょう。

一方、法務機能を外注した場合には、必要なときだけ必要な分量の業務を依頼することが可能です。

一定水準の法務機能が担保される

法務部員としての能力を、法律専門家以外が見極めることは容易ではありません。
また、万が一契約書チェックなどが甘かったとしても、その時点では問題にならないことが多いでしょう。
問題が発覚するのは、実際にトラブルが生じ、既にリカバリーが難しくなってしまった段階です。

法務部機能を外注すれば専門家が業務を担いますので、一定の能力を担保することができます。
そのため、このようなリスクを自社で抱えずに済むでしょう。

なお、Authense法律事務所では、即戦力の法務担当者をお探しの企業様に向けた「ALS(法務機能アウトソーシングサービス)」をご提供しております。
有資格の即戦力人材をアサインすることにより、採用やマネジメントにコストをかけることなく、ニーズに沿った日常の法務業務に幅広く対応いたします。
ダウンロード資料もご用意しておりますので、ぜひご活用ください。


まとめ

法務部機能は、企業にとって不可欠な存在です。
しかし、法務部員には、民法や商法などさまざまな法律に関する深い知識が求められます。
また、法律は改正されるため、知識をアップデートし続けなければなりません。

このような人材を自社で雇用することができるかについて、ハードルが高いと感じる企業も少なくないでしょう。

そこで検討したいのが、法務機能の外注サービスです。
法務機能をアウトソーシングすることで、自社で法務部員を雇用することなく、専門性の高い法務部機能を持つことが可能となります。

Authense法律事務所の法務機能アウトソーシングサービスでは4つの料金プランを設けており、自社にとって最適なサービスを選択していただけます。

法務部機能の外注を検討されている場合には、ぜひAuthense法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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